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誰かのヒーロー  作者: カバン
第一章 変化
5/13

小鳥遊 雄大―5

「な、なにを言ってるんだ?」


馬鹿馬鹿しい。

小鳥遊は笑う。悪魔だって?意味がわからない。

これは現実じゃないんだ。夢だ、そうなんだ。

繋がれた首輪を必死にはずそうとする。

首輪には少しの隙間しかなく、人差し指がギリギリ入る程度だった。

引き剥がそうとするとまるで反発するかのように絞まりが強くなっていくようだった。

そんな姿を見て嘲笑う長身の男は歪んだ顔を手で覆う。

少しの間震えながら笑いをこらえ、手を顔から放すと歪んだ顔は嘘かのように元通りの真顔に戻っていた。


「無駄だ。いくらとろうとしても取れない。それに無理に取ろうとすると絞め殺すようにできてる。だから下手な考えはやめることだ。」


淡々と説明する男を鋭い目付きで睨み付ける。


「なんなんだよ!死んだとか、悪魔とか、ふざけるのも大概にしやがれ!」


そういって前の鉄格子を蹴りとばす。

がしゃっとおとをならして、鉄格子の一本一本に細かく描かれている蛇かムカデの模様がまるで生きてるかのようにもぞもぞ動く。

背筋を通る寒気に襲われ、思わず身震いする。


「これは夢なんだろ?いいよ!なら覚めろよ!俺!起きろ!起きろ!」


小鳥遊の叫びは牢獄のホールに響き渡る。


「やめろ。騒ぐな。あまり騒ぐと迷惑だ。」


そういって長身の男は苦虫を噛み潰したような顔をする。

長身の男は大鎌を構えて殺気を放つ。

小鳥遊は喉元を切り取られるような悪寒を感じ、固唾を飲み込む。


「な、殺すつもりか?もう死んでるんだろう?死んでいる俺をどうやって殺すんだよ。」


苦笑いを浮かべながら長身の男を見る。

彼は無言のまま立ち上がり大鎌が首筋に立てられる。


「殺すという表現は間違っている。ここでは消えるというのが正しいだろう。」


冷酷な表情を浮かべる男はよくテレビのニュースに映る殺人鬼の顔など比にならないような恐怖があった。

殺される。小鳥遊はそう感じた。


「だが、消すことはない。お前は先程からいっている通り手違いで死んだんだ。悪いが生き返らすことは私にはできない。が、生き返るチャンスはあるぞ」


小鳥遊はずっと長身の男の言葉を頭の中で繰り返す。

手違いなのに生き返れないだって?冗談じゃない。


「そのチャンスは生き返ることもできるけど、生き返れない可能性があるってことか?」


小鳥遊の言葉に長身の男は深く頷く。

小鳥遊はため息をつき、この状況に悪態を吐く。

なんで、こんなに理不尽なことになったんだ。謎が多すぎる。

自由な腕で顔を覆う。真っ暗な視界は不安まじりの安心があるような気がした。

北条が何故俺を読んだのか、神の台本とやらが狂った原因とやらの悪魔とはなんなのか。何もかも生き返らないとわからない。

やるしかない。

小鳥遊の中で決意は固まった。

真実を知るためには生きるしかないその決意が伝わったのか大鎌を引いて、肩にかけ冷酷な表情のままゆっくりと立ち上がった。


「やるんだな、まぁやるしか他に道はないわけだが。」


四脚の椅子を脇にどけもう一度小鳥遊を見る。


「チャンスというのはな、簡単なことだ。地獄にいるべきではないと判断されることだ。」


「どうやって?」


「例えば他人を助けたり、悩みを解決したりだ。」


小鳥遊は目を丸くする。

恐ろしい表情のくせに冗談をかましてるのかと疑いたくなる。

だが、冗談ではなさそうだ。


「まぁ、頑張れよ。私はサポートぐらいならやれるだろう。私は死神だ、会いたければ呼ぶがいい。」


そう言い残して長身の男、死神は黒の背広をただしながら奥の真っ暗闇に消えていった。

汚く黒ずんだ床に座り込む。破れたジーパンの跡を虚しくいじりながら思い出す。

松田との約束を破ってまできたというのにさんざんな日だったと。

少しの後悔が頭をよぎる。

松田とあっておけばよかったと。

牢屋から外の風景を見る。廻る螺旋階段の続いていく先は遥か上まで続き、みえることはなさそうだ。コンクリートの通り道は二人の人がギリギリ行き来できる程度の幅で下の方は牢屋からでは見ることはできなかった。


「はぁ…」


ため息が下に吸い込まれるように小鳥遊には思えた。


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