第3話 冒険者ギルド
中は酒場と職人・商業ギルドの売店、ギルドカウンターが合わさった広い空間となっていた。
とりあえず、ギルドカウンターへ向かい、受付嬢に声をかける。
「すみませ~ん」
「はい、どうしましたか?」
フリルのついた可愛らしい制服のギルド受付嬢が応対した。
「冒険者登録したいんですが……」
「冒険者登録ですね。では、こちらの書類に名前と年齢を記入してください」
言われたとおり、渡された羊皮紙の書類に書き込んだ。
「では、少しお待ちください」
そう言ってギルド受付嬢はカウンターの奥の部屋に行った。
戻ってきたときには、ギルドカードと台座の上に水晶玉が乗ったような機材を持っていた。
彼女は、新品のギルドカードを水晶玉が乗った台座にあるスリットに差し込んだ。
「では、水晶玉に手をかざしてください」
言われたとおりにやると、水晶玉が淡く輝いた。
カチンという音と同時に、ギルドカードがスリットから出てきた。
「はい、ギルドカードは完成です。説明は必要ですか?」
「いや、知ってるからいいです」
「そうですか。訊きたいことがあるときは遠慮なくお願いします」
「分かりました」
統夜はギルドの情報は持っていた。
F3からSSまでのランクで冒険者はランク分けされていること。F~Sまでは、3~1という数字が付く。3が低く、1が高い。
統夜は新人なので、F3だ。
依頼を遂行すると、ランク値がたまり、満タンになるとランクが上がる。数字を上げる場合はランク値が満タンになれば上がる。
アルファベットの場合は、ギルドがまわす試験依頼を遂行して初めてランクが上がる。もちろん、試験依頼をまわしてくれるのは、ギルド値が満タンになってからだ。
依頼はF~SSのランクに分けられ、数字はつかない。F3~F1はFランクの依頼しか受けられない。
受けられる依頼は自分のランクと同等の依頼か、下のランクの依頼だ。
パーティーの場合は、メンバーが1人でも依頼ランクに達していたら、受けることが可能だ。
魔物も同様のランク分けをされている。
また、冒険者1人当たり5人まで従者奴隷が認められている。これは、1パーティーが6人までと決まっているからだ。
ただ、従者奴隷の衣食住の面倒を見る責任を主は持たなければならない。なので、5人も従者奴隷を持つ冒険者はあまりいない。
依頼ごとに報酬額も様々だ。
Fなら200~800ロンドくらい。
Eなら1000~1500ロンドだ。
一般的な冒険者であるDなら、3000~4500。
Cなら4000~5000、ベテランのBなら1万前後だ。
強者ばかりのAは5万。
Sは5万~10万。
SSはそれ以上となる。
また、これは目安であるため、必ずこの区切りでるわけではない。
それに加え、魔物の素材もギルドに売却できるため、さらに収入は上乗せされる。危険だが実入りの大きい職業、それが冒険者だ。
統夜はカウンターの横の依頼ボードに向かった。依頼ボードはランク分けされている。SSやSランクの依頼は滅多にない。
あと、冒険者の依頼は多岐に渡るが、盗賊の殲滅なんていう依頼もざらにある。人を殺す覚悟はしておかねばならない。もっとも、統夜には関係ないことだろうが。
Fランク依頼ボードにはかなりの数の依頼があった。
午後だけでできそうな依頼を探す統夜。とりあえず、物資運搬の依頼を受けることにした。Fランクとしては高額の1000ロンドである。
依頼紙をカウンターまで持って行き、場所と確認紙を貰って、統夜はギルドから出た。
確認紙とは、依頼を遂行した証として依頼者にサインを貰うための紙だ。
物資運搬の場所は下層区の建築現場だった。孤児院を建てるそうだが、商業区から木材などの物資を運ばなければならないそうだ。
孤児院を建てる業者は5人だけの小さな業者であるため、人手が足りないのだ。そういうわけで冒険者に依頼したというわけだ。
全員が筋肉質な体型のオジサンだったため、増援として来た統夜はかなり弱そうだった。
統夜の容姿は、身長170で見た目は華奢だ。実際は鍛えてあるので引き締まっている。それに加えて異世界転生者の恩恵があるため、筋力が強化されている。
顔は黒髪黒目という、この世界ではあまり見かけない容姿だ。イケメンというほど美形ではない。どちらかというと、鋭さを感じる。そういう意味ではかなり男前だろう。
戦場でこんな隊長がいたら、彼の指示に従いたくなるような強さを感じる眼光は、意志の強さを感じさせる。
統夜はそういった、冷たい感じな方面の男前だった。決してイケメンという感じではない。
「大丈夫か、坊主?」
依頼者である、この業者の社長(5人だから、もはやリーダー)が訊いた。
「問題ありませんよ。鍛えてますから。冒険者をなめないでください」
本当はさっき入ったばかりなのだが。
だが、それを聞いたオジサン達は「それもそうか」とガハハと笑いながら納得した。
冒険者という名だけで、これだけ信用される。冒険者は荒くれ者が多いが、力仕事には向いているのだろう。
依頼の結果、思いの外早く終わった。やはり、統夜には転生者の恩恵がついており、オジサン達よりも力持ちだった。
予定よりも早く仕事が終わったオジサン達は統夜の肩をバンバン叩きながら、お礼を言い、社長は確認紙にサインを書いてくれた。
「じゃあな! また今度も頼むわ!」
ごきげんな様子のオジサン達は笑いながら帰って行った。
「俺も行くか」
統夜はギルドに戻り、報酬を貰うことにした。
辺りは既に暗い。だが、ロートンにはまだまだ活気があった。
ギルドに戻ると、早速報告した。
受付嬢に確認紙を渡し、報酬金1000ロンドを受け取る。
ついでに宿をとった。一泊400ロンドなので、とりあえず五泊することにした。2000ロンド支払い、晩餐も済ませた。
部屋のベッドに寝ころび、明日のことを考える。
「明日は魔物と戦う依頼でも受けようかな……」
しかし、残念ながら魔物の討伐依頼はFランクには少ない。統夜もそれは知っている。だが、彼は討伐依頼をしたいわけではない。採取依頼でも、街から出れば魔物と戦う機会がある。
「もう寝るか」
光魔法の術式を彫られた魔法のランプを消し、統夜は眠りについた。