第一章 特異体質 1話
岩手県一関市。
人口10万人弱の都市である。
特産品は曲がりネギ。
一見普通の都市であると思われるが、他の都市とは少し違う。
いや大きく違う。
それは、高戦があるからだ。
一関市には岩手県磐井高等戦闘学校・附属中学校があるのだ。
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「今日は早帰りだから集中を切らさずにしっかり授業を受けるように。以上終わりっ」
担任の河村先生のホームルームで俺たちのクラスは始まる。
「じゅーん! 」
和樹が斜め後ろの席から俺をつつく。
「なんだよ、こっちは国語の宿題おわんなくてイライラしてんだよ」
「お前本当勉強ダメだよな、数学と社会と理科抜かして」
いや、3教科出来ればダメとは言わない。
そんなことを考えていると
「お前、3教科出来ればダメじゃないと思ってるだろ? 」
こいつ、人の心読めてるよ。絶対。
「他の人の場合そうかもしれない、だがお前はできなすぎる。新入生学力テストで国語と英語でどっちも一桁とったのお前一人だぞ⁉︎ 」
く、こいつなぜ俺のテスト結果を知っている?
こういう時には‥‥
「だって、やる気が出ないんだもん!」
「...... もう、男でもいいかもしれない」
よし!和樹を別の話の方向へずらした!
でも和樹の目が怖い。そして顔が変態の顔になってる。
これぞ我が必殺、ぶりっ子だ!
中性的な顔立ちだからこそ出来るこの芸当。
使うごとに俺の精神も削れていく技だ!
はぁ、男らしい顔つきになりたいよ‥‥マジで‥
でもいいんだ、これで
これでこの話を終わらす事ができた。
しかし、一難去ってまた一難。
「千代〜!」
「千代兄ちゃ〜ん!」
俺の野生の勘がこの声の主達は危険だと俺に教える。
だがもう遅い。
「ラリアット!」
始めに声をかけてきた方の少女が俺にラリアットを食らわす。
こいつは俺と和樹の幼なじみの綾崎優。
中1にしては胸はそこそこあるが、身長が高いせいで貧乳に見えてしまうことをコンプレックスにしている。
「ぐはぁッ」
俺は椅子から派手に落とされ、もう一人の少女が俺の上に馬乗りになる。
「あいらぶゆーですよ、兄ちゃん」
馬乗りになった少女はそのまま俺の唇に唇を重ねようと顔を近づけてくる。
こいつは俺の双子の妹で千代田まひろ。身長は低く童顔だが、胸、尻共に大きく、いわゆる「ロリ巨乳」というやつだ。
とは言ってもやはり中1。大人の女性が持つ本物の巨乳とは違い、他の子より大ぶりなだけである。
「なぁ、俺たち双子なんだけど‥‥」
俺も必死に抜け出そうとするが、身長も低く、力もない。唯一の救いはすばしっこさの俺が抜け出せることもなく、
「家族だからこそのスキンシップだよ、兄ちゃん」
と容赦なく唇を重ねてきた。
「何お前ばっかいい思いしてんだよ!」
「兄妹愛、いいよね〜」
周りからは男子のブーイングと女子の嬉々とした視線が飛んでくる。
もういやだよ‥‥(泣)
長い口づけを終え俺は解放された。
「お前とまひろちゃん見てると女子同士の百合みたいに見えてくるよ! うん、百合、いい! 」
和樹が興奮し話しかけてくる。
「和樹の意見には同意するけど、変な目で二人を見ないでよ、この変態!」
クラスの女子が和樹に対してブーイングする。
てか、何同意してんの?
