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誰かのヒーロー  作者: カバン
第一章 変化
3/13

小鳥遊 雄大―3

何が起こったのか。何故血が?それよりどうして撃たれた?

拳銃は右手に持っていた。それもウエイトレスさんが奪おうと必死につかんでいるんだ。なのに、羽交い締めにしている俺がどうやって撃たれたんだ?


小鳥遊は自分の胸に空いた穴を見る。弾ける血が無数の細菌のように飛沫し、服を、そして男を汚した。そして共に理解する。

この血が自分の血だけではないことを。

羽交い締めにしていた手を力なくほどき、崩れ落ちる男を見やった。

そして、コツコツと木製の床を革靴のようなもので踏みつける音がつかの間の静寂を埋める。

小鳥遊は、そしてウエイトレス、マスターも固まった体のまま目線だけで音の出所を見つめた。

そこには異様な格好の男が立っていた。

西洋人のように鼻が高く、堀が深い。黒い髪は無造作に伸びきって肩に掛かるほどのび、黒のスーツ、黒いハットで、何が異様かというと小鳥遊に向けてつき出した手には細やかな装飾が施された拳銃のようなもの、そして片方のてには無数のどくろのような模様が施された大鎌を肩に掛けていた。

長身の体は妙な威圧を放っていた。

倒れた男に近づき頭に大鎌を降り下ろす。

凄まじい速さで降り下ろした大鎌は風を切り裂き、頭蓋骨が潰れ、脳に達する。

それはあっさりとしていた。何か不自然を感じることなく、まるで当たり前の出来事のように。一環して、かわりない作業のように行われた。

この長身の男以外誰一人として動けなかった。

長身の男は大鎌を頭から引き抜き、肩に掛けた。

最初に動いたのは小鳥遊だった。

正しくは動かざるを得なかった。

小鳥遊の血が胸から流れるにつれ薄れる意識は体の操縦を止めさせたのだ。膝をつき、倒れている男の上に重なるように倒れた。


その時初めて長身の男が口を開いた。


「ふむ、間違えたか。仕方ないな。」


そして悲鳴。

時差を生じてウエイトレスが震えた体を抑えながら悲鳴をあげた。

つんざく悲鳴に耳を塞いだ長身の男は拳銃の弾装に大鎌に付いた肉片を込め始めた。すると拳銃はまるで生き物のようにその肉を食べ始め、吸収した。そしてその弾装を拳銃に装着し、引き金を引いた。


「うるさいぞ、君。あまり騒がないでもらいたい。」


ウエイトレスは口を抑え悲鳴をこらえた。

長身の男は重なって血を流す二人の男を見る。

その死体は彼にとって計算外だった。


「おや、こいつは誰だ?…しまったな。」


そう言ってため息をつき、


「非常にまずいぞ。」


と、焦りをあらわにする。

マスターはこっそりウエイトレスをカウンター側に寄せ、下に隠れた。

二人は小声で助けを呼ぶ算段をたて始める。


「どうしましょう…どうしたらいいんでしょう。どうしたら…」


ウエイトレスは焦点があわず、震えながらマスターに耳打ちする。

マスターは彼女の肩を抑え、目を合わせる。


「落ち着きなさい。冷静になるんだ!」


肩を揺らすが、ウエイトレスは泣きながらどうしましょう、どうしましょうと呟くだけだった。

マスターは刻み込まれたしわを出来るだけ柔らかくし、優しい微笑みを浮かべた。


「大丈夫、安心しなさい。強盗がきた時に緊急用のボタンをおしてあるからもうすぐ警察の方が到着するはずだよ。」


肩を撫で下ろし、もう一度微笑む。

ウエイトレスは少し落ち着いた様子で、呼吸を整え始めた。

人が撃たれるのを間近で見たのだから仕方ないことだ。

マスターだって平気なはずはなかった。心では叫んで逃げたいほどだが、彼女を見捨てる訳にはいけない。その思いでうろたえる心にカツをいれる。

マスターはこっそりとカウンターから顔を出し、長身の男の様子を伺う。

しかし、そこには男の姿はなかった。

マスターは唖然とする。


「綾君。あの男がいない。」


名前を呼ばれはっとするウエイトレスの桜子綾(さくらこ あや)をよそに、マスターはカウンターから出て周りを見渡す 。

しかし、長身の男の姿はなかった。さらに常連客の学生の姿もなく、あるのは強盗の死体と、溢れる血だけだった。


そして、サイレンと共に警察が到着した。





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