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僕の彼女  作者: 優流
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可能性の話

僕はこないだ流月とデートした時の待ち合わせ場所の駅前広場のベンチに座っていた。ここで大神と待ち合わせをしているのだけど、大神は現れない。時計を見ると待ち合わせ時間を30分以上過ぎている。さっきから電話をしているけど、電話にも出ない。


「あら?」


突然目の前に露出度の高い大胆な格好の女性が現れた。僕は先日彼女に会っている。


「ケンちゃんに呼ばれて、ここまで来たんだけど、どうしてあなたがいるのかしら?」


現れたのは流月のお姉さんの龍月(たつき)さんだ。


「僕が大神に頼んで、呼んでもらいました」


病院で僕は流月に逢いに行くことを大神に伝え、それに伴い龍月さんに影宮家まで連れて行ってもらおうと考えていた。そこで大神には龍月さんを呼び出すように頼んでいた。


「ケンちゃんに大事な話があるって、熱烈なアプローチがあったんだけど、期待外れね。どうせ、流月ちゃんのとこに連れて行けって言うんでしょ?嫌よ。こっちは家族が苦しんでいる所をわざわざ来たっていうのに。

だいたい、誰のせいだと思っているの?」


「僕です」


「わかってるなら、もう関わらないで」


「嫌です」


龍月さんは苛立ちを露にした。嫌悪感さえ感じている顔だ。


「あなたが流月ちゃんの恋人じゃなかったら、一番苦しむ方法で殺してやるのに…………いいわ、話だけ聞いてあげる」


「ありがとうございます」


僕らは駅前広場を離れて、車を止めてある駐車場に向かった。






















「それで?何を考えているの?」


車の中は冷房をつけてもいないのに、凍てつくように寒かった。悪寒とも似た寒さは龍月さんからの圧力なのか、それとも吸血鬼の異能の力なのか僕にはわからない。でも、ここで退く訳にはいかない。


「その前に、流月の様子を教えてください」


龍月さんは苛立ちを隠さないでぶっきらぼうな態度で流月の様子を教えてくれた。


「元気……と言えば、聞こえはいいわね。でも、元気過ぎるのも考えようでしょ?

今、私達と知り合いの吸血鬼の一族に協力を求めて、流月ちゃんの禁断症状に対応してるわ。何重にも拘束して、動物の血とか拝借した輸血用の血でなんとか渇きを凌いでる。

でもね、それでも凌げるのは一時的。成人した、それも屈強な吸血鬼が数人で抑えて、やっと。

ただの人間にどうこうできる状態じゃないわ」


「それは今までもそうです。僕が誘拐された時も、襲撃された時も、僕は流月に助けてもらうばかりでした。だから、今度は僕が助けたい」


「あなたには無理よ。血を吸われる。それでおしまい。確かに、そうすれば流月ちゃんは今後一切吸血しなくても渇きに苦しまない。

でもね、心が苦しむの。あなただって、監禁されて、目の前で流月ちゃんが乱暴されてて流月ちゃんがいなくなった時のことを考えたんじゃない?あなたと同じ思いを流月ちゃんもするかも知れないの!!しかも、自分の手で!!」


「流月はそんなことしません」


「…………信じたい気持ちはわかるわ。でもね、こればかりは理性とか自制心とか気持ちでどうこうできないの。できたとしても、流月ちゃんは苦しむの……

もし、本気で流月ちゃんのことを思うなら、潔く引いて」


「僕もそう思いました。でも、今の状況で流月が苦しんでいないとは思えない。逆の立場だったら逢っても、逢わなくても苦しいなら、逢って苦しみたい。それは僕のエゴなんでしょうけど……

少なくとも僕は流月と逢って話さないと気がすまない」


沈黙が車内に充満した。龍月さんはまだ腑に落ちない様子だ。


「奥歯にものが挟まったような感じ……まだ何か隠しているわね?」


これも吸血鬼の能力的なものなのか、それとも僕の話し方が悪いのか。確かに、まだ伝えていないことはある。


「隠しているつもりではないんです。ただ…………話して、可能性を否定されて絶望するのが恐いんです」


「可能性?一体どんな可能性が残っているの?」


僕は可能性の話を口にするのが恐かった。否定されるのも、希望が絶たれるのも恐かった。「もしも」「万が一」「ひょっとしたら」「たぶん」そうした言葉で誤魔化さないと挫けてしまうような可能性の話。


























「…………流月を人間にします」

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