第6話 お勉強タイム
親子を助けてから3日後。
統夜は順調(?)に、冒険者生活を営んでいた。1日で3つ4つの依頼をこなす統夜は、既にF2で、もうすぐF1になろうとしていた。
受付嬢もビックリするくらいのハイペースである。
ほとんど街中での依頼のため、あまりステータスは上がっていない。1度だけ、ウォードッグの討伐依頼を受けたが、戦闘はそれっきりだ。
レベルも3のままである。
実際のところ、レベル3は冒険者としてどうか、というレベルだが、ステータス自体が統夜は高いため、問題ない。
レベルや熟練度は、基本的に戦闘でしか上がらないようである。
お金も2万ロンドほどある。まぁまぁといったところだろう。
そんな中、統夜は、装備を整えることを決意した。
というのも、今までずっと平民の服みたいなのを着てきたからだ。さすがに冒険者としての格好がつかない。
装備は、ギルド内でも販売されている。その装備を見てみることにした。
職人ギルドで、それは売っていた。
レザー系一式が1万ロンドだ。
動きやすさを優先したい統夜にとって、買わない手はなかった。
だが、さすがに武器を変えるだけのお金はなかった。残念ではある。
が、魔法だけでも戦えるし、ブロンズソードでも叩き斬ることは可能だ。少なくともFランク圏なら。
なので大丈夫だろう。
レザー系防具を身に纏った統夜は、より冒険者に近づいた感じがする。やはり、防具は雰囲気をも変えるのだ。
いつも働いてばかりなので、今日、統夜は休むことにした。
朝っぱらから、酒場のテーブルに突っ伏す統夜。
どうやら、身体強化されていても、疲れることは疲れるらしい。
朝ご飯をカウンターで注文して、しばらくの間、統夜は突っ伏したままだった。
「おはようございます、トウヤさん」
突っ伏した統夜に、声をかける人物がいた。
このギルドの看板受付嬢である。
「あぁ、サラさん。おはようございます」
統夜は振り返って挨拶をした。
「今日もたくさん依頼を受けられるんですか?」
「いや、今日はゆっくりします」
「そうですか。やっぱりハイペースですもんね」
統夜のペースは、受付嬢が心配するほどのものだ。サラは、統夜が休むことにしたことに、どこか安心していた。
「はい、これが注文の品」
サラは手に統夜の朝食を持っていた。もちろん、お盆を使って、だが。
「トウヤさん、もうすぐF1ですね。Eになるのももうすぐじゃないでしょうか?」
「そうだな。まぁ、無理のない範囲で頑張るよ」
「そうですね。トウヤさんのような優秀な方を失うのは、ギルドとしても不本意ですから」
「おいおい……俺はF2だ。優秀なんて言葉からはかけ離れた存在だって」
統夜は本気でそう思った。
「そうですか? 同ランク内では、一番ご活躍されてますし、将来有望です」
「やめてくれ~。ハードル上げないで」
統夜の情けない言い様に、思わず苦笑するサラだった。
統夜は、もっとクラスや魔法のことを知るために、図書館へ向かった。
図書館はギルド並みに大きな建物で、中層区にある。
図書館には巨大な本棚がいくつもあり、おびただしい数の本が揃っている。人は少なく、テーブルをたくさん空いている。
統夜はクラスや魔法、国についての本をとった。
テーブルについて、本を開く。
お勉強タイムだ。
クラスには、初級、中級、上級があり、初級をカンストすると、中級。中級をカンストすると上級のクラスに昇格できるらしい。
初級クラスは、《戦士》《魔術師》《斥候》《回復師》の4つがある。それぞれが2つの上位クラスをもち、《戦士》ならば、《剣士》《重装兵》という中級クラスになれる。《剣士》なら攻撃寄り、《重装兵》なら防御寄りになる。
ステータス画面には出ていないが、力や防御力といったステータスもあり、クラスで補正があるらしい。《戦士》系なら力や防御力、《魔術師》系なら攻撃魔法の威力、《斥候》なら素早さ、《回復師》なら、補助魔法や回復魔法の強力さ、といったステータスに補正がおきる。
《戦士》から《剣士》《重装兵》になり、《剣士》《重装兵》それぞれからは《剣闘士》《盾戦士》となる。また、一度上位クラスへ昇進すると、今後一切、変更はできない。つまり、《剣士》から《重装兵》にはなれないということだ。もちろん、《戦士》にも戻れない。
ただ、《魔術師》系や《斥候》系など、系統が違うクラスにはクラス変更できる。
クラスに応じて、魔法や特殊能力を覚えるので、クラス毎に使う武器は大体決まってくる。
ちなみに、《魔術師》が昇進すると、《召喚術士》と《魔法師》となり、それらがそれぞれ昇進すると、《精霊士》と《魔導師》となる。
《召喚術士》は使い魔を召喚できる。ただし、戦闘可能な使い魔はあまりおらず、いたとしても召喚に莫大な魔力が必要であるため、人気がない。しかし、その上位クラスの《精霊士》は、精霊の力を貸してもらえるため、戦闘能力は格段に上がる。燃費は悪いままだが。
《魔法師》や《魔導師》は純粋に魔法を使っていくクラスである。
《斥候》の中級クラスは《弓兵》と《アサシン》だ。《弓兵》は弓を使わないと発動できない魔法を覚える。燃費もそこそこで、安定した威力を誇り、援護射撃も魔法より連射が利くので、攻撃型後方支援としては中々見どころがある。
《アサシン》は暗殺者……ではなく、《斥候》の能力が全体的に上がっただけのクラスである。魔法よりも特殊能力に重点をおいており、【ステルス】なども覚える。
《弓兵》《アサシン》の上位クラスは、それぞれ《狩人》《スパイ》である。
《狩人》は《弓兵》よりも移動力や攻撃力に長ける。
《スパイ》は別にスパイするわけではない。深い意味はなく、単に《アサシン》の上位互換だ。
最後の《回復師》だけは特殊で、昇格は1回しか起きない。
《エンチャーター》と《回復術士》だ。
《エンチャーター》は補助魔法、《回復術士》は回復魔法を強化したものだ。
以上が全てのクラスだ。《凶星戦士》は、存在しない。
やはり、異世界転生者であることが原因なのだろう。
魔法についても調べた。
そして、分かったことが1つ。
やはり、統夜の【ファイア】は異常だ。
普通の【ファイア】の大きさはテニスボールくらいだが、統夜の【ファイア】はバスケットボール級である。
威力も統夜の【ファイア】の方がある。普通ならウォードッグ1体がせいぜいの威力なのだが、統夜の【ファイア】は2体を吹き飛ばした。
魔力消費は本来5らしいが、統夜のは10だ。その分威力が数倍なので、採算はとれるが。
国についての本も読もうと思った統夜だが、時計を見ると既に午後7時だった。一冊一冊が厚いので、読むのには時間がかかるのだ。
統夜は国についての本は諦め、本を元に戻してギルドに戻った。