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夏休み最後の日

作者: 相野 有

 15:00

 電話が鳴り出した。

 僕は、ベッドに横たわったまま、体の向きを変え、手を極限まで伸ばして勉強机の上に置いてあるスマートフォンを手に取った。そして、通話のボタンを押しかけたとき、僕はふと、ある事に気づいた。非通知設定。この言葉には、なにやら不穏な雰囲気が漂っている、ように思う。さらにいえば、今のご時世、特に学生は、電話機能自体あまり使わない。今は大体、LINEである。そんな事を考えながらも、別の考えが浮上した。それは、スマホを忘れ、公衆電話から掛けているという可能性だ。なので、僕は、止むを得ず電話に出た。

 「いやはや、やぁっと繋がりましたか、あともうワンコールで繋がらなかったら、貴方、折角当たった景品を取り損なうところでしたぁよ。まったく。それで……」

  少しの間、茫然としてしまった。電話に出たのは、両親でも友達でもなかったのだ。誰なんだ。しかも「当たった景品」とは一体全体なんのことだ。

 「もしもぉーし、あの、今の話聞いておられましたか?」

 「すいません聞いてませんでした」僕は、素直に謝った。僕が茫然としている間に何か話していたようだ。

 「全然反応が無いんでどうしちゃったぁのかと思いましたよ」

 「それでなんの御用件でしょうか?」

 「貴方が当てた景品のことですよぉ!」

 ここ数年、景品が当たるようなものに応募した覚えはない。つまり、

 「すみませんが電話番号間違えてますよ」

 ということだろう。

 「いえいえ、そんなぁはず御座いません、伊藤寛人さんですよね?」これは驚いた。

  伊藤寛人。これは完璧に僕の名前だ。つまりだ、これは間違い電話では無い。

 ならば、一体なんなんだ。僕の本名、さらに電話番号を知っているなんて。

 そういえば、一つ心当たりがあった。

 一ヶ月ほど前、漫画村が閉鎖されてから、新たに無料で漫画が読めるサイトを探していて、僕はそれを見つけた。が、しかし、それには無料の会員登録が必要だったのだ。少し迷ったが、読みたい漫画があったから、仕方なく、会員登録をしたのだ。

 これだ。間違いなく、これだ。この時何故か、フルネームと電話番号を必要事項として書かされたのだから。それで、この2つが流出したのだろう。怖い時代だ。幸いそれ以外の事は書いていないからよかった。

「それでですね、景品なぁんですけど、なにがいいですか? 何でも願いを1つ叶えて差し上げましょう。」

 僕は理解した。これは、詐欺だ。

 詐欺のことをつい先日、丁度学校で習ったばかりだ。名前は忘れたが、当選したと見せかけて、その景品を送ってから、その景品の代金を高額で請求するという手である。まさにコレはそれだ。

 だがしかし、「願いを叶える」この表現が引っかかった。

 これは、詐欺なんだから、対抗してやろうじゃないか。と思い僕はこう言う。

 「今日中に宿題を終わらせて欲しい」

 これが願いだ。どうだ、叶えられるものなら叶えてみやがれ!

 すると、このピエロ(道化師のような喋り方と声なのでこれからはそう呼ぶことにした)は、

 「珍しい事を言いますねぇ。分かりましたよ、承りました。今日中、つまり8月31日の0時を過ぎる前に宿題を終わらせればいいのですね。」

 このピエロに、僕は何度驚かされればいいのだろう。あっさり、承諾した。これは又しても驚きだ。

 「はい、そうです。」と言うしか無かった。

 「それでは、受理しましたので、お楽しみに。」そう言い放って、電話は切れた。

  受理されたのだから、僕はもう、宿題をやらなくていいだろう。半信半疑とかじゃなく、言うなれば、0信100疑であるが、やるつもりなど毛頭無かった訳なので、僕は宿題を見捨てた。


 さっきの電話はなんだったんだろう。詐欺だとは思うがそれにしては、意味不明な、お金なんて取りようがない願いをあっさりと承諾して切ってしまった。まぁとりあえず宿題を見捨てて何をするかと言うとゲームだ。本当に今日中に宿題を終わらせられるものなら終わらせてみやがれ! と思いながら僕は、PS4を起動した。

