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スケルトン・パニック  作者: clay
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旅立ちと終わり

2045年6月13日15時28分  勇者和音死亡。


俺は和音。この国セマールの勇者だった。

2027年の初夏セミが鳴き始める頃に下町のごく一般的な家庭に生まれた。

生まれながらに何か秀でた才能があった訳でもなく、同じ年頃の子供と何も変わった所など無かった。

俺が勇者と呼ばれる存在なるきっかけになったのは14歳だった時だ。

この国の姫様がお忍びで近くの村まで出かけていた帰り道の事になる。

姫の護衛はたまたまゴブリンの群れに出くわしてしまい応戦する事となっていた。

しかし、お忍びだった事と街道の普段の安全具合からそれ程多くの兵士を連れていなかったため対応しきれず危うい状況となっていた。


どこぞの物語ではありがちだが、ちょうど自分もその街道を通っていた訳である。

なんてベタな……と思うだろう。


姫様は一人馬車から逃げる用に兵士に言われ、馬車を飛び出した。

だが一人で逃げていく姫様を見つけたゴブリンがいたらしく追いかけられていた。


この話の流れから俺がそのゴブリンを倒し姫様を助けつつ国へ戻ったと思うだろう。


そんな訳あるか!現実はそんなに甘くない。

14歳の武術の経験もなかった子供にそんな事できる訳ないに決まってる。

最初、ゴブリンに追いかけられているのが姫様だということにも気づいていなかった。

だってお忍びだったから姫様はどこにでも売っていそうな服で普通に見たらただの綺麗な村人ぐらいにしか思わなかった。

そんなわけでゴブリンに追いかけられてる姫様がこっちに走って来た時俺は冷や汗が止まらなかった。

姫様が助けを求めながらこっちに走って来たせいで俺も認識されてしまい結果的に一緒に逃げるはめになったのだ。

その後なんとか国の門付近に辿りつくと門番がゴブリンを倒してくれたおかげで俺たちは生き残った訳だ。

まぁその時一緒に姫様と逃げたため、吊り橋効果なのか姫様に気に入られ、騎士見習いとして雇われ、ついでに騎士団長直々に指導してもらえた事で強くなれた訳である。




2045年6月13日13時10分 和音、魔王討伐に出発

ここで気づくと思うが俺が死んだのはそれから2時間と18分後の事である……。

国を出た俺達はまずは近場の村へ行くことになった。

だがこの選択がミスだったのかもしれない。いや違うか、このパーティがミスだった。

街をでて2時間と16分。次の村まであと1時間くらいの距離まで来た時だ。

道幅が3mくらい崖を通った時だが、よそ見をしてたアーチャーが足を滑らせて崖から落ちかけた。

俺は必死にアーチャーの手を掴んだのだが反動で俺が落ちた……。

こんなあっさり死んでたまるかと思っていたら、俺が落下している真下に木があった。

九死に一生とはこの事だなと思ったのだが枝が俺の腹部を貫いた。

それから1分間俺は腹部の激痛に苦しみながらもがき苦しみ死んだ。



2045年15時40分 和音蘇生

ここで話がおわる訳はない。俺のパーティーは蘇生が使えるヒーラーがいるのだ。

まさか旅立って一時間しない間に一度死んだなんてとても言えない出来事だったぜ。

目を覚ますとパーティーのみんなが俺を囲むようにして見ていた。

俺が落ちる原因となったアーチャーは涙やら鼻水やらですごい顔でひたすら謝っていた。

まぁこんな事次から懲り懲りだからこれで少しは反省してくれると助かる。

アーチャーのとなりではヒーラーが俺を見ながら「すみません……」と謝りだした。

和音「…………」

なんでコイツまで謝ってるのだ。

ふと剣士に顔を向けると俺の腹部を指さされた。



「………………………………」


「なんじゃこりゃぁぁっっーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」


腹部の方を見た俺の目に移ったのは真っ白な人間の骨だった。




その後パーティーの皆から事の全てを知らされる事となった。

何が起こったかというと俺が死んだ数分後仲間達は俺の死体を回収し蘇生を試みたらしい。

だが、ヒーラーが普段使う事などない蘇生魔法しっかり思い出せず、よりにもよって腐食魔法を俺に喰らわせた。

焦ってもう一度魔法を使い今度こそ蘇生魔法を成功させたらしいが、その時には俺の体は骸骨と化していた。

ねぇ誰か教えてよ……俺はどうしたらいい?


剣士「見ろよ綺麗な骨だろ……コイツ死んでるんだぜ……」

俺「面白くねぇよそのネタ!!てか笑える状況かよ!!」

剣士「辛い時こそ笑え、暗い顔してても未来は見えて来ないぜ!まぁ表情なんて分からないがな」

俺「笑ってるのはおめぇじゃねぇかよ!!」

剣士「だって知能を持ったスケルトンなんてレアだし、見世物にすれば絶対儲かるって」

俺「スケルトン言うなっ!てか、さりげに恐ろしいこと言ってるんだよお前!?」

剣士「冗談だって2割はな」

俺「それってほとんど本気じゃねぇかよ!!」

それから1時間、俺は剣士と一緒にコントのような会話を続ける事となった。


これが俺のセカンドライフのはじまりだ。

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