「ねぇ、皆さん?なんで和樹の意見に同意してる点について質問が.…」
彼女らは即答した。
「だって、見た目が女の子より女の子っぽいんだもん」
泣きたいよ、本当に‥‥
俺は中性的な顔立ちだ。だが、性格は父に「男らしく」をモットーに育てられたから普通に男子ですよ。
なにやら和樹が先ほどの女子の言葉について反論があるようだ。
「いや、待つんだ女子の諸君ッ!俺は決して変態ではない!」
いや、和樹よ。お前は変態だ、認めるんだ。
「だったらなんなのよ」
女子もわさわざ聞かなくていいから。
「俺は‥‥‥‥ 紳 士 だ!」
あぁ、言うと思ったよ。うん。
女子は当然のことながら
「どこの口が言うのよ、入学早々女子更衣室入って荷物漁ってたくせに」
よく言った、女子諸君。
「そ、それは‥‥」
もう諦めろよ、和樹‥‥
こうして今日も何事も無かったように? 終わり放課後になった。
「おい和樹、早く滑走路行かないと他の奴らきて離陸の順番後回しにされるぞ!」
俺は和樹と共に登校しているから下校も当然和樹とだ。
「ごめん潤、今日は先生から呼び出し食らったから俺電車で帰るわ〜」
女子更衣室の件か‥‥
クラス全員がそう悟ったのか一瞬教室か静かになった。
「もしかしたらこの前100円拾って交番届けたののお礼とかかな」
和樹、お前は脳内がお花畑すぎる。将来社会にでて生きていけるか不安だよ。
「それじゃ、帰ってるから〜、あばよ和樹!」
「あばよ潤!」
こうして俺は一人で帰るはずだった
だが、
「兄ちゃん、今日私を乗せてって〜」
こいつだよ。
「はぁ? お前いつも他の人のに乗ってきてるじゃん」
「いや〜、たまには日本軍の傑作機に乗ってみたくて」
いつもは『赤とんぼの方がかわいい』とか言って零戦馬鹿にする癖して、虫がよすぎる。
これは兄として叱らなければいけない。
「あのなぁ‥‥」
「あ、本当は赤とんぼがエンジン不良起こしたから電車で帰る予定だった所にちょうど兄ちゃんの零戦の席が空いてるのを聞いただけだよ」
なんだよ、俺の兄として奮い立たせた妹を叱る勇気を返せ!
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俺たちは滑走路のすぐ脇の駐機スペースで離陸許可を待っていた。
『中等部1D、千代田潤。離陸を許可します。』
「了解です、中等部管制。千代田潤、同乗者千代田まひろ下校します。」
『気をつけて下校してください。それではさようなら』
「さようなら」
このような下校時の管制塔とのやりとりも大分慣れた。
管制塔は生徒会が選んだ優秀な生徒が運営している。
高等部も同様に、だ。
俺は別にやりたく‥‥やりたいです。とても。
そんな事を考えながら、俺は零戦の栄一二型エンジンの出力を上げながら操縦桿を引き滑走路から機体浮かせ、旋回しながら高度を上げていき、高度2000mで帰路に着いた。
帰宅途中に妹が俺の特異体質について注意をしてきた。
「兄ちゃん、あの特異体質のこと、頑張って秘密を守り抜いてね。ただでも見た目が女に近いのにあの症状が出たら‥‥」
「分かってる分かってる! いつも通りにしてれば絶対にでないから。任せとけって!」
俺は妹の言葉を遮り言った。
妹は心配そうな顔をしたま間だったが大丈夫だろう。
この時この会話がフラグになっていたのに気づいたのは事件の後だった。
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入学式で理事長が話していたように普通の学校とは違い、戦闘訓練が行われてる。
予算も他の学校とは天と地ほどの差があり、通学には訓練の一環として岩手県各地にある専用飛行場から、《普通》の生徒は学校から貸し出される旧日本軍の九三式中間練習機「赤とんぼ」を使い二人組で登校する。
しかし、一部の学生達は戦闘機を借りずに自分の家で買うお金持ちもいる。
俺、千代田潤もその1人であり零式艦上戦闘機「零戦」を改造し、二人乗りできるようにしたもので友人の和樹と共に一関市のある住宅地から磐井高等戦闘学校附属中学校、略して磐高附属へ今年の四月から順調に通っていた。
市内だから歩けばいいと思うが、一関市は横に広く磐高附属中は須川という山のふもとにあり周囲には住宅地がないため自然に全員が飛行機通学になってしまう。
そして今日も後ろに和樹を乗せていつも通り家を出た。
本当にいつも通りだった。
あの事件が起こるまでは‥‥
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一関市上空
「昨日女子更衣室入ったことで先生に怒られたらしいな」