 この夏休み、僕は本当にゲームしかしてこなかったような気がする。と言うよりも、気がするではなく、ゲームしかしてない。

  そして、今日も今日とてゲームを始めるのであった。今しているのは【NieR:Automata(ニーア オートマタ)】というゲームだ。このゲームは何と言ってもストーリーが最高なのだ。僕はストーリー物のゲームが好きだ。

 ……

  気づけば、4時間ほど経っていた。4時間もぶっ通しで続けていたので目が痛くなった。大分いいとこまで行ったので、これで今日した分のデータが吹っ飛んだりしたら僕は嘆き悲しみ、叫ぶだろう。ストーリー物は2回やる気にはなれない、それはそうと、お腹が空いてきた。よく考えたら、朝から殆ど何も食べてない。

 〈ガチャ〉

 かぎが開く音がした。

 「ただいまー」

 丁度良いタイミングで母が帰って来たようだ。階段を下り、リビングに出た。

 「お帰り、晩御飯は?」

 「はい」と言って、ビニール袋を渡された。結構重い。中にはピザとたこ焼きが入っていた。なんだこの組み合わせ。そう思いながらも僕はテーブルにこれを並べた。

 「ねぇ、ひろくん」

 母は僕をこう呼ぶ。まぁ母だけでなく、大体の人にヒロか、ひろくんと呼ばれている。

 一体全体、寛人の『と』はどこに行ってしまったんだ!

 「また、一日中ゲームしてたでしょ、目が赤くなってるわよ」

 僕はそれに答えない。

 「それで、宿題は終わったの? 」

 「まだ終わってない」

 「明日から学校よ、分かってるの?」

 「分かってるよ」

 「そう、まぁいいわ。それより冷めないうちに早く食べましょ」

 というわけでこの謎の組み合わせを食べた。

 食べ終わった後、母に「残ってる宿題、ここでやりなさい」と言われたので、数少ないしっかりやっていた宿題を持っていき、残りを終わらせた。勿論、他の宿題は半分以上終わっていない。ただ、母にはこれが最後の宿題に見えたのだろう。「お疲れ様」と言われ、部屋に戻って良くなったので、他の宿題が残ってることがバレないように、何も言わず部屋に戻った。

 これ以上色々書いていても仕方がない。何故なら、ここはまだプロローグ、起承転結で言うところの起(又は承も入る)でしかないのだから、勿論、僕だって、これで終わりが良かった。なんでこれが本編じゃないんだ。詐欺の電話が掛かってきた時点で充分、非日常じゃないか。それなのにどうして。まあいいとしよう、この時の僕はまだ何も知らない。

 食事中、母に明日は6時半には起きなさいと言われたのを思い出したので、僕は6時半にアラームをセットした。おやすみ。




 


僕はあまり目覚めがいい方ではない。特に今日の様な休み明けはとても悪い。僕は、ぼんやりとしたままリビングに出た。眠い。今は何時だろうと思いテレビを付けた。

 !?

 あまりの衝撃に二度見した。眠さも吹っ飛んだ。

 8:10

 8時10分だって?! 大ピンチだ。新学期早々遅刻なんて笑えない。急いで部屋に戻って支度をして、自転車に飛び乗り、バス停に向かった。バスは手前の信号で止まっていた。ギリギリセーフだ。自転車置き場に自転車を置いて、僕はバスに飛び乗った。

  バスの中は人が少なかった。僕の様な学生はこれより前のバスに乗っているはずだが、通勤の人はこのバスにもう少し居ても良いのではないだろうか。バスの中で僕は、昨日テレビでチラッと見た、夏休みを短縮するか議論されていると言う話を思い出した、本当にやめて欲しい、するのなら延長するかどうかの議論をして欲しいものだ。そういえば、全く関係ないが、携帯を忘れた。やってしまった。携帯を携帯していないのであれば其れは最早、携帯じゃないではないか。そんなどうでもいいことを考えていたら着いた。だが、ここからが遠い。坂が長い。津波対策なのは分かるが流石にこれは長すぎる。しかし、そんなこと言っている場合ではない。僕はその長い長い坂を全速力で走った。


