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付き合う条件

模範試合で後輩に苦杯をなめた雅治。後輩達の前で大恥をかいた。原因は玲奈

が瑠美を連れてきたことにあった。好きな人の前でコントロールできない自分に

腹が立ち、玲奈がどうして瑠美を連れてきたのか気になった。夕食後、さっそく

玲奈を呼んだ。


「どうして昨日、瑠美ちゃんを連れてきたんだ?応援するように言ったの、玲奈

の仕業だろ」

玲奈は雅治の行動をあらかじめ予想していた。


「別に。でもマサ兄もまだまだだね。もっとしっかりしていると思っていたのに。

本命女子の前では歯が立たないんだね」

「どうしてそれを?」

「見ればわかるじゃん。私達いつも一緒に暮らしているんだよ」

「そうか。そりゃ参ったな」

雅治はすんなりと認めた。笑顔とは裏腹にどこか玲奈は寂しかった。心のどこ

かで違っていたらいいのにという素直な思いがあった。


「このままでは終われない」

雅治は独り言のように話した。

「このままでは終われない。なあ、玲奈。今度南高と対抗戦があるじゃないか。

あの試合に瑠美ちゃん、連れてきてくれないかな?」

「私が?」

「なあ頼むからさ。このままでは終われないんだよ」

同じ言葉を三度雅治は使用した。必死な姿に、玲奈は首を縦に振るしかなかっ

た。

「わかった。瑠美に話しておくから」

「ありがたい。今度は強いところを見せなきゃね」

自分自身に言い聞かせるように、雅治は話した。


玲奈が雅治のことを好きである事実に変わりはない。それに嫉妬しても何かが

変わるわけではない。昨夜ある恋愛ドラマを視聴した和也は、今の状況をドラマ

の設定に見立てて、冷静に分析した。

今できることは玲奈に野球部のマネージャーになってもらうこと。せっかくや

る気になってくれているのだから、アピールしないといけない。この間みたいに

拗ねている場合ではないのだ。


「ねえ、カズ兄。ちょっと相談があるんだけど?」

 いい所に玲奈がやって来た。

「入ってくれたらいいよ」

玲奈は和也の部屋へ入るなり、まくしたてるように話し出した。


「カズ兄聞いてよ。とても厄介なことになったの。マサ兄が私の親友の瑠美ちゃ

んを好きになったの。どうかしているよね?私の親友を好きになるなんて」

玲奈は興奮していた。まさかの雅治の恋愛話に、和也は驚いた。

「どうかしているよ。玲奈と瑠美ちゃんの関係をどう考えているんだろう」

「そうだよね。このままギクシャクしたら、どう責任を取ってくれるんだろう」

玲奈をなだめることが先だった。10分ほど玲奈の話は続いて、ようやく落ち着

いた。


「私はどうすればいいと思う。このことを瑠美に伝えた方がいいのかな?」

玲奈が雅治のことを好きであることを、玲奈から直接聞いたわけではない。し

かし常日頃からの行動で、玲奈が好きであることに違いはなかった。

「とりあえず南校の練習試合くらいは連れて行ってもいいんじゃない。兄貴きっ

とプライドやられていると思うから」

「そうだね。それじゃ明日瑠美に相談してみるか」

玲奈の相談が終わると、ようやく雅治はマネージャーの件を持ち出した。玲奈

は前向きに検討するとのことであった。


「カズ兄頑張っているからね。私も何か協力できればいいと思っていたから」

 和也のアピールは成功した。後は玲奈が引き受けてくれたらいいのだけれど。


翌日雅治からの伝言を、瑠美に伝えた。やはり不思議そうな顔をした。

「私が剣道の練習試合に?剣道はあまり興味がないんだけど」

乗り気のない瑠美に、玲奈は懸命に説得した。ようやく瑠美は前向きな回答を

してくれた。

「行ってもいいけれど、一つ条件がある。玲奈が吹奏楽部に入部してくれたら、

行ってもいいかな」

まさかの条件付きだった。それもかなり難しいものだった。瑠美はどうしても

玲奈を吹奏楽部に入部させたいようだった。脳裏に和也の顔が浮かんだ。

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