俺は先日和樹がやらかした痴漢騒動について呆れた声で
話を振った。
「なぜそれを貴様が知っている⁉︎」
いや、全員気づいてたから。脳内お花畑のお前以外呼び出されたの聞いて気づいててたから。
「でもさ〜、お前も知ってるだろ、女子更衣室は神秘の世界だって! 」
「よく昨日絞られてまだ言えたもんだ。そして同類にするなっ」
「へ〜い」
俺と和樹はいつも通りに我が愛機、零戦に乗りながら登校中の優雅時間を過ごしていた。
「いや〜、潤の家はさすがだな、自家用機なんて」
和樹がいつものように妬みを言ってくる。
「親の実験が成功したのを喜ぶべきなのかどうなのか‥‥」
うちの父親は科学者だ。
家族は、母、父、姉一人、妹一人だ。
妹は昨日のあいつだ。
少々ブラコンが過ぎるので心配だ。
母、姉は追い追い説明しよう。
俺の父は、俺が小1の時に俺に試した薬が改善したものを発表し、その収入で俺の家はいわゆるお金持ちになった。
だが、俺に試されたのは失敗作だった。
そのせいで俺は皆に隠し続けなければいけない特異体質を持ってしまった。
「そういえばお前っていつも長袖だけど、暑くないの?」
和樹、小学校の頃からお前は何かあるとそれを言うがそれは俺の特異体質に関わることだからお前には悪いがいつも通り嘘をつかせてもらう。
「昔から紫外線に弱くてね」
紫外線アレルギーというものがあるそうだからきっと変には思われないだろう。
「ふーん、幼稚園の頃は冬場以外いつも半袖短パンだったお前がな‥‥」
和樹は記憶力だけはいい。こうやっていつも俺の過去を思い出してくる。
「ま、人間いろんなことがあるのだよ、和樹大佐」
「わたくしもそう思います、閣下」
こんな冗談を交えながらいつも通りに学校上空まで来て旋回しながら、学校側からの着陸許可を待っていた。
しかし、事件は突然起こった。
『こちら高等部管制塔、学校上空にいる生徒は今すぐ急上昇、当空域を離脱してください!』
いつもとは違い高等部管制塔からの無線だった。
「高等部管制塔、何かあったのですか?」
事態を読み込めない僕たちは無線の内容を無視して、学校上空を旋回していた。
『検査中だった校地防衛システムが誤作動を起こし暴そっ』
突然無線が切れ、それからはテレビの白黒画面の時のような音しか聞こえなくなった。
ジャミングだ。
ジャミングとは敵の電波を妨害する強力な電波である。
でもなぜジャミングが?
「これは、‥‥逃げた方がいいんじゃね?」
和樹が震え声に近い声で俺に話しかける。
「うん、これから機の動きが激しくなるからしっかり掴まってろな」
と、操縦桿を引いた時には遅かった。
バスッ、バスッ
乾いた音が左翼から聞こえる。
被弾したのだ。
この学校は国家機密レベルの技術や、優秀な学生達がいるため、対地、対空防御のための武装が施されている。ジャミングもその一つだったのだ。
皮肉なことに学生を守る機能も担う校地防衛システムのせいで、俺と和樹、つまり学生が死へと追い詰められてしまているわけである。
「和樹、被害報告!」
入学して真っ先にならったダメコンがこんなところで役に立つとは‥‥もう半分涙目だよ。
「左翼に被弾、炎上中! 」
和樹も恐怖は感じているようだがしっかりと被害状況を報告してくれた。
「仕方ない、脱出するぞ!」
(あぁ、短い間だったがありがとう我が愛機。)
そんなことを考えながら緊急脱出用のレバーを引き、俺と和樹は無事脱出。
ではなかった。
長袖が破け、腕を少し切ってしまい、そこから血が垂れていた。
脱出には成功した。
一般的に考えると、だ。
だが、俺には脱出失敗以上のショックと悲しみが襲っていた。
「おーい、じゅーん! 大丈夫か⁉︎」
パラシュート降下中の和樹が俺の服が破けたのに気づき声をかけてきた。
「お、おう! 大丈夫だからそっち行ってくれ!」
なんとしても見られないようにしなければ!
見られたら最後、俺はの特異体質が皆にバレてしまう!
「どうした潤、お前いつもより声が高いぞ。まさか声帯をやられたのか⁉︎」
和樹が俺のことを心配しさらに寄ってくる。
「おい、どうしたんだよじゅ‥‥ん⁉︎」
あぁ、ばれてしまった。もう俺の平和な生活は戻ってこないのか‥‥
「潤ッ、お前、なんで胸があるんだよ⁉︎」
これが俺の特異体質。
出血すると起こる、女体化現象だ。
1話 完
次回 第一章 特異体質 2話
ここが良かった、脱字がある、兵器の名前が違うなど、どのようなものでも構いません。
感想をお待ちしています!
次回の投稿がいつかは決まっていませんが、週一のペースで投稿していきたいと思っています。
よろしくお願いします!