 学校に到着した。やっと着いた。この夏休み使わなかったエネルギーを全て消費した気分だ。もうなんか逆に清々しい。因みに間に合わなかった。遅刻だ。間に合わなかったからと言っても急がなくて言いわけでは無い。また走った。教室を見て驚愕した。誰もいない。電気も付いていない。どういう事だ。体育か! いや違う、月曜に体育の授業は無いはずだ。時間割表を見た。が、無い、体育の授業の話じゃなくて、時間割表が無い。まあでも仕方がない今日は新学期の初めの日だ、貼ってなくても仕方がない。新学期の初めの日。そういうことか。始業式だ! 僕はまた走って行こうか考えたが、もう始まっていたら入らない方がいいということに気がついた。なので、僕は教室で本を読む事にした。読書感想文の為の本を。そういえば、読書感想文で思い出した、結局宿題はどうなったのだろう。本当に、終わってたりしたら嬉しい。本を開いた。昨日栞を差し替えるのを忘れていたのか、もう読んだところに挟んであった。ただそのお陰で、読み飛ばしていたところを読むことが出来た。25ページ程(時間で言えば30分程)読んだが、一向に生徒たちが帰って来る様子がない。始業式ってそんなに長いものだっただろうか。校長の長く、其れなのに中身のあまりない話を聞いて、校歌歌って終わりだったはずだ。更に15ページ程読み進め、やはりおかしいと思った。まだ来ない。

 こうなったら一度、体育館の近くまで行ってみよう。

 体育館に到着した。結果から言うと誰も居なかった。もぬけの殻だ。もう何が何だか分からない。だって教室にも誰も居なかった訳だし。他の学年の教室も見に行ったが、誰も居ない。取り敢えず、学校の中を見て回った。一人で学校探索は朝でも少し怖い。

 明かりがついているところを発見した。ここは職員室だ。

 〈コン、コン、コン〉

 職員室をノックして扉を開けた。すると、人がいた。担任の先生も居た。僕は担任の先生を呼んだ。

 「なんだ、どうした」

 なんだ、どうしたじゃねぇよ!先生は学校に誰も居ない事に気づいて無いのだろうか。

「教室に誰も居ないんですけど」

「何を言っているんだ? 当たり前じゃないか」当たり前? どういう事だ。聞く事にした。

 「どういうことですか?」

 「お前……大丈夫か? 今日は8月31日、学校は明日からだぞ」

 「へ??」驚きのあまり、変な声になってしまった。8月31日?  いやしかし、そんなはずは無い。あり得ない。あってはならない。昨日が絶対に8月31日だった。昨日母もそう言っていたではないか! 他にもそう断言出来る理由がある。はずだ。

 「伊藤、大丈夫か? フリーズしてるぞ。取り敢えず今日はもう帰れ」そう言って、先生は自分の席に戻った。僕はその場から立ち去るしか無かった。頭がついていかない。取り敢えず、先生に言われた通り、もう帰ろう。

  帰りのバスに揺られながら、さっきまでのことを思い出していた。あれだけ急いだのになんなんだ。まさかこんな事になるなんて。と言うか、昨日、僕は確かにアラームを6時半にセットしたはずだ。何故鳴らなかったんだ。まあそんな、今となってはどうでもいい様な事を考えている暇は無い。大事なのは、今がいつなのかと言う事についてだ。どっちが正しいのだろうか。学校に生徒が誰も居なかった事を考えると、やはり今日は8月31日、僕が間違っていたと言う事になる。最早反論の余地が無い。だが、だかしかし、待ってくれ! 昨日見たニュースは、確かに夏休み最後の日を話題にしていたし、スマホのロック画面にも8月31日と書いてあった。ただ、其れは自分の頭の中の記憶でしかない。今日は8月31日だと言う思い込みから、そう見えてしまったのかもしれない。

  バス停に着き、そのまま自転車に乗って帰った。



 家に帰って来た。家を出たばかりなのにすぐ帰って来るのは変な感じだ。靴を脱ぎ、階段を上って自分の部屋に入った。忘れていったスマホは机の上に置いてあった。スマホをタップしてロック画面を見る。

