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兄が親友を好きになる?

自宅へ戻ると、リビングで和也がテレビを見ていた。二人が帰ってきたのを知

ると、慌ててテレビの電源を切った。そして急いで自分の部屋へ戻ろうとした。

そんな和也を、玲奈が呼び止めた。


「カズ兄」

声を掛けられた和也は警官に呼び止められたみたいにビクッとなった。

「何だよ?」

「私のこと避けていない?何か私悪いことをした?」

和也が振り返ると、玲奈は制服姿だった。初めて見る玲奈の制服姿は、とても

眩しかった。しかしそんなことを考えている暇はない。


「別に避けてなんかないよ。これからランニングに行こうと思っていたところだ

から」

玲奈に嫌わられぬよう、言葉を選んだつもりだった。

「そう。昨日はあれだけ楽しみにしてくれていたのにね。今日のカズ兄はガッカ

リだわ」

玲奈の言葉がズキっと和也の心に刺さった。避けた理由なんて言えるわけがな

い。きっとバカにされるか笑われるかに決まっている。そう考えた和也は、黙っ

たまま部屋へ入った。


今日は雅治と和也、二人の始業式の日だ。三人で登校出来れば良かったが、和

也は野球部の朝練があるので、二人よりも一足先に早く起きた。

 眠たい目をこすり起きると、台所では母親の久美子が弁当を作っていた。

テーブルの上には朝食として、トーストが用意されていた。コーヒーを自分で

入れると、黙々と和也は食事を始めた。


「昨日玲奈ちゃんと喧嘩したんだって。玲奈ちゃん、原因がわからないって悩ん

でいたわよ」

「そう」

由美子の発言に、和也は素っ気ない返答をした。

「あなた達仲良いのに、喧嘩するの珍しいわね。もしかして私が原因とか?」

 なかなか核心をつく由美子の言葉だ。しかし和也は肯定も否定もしなかった。


「もし私が原因だとしたら、私が悪かったわ。和也は玲奈ちゃんと一緒に入学式

行きたかったのよね」

 トーストを食べていた和也は思わず吐き出しそうになった。由美子には和也の

心理はお見通しらしい。これには和也は参った。

「勘弁してくれよ。玲奈には内緒だから」

「分かっているわよ。私も悪いことをしたし、玲奈ちゃんには私からうまいこと

言っておくわ」

「頼んだわ」

 由美子に委ねると、和也は朝練へ出かけて行った。


和也抜きの玲奈と雅治での登校。三人揃っての登校はまたお預けになった。し

かし今朝は親友の瑠美が加わった。

「玲奈、吹奏楽一緒にやろうよ」

「うん、そうだね。もう少し考えさせてよ」

慎重な玲奈の姿勢に、瑠美は不満なようだ。


「お兄さんも玲奈に吹奏楽続けてもらいたいですよね。このままやめるなんて勿

体なさ過ぎる」

「そうだね」

「ほら、玲奈。お兄さんにもこう言っているじゃない。吹奏楽部に入ろうよ」

玲奈は雅治の様子を、細かく観察していた。何か様子がおかしい。どうやら緊

張しているようだ。瑠美といると、まずいことでもあるのだろうか。例えば秘密

を握られているとか。


「実はね、運動部のマネージャーとかも考えているんだ。サポートする仕事も面

白いんじゃないかって」

「ええっ?そうなの。玲奈、吹奏楽部の強豪高からスカウトされたんでしょう?

私は絶対続けるべきだと思う。お兄さんはどう思いますか?」

瑠美は雅治に尋ねた。尋ねられた雅治はしどろもどろしていた。いつも冷静な

雅治らしくない。どうやら雅治は瑠美を意識しているようだ。


「そうだよね。瑠美さんもこう言っているようだし、吹奏楽続けたらいいんじゃ

ないかな」

「ですよね?玲奈、前向きに考えてみてよね」

瑠美は話したいことだけ話すと、先に行ってしまった。


「もう余計なこと言わないでよね」

玲奈は釘をさした。雅治は素直に謝った。

「悪かったよ、つい押されてしまってさ。それにしても瑠美ちゃん、コンタクト

外して綺麗になったね。話すの初めてじゃないのに、緊張しちゃった」

 玲奈は直感した。雅治が瑠美のことを好意を抱いているということを。それ以

上玲奈は何も言えなくなってしまった。

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