 8月31日

 やはり間違っていたのは僕だったということだ。これからどうしようか、本当に予想外の展開で、未だついていけない。机の上に昨日した宿題が置いてあるのが目に入った。僕はその宿題を手にとって、パラパラとページをめくっている。あれ? このページ昨日やらなかったか? このページだけじゃ無い、よく考えたら、昨日この宿題は終わらせた筈じゃないか! どういうことだ。このページも間違いなくやった。其れなのに、何故か昨日やった分が全て消えている。もう僕は嫌になった。何が何だか分からない。こういう時はゲームだ。現実逃避をしよう。PS4を起動し、昨日良いところで止めていた、【NieR:Automata(ニーア オートマタ)】を始めた。え!? いや、待て待て待てこのシーン見たことあるぞ。見たのは昨日だ。もう少し進めてみよう。「ーーー!!」僕は声にならない声で叫び声をあげた。ああダメだ。これはおおよそ最悪の事態だ。信じられない。信じたくない。つまりこういうことだろう。セーブ出来て無かった。だがしかし本当にそうか? 僕は確かにセーブした筈なのだが。そういえば、さっきからこんな事ばかり起きている。時間を取り考えをまとめた。これは可能性の1つだが、もしかして僕は、今日を繰り返しているのでは無いだろうか。そう考えると全て辻褄が合う。けれど、にわかには信じがたい。

 気分転換の為にリビングに出て、テレビを見る事にした。電源を入れると、チャンネルはNHKでニュースが流れていた。そういえば、昨日、見たのもこの時間帯だった気がする。

「では、次のニュースです。今日は8月31日、多くの学校が明日から始まりますが、一部の学校では、夏休みが短縮されており、夏休みを短縮すべきかどうか議論が交わされています。静岡県吉ーー」これだ。これだった。僕は昨日これと全く同じものを見た。ということはやはり8月31日を繰り返しているという事になる。だが、こんなことがあっても良いのだろうか? そうだ!  僕の頭にもう1つの考えが浮上した。

 これは夢だ。

 きっとそうだ。つまり、そういうことだ。夢ならば、頬を抓れば醒めるという。抓ってみようか。でも、と僕は考えた。こう言う事件に巻き込まれた時、頬を抓っても大体醒めることはない、だから、寝ることにした。夢の中で寝たら現実で醒めるパターンがあるからだ。




 ……

 目が醒めた。

 果たしてこれはどっちなのだろう、どうか9月1日になっていてくれ。

 それを確認する為に、先ずしなければならないのは勿論これだ。僕はスマホをタップし、ロック画面を見た。

 14:58 8月31日 日曜日

 ダメだった。8月31日のままだ。これはいったいどうなってるんだ。こんな現象があって良いのだろか。いや、良くない。なんでこんなことになっているのか? 其れが分からない。明日は明日になるのだろうか。明日からの学校は憂鬱だが、なってくれないと困る。

 15:00

 電話が鳴りだした。

 また非通知。

 「やあ、御機嫌よう」

 予感はしていたがこの道化師のようなムカツク喋り方と声は、昨日……いや一回目の今日(長いから「今日①」とする)にかけてきたピエロだ。

「ところで、どうだい、宿題は順調に進んでるのかぁい?」

 あれ? ちょっと待て、何かがおかしい。違和感がある。

 そうか、昨日と喋っている内容が違うんだ!

 一体全体どうなっているんだらう。

 いや、それだけでは無い?  違和感が拭えない。それだけでは、何かが引っかかる。腑に落ちない。

 そういうことか! 僕は理解した。

 『宿題』

 引っかかったっていたのはこの言葉だ。この言葉はどう考えてもおかしい。時間が戻ったのだから、[今日①]の出来事も全て元通り、[今日①]で頑張った、ゲームのセーブデータも全て元通りだった。そうだった。それなのに、元通り初対面のはずのこのピエロは、宿題の事を知っている。どういう事だ。

「最初の日もこうでしたね、貴方、人の話を聞かない癖がありますよ。まあそれは良いとして、私は質問してるのだぁよ。『宿題は進んでいるかい』とね」

 最初の日とは[今日①]の事を指しているのだろうか? そうだとしか考えられない。確かに、[今日①]の時も僕は話を聞いていなかった。つまり、それを知ってるということは、このピエロは[今日①]の記憶があるということだ。つまり、このピエロ、何か知っている。

 「その前にこっちから質問させて下さい」

 僕の頭の中は今、大混乱中だが平然を装いこう言った。

 すると、「なぁんでしょうか。まぁ大体予想はついてますよ、8月31日が繰り返されているということについてでしょう」

 「そうです。教えて下さい」

 「ヒントはぁ宿題です。貴方が昨日言った言葉を思い出して下さい」

 なんだ、なんて言ったんだろう、ヒントが宿題?

 もしかして、[今日①]の時に、この詐欺師ピエロに対抗する為、適当に言った『今日中に宿題を全て終わらせて欲しい』のことなのだろうか。

 「もしかして、昨日言った願いのことですか?」

 「そうです、そうです。大正解!そうつまり、そういうことですよ」

 「そういうこととはどういうことですか?」

 「あれぇ、まだ分かんないんですかぁ、『今日中に宿題を全て終わらせて欲しい』ですよ!そろそろ分かって下さいよ。今日中です。今日中」

 そうか、そういうことか。分かってしまった。理解してしまった。

 このループを起こした、犯人はコイツだ。いや、自分でもあるのか、[今日①]の時に僕自身が『今日中に宿題を全て終わらせて欲しい』なんて言ってしまったのだから。

 「そうそう、勿論、宿題が終わるまで今日は続くので、頑張って下さいね」

 なんとなくそうだろうと気付いてはいたけれど、そう断言されてしまうと、九腸寸断の思いである。これはつまり、宿題が終わればループが解けるということだろう。それならば、今何をすべきか、それは宿題だ。

 僕は宿題を始めた。

 まずは数少ないしっかりやっていた宿題に手をつけた。それは難なくすぐに終わらせられることが出来た。何故なら、この宿題は[今日①]の時に一度終わらせているからだ。

 ただほかの宿題は壊滅的だ。やばい、全然進まない。


 ……

 〈ガチャ〉

 「ただいまー」

 母が帰ってきたようだ。ということはつまり、知らず識らずのうちにかなり時間は経っていたようである。僕は日々のゲームのお陰で集中力はある方だ。と言ったものの、さっきしてたワークを見てみれば落書きだらけであまり進んでない。僕の頭はまだ混乱しているのだろう。事の深刻さを理解できていない。今は19時半だ。今日中、つまり、0時になるまでに、宿題を終わらせなければならない。後、4時間半しかない。

 取り敢えず、一旦リビングに出た。

 「お帰り、晩御飯は?」

 「はい」と言って、ビニール袋を渡された。結構重い。中にはピザとたこ焼きが入っていた。そうだった、あのピエロとの会話で同じことが起こらないように錯覚してしまっていたが、ループしてる訳なので、同じことが起こるのは当たり前だ。そう思いながら僕は又同じ様にテーブルにこれを並べた。

 「ねぇ、ひろくん」この言葉も、[今日①]と同じだ。だか、次に来る言葉は違うだろう。何故なら、僕は今日ゲームをしていないから目が赤くなっていないからだ。

 「今日、何してたの?」

 「宿題」

 「それで宿題終わったの?」

 「まだ終わってない」昨日と同じ様にそう答えた。

 「明日から学校よ、分かってるの?」

 「分かってるよ」

 「そう、まあいいわ、冷めないうちに早く食べましょ」

 食べ終わった後、僕はすぐに自分の部屋に戻った。急いで、宿題をしなければならないからだ。後、4時間。よく考えたら、全然終わる気がしない。宿題を進めながらも、半ば僕は諦めていた。

 23:59

 後1分。絶対無理だ。圧倒的に無理だった。間に合わない。あと半分くらい残ってる。

 0:00

 僕は信じられないものを見た。書いた文字が消えていき、僕が今日の間に移動したものが、元の場所に戻っていく。そして僕の意識が消えた。



 8:10

 目を覚ました。僕はベッドから起き上がり勉強机の上に置いてあるスマートフォンを手に取り、液晶をタップしてロック画面を見た。

 8:10 8月31日 日曜日

 日付は変わっていなかった。つまり、


 -ぼくの夏休みはまだ終わらない-

はじめまして、相野有です。

読んでいただきまことに有難う御座います。今後の活動のために、コメント(感想、レビュー)、評価などを頂けると嬉しいです。

よろしくお願いします!


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