表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
凶星戦士  作者: チート野郎o(`▽´)o
12/20

第12話 ダンジョン【Ⅲ】

第3層はジャングルのような地形だった。第2層のように、移動制限がかけられているが、現実さながらの光景だった。





統夜が第4層への転移門に着いたとき、その周囲に5人の冒険者がいた。全員傷だらけで、意気消沈している。


その中に見知った顔を見つけた統夜は、声をかけることにした。


「リリネア!」


呼ばれたリリネアは、統夜を見て、一瞬驚いたが、次の瞬間、泣きそうな顔で統夜の胸にぶつかってきた。


「うわっと……どうした、リリネア?」


普通じゃない空気を感じ取った統夜は、リリネアにそう尋ねた。


「ひぐ……怖かった……うぐ……たくさん人が……」


どうやら、このパーティーは、第4層のボス戦に敗退し、死者を出して後退したらしい。


冒険者なら人の死に耐性があると思ったが、貴族令嬢のリリネアにはなかったようだ。


「リリネア……あったことを話してくれないか?」


見たところ、ここの冒険者は全員DかC。オークはCランクでも中級レベルで、Dランク冒険者でも6人いれば倒せるレベルなのだ。

3体いるらしいが、Cランク冒険者もいることだろうし、死者を出した上に退却などいうのは有り得ない。


普通なら、オークは残った冒険者でも、1人2人殺されたとしても倒せる魔物であるはずなのだ。





「うぅ……」


まだ泣き止まないリリネア。それを見かねたのか、1人の冒険者が統夜に話しかけた。


「あんた、嬢ちゃんの知り合いか?」


見ると、30代前半らしき筋肉隆々の前衛タイプな男が立っていた。頭は丸刈りで、少し厳つい。

大剣と鉄製の軽装鎧を装備している。


「ああ。……そうだ。あんたから説明してくれないか?」


「了解した。俺はガリス。C2ランクだ」


「俺はトウヤ。E2ランクだ」


統夜の言葉を聞いたガリスは、眉をひそめた。


「……Eランクだと?」


彼が言うのはもっともだ。CランクやDランク冒険者でもパーティーを組んで攻略するのに、Eランク冒険者がソロなのだから。


「ランクの割にはレベルが高いんだ。で、こそこそ隠れながらここまで来たわけ」


統夜のセリフに一瞬考え込むガリス。


「……まぁ、今はそういうことにしておこう」


(こいつ……俺の嘘に気づいてるな……)


統夜はそう思いながらも「ありがとう」と言い、ガリスから詳しい事情を聞いた。








事情を聞いた統夜は、頭の中で整理した。




オーク3体を死者なしで倒した。そこまではいい。


だが、その先だ。ボスを倒せば現れるはずの第5層への転移門。それが現れなかった。代わりに現れたのは……


「Cランク魔物最上位のゴーレムだった、と?」


統夜は言った。同じランクでも、強さは全然違う。

ゴーレムはCランク魔物であるが、防御力と攻撃力は凄まじい。速度が遅く、魔法やブレスも使ってこないため、Cランクとなっているが、Cランク魔物の中では最強クラスだ。


ウォーウルフ・ロードは、ゴーレムよりも一段階落ちるが、かなり強力と言われている。


つまり、ウォーウルフ・ロードよりは強いようだ。







統夜には勝つ方法がある。人目もはばからず、魔法をぶっ放すことだ。



「了解した。ただ、この戦力と怪我じゃ勝てない。一旦帰るんだ」


統夜が言うと、ガリスは頷いた。


「了解したが……あんたはどうする?」


「ちょっとゴーレムの様子見さ」


「き、危険よ……」


リリネアが涙で腫れた目のまま、統夜を止めた。


「あんなのに近づいたら……」


「大丈夫。遠目から見るだけだ」


「でも……」


「おい嬢ちゃん。こいつがやるっつってんだ。俺らが口出しすることじゃねぇ」


ガリスが言った。


「……ッ! でも!」


「でも、じゃねぇ。冒険者には行動の自由がある。俺らには、こいつのする事に口出しすることはできない」


「…………」


ガリスの言葉を聞いたリリネアは、黙りこくってしまった。


「お嬢ちゃん……友達がやられて悲しいのは分かる。だがな、冒険者はそんな甘っちょろい仕事じゃねぇんだ!!」


リリネアは、ガリスの説得を聞き入れ、渋々抵抗を諦めた。


「絶対死んじゃダメだから」


「分かってる。ウォーウルフ・ロードの時も大丈夫だったろ?」


統夜は安心させるように言った。


「一旦戻れ。俺は大丈夫だ。死なないように上手くやる」


「……分かった。……もし、生きてる人がいたら、できるだけで良いから助けてあげて」


「了解」


リリネアはそれだけ告げると、他の4人の冒険者と共に立ち去った。


「さて、と……。嘘ついたけど……生きて帰れば大丈夫だよな」


統夜は呟いた。遠目から見るだけ、というのは大嘘だ。


「行くか」


統夜は覚悟を決め、転移門に飛び込んだ。









そこは、ローマのコロッセオのような円形闘技場だ。昔、奴隷を猛獣と戦わせて楽しむなんていう、残酷な文化もあったらしい。


今まさに、統夜は奴隷だった。



「うっわ……」


まず目に付いたのは死体だ。冒険者の死体。


腕が有り得ない方向に曲がってたり、頭が潰されていたりする。


今のところ、ゴーレムは現れていない。もちろん、第5層への転移門もない。


「生存者の確認だな」


倒れているのは7人。頭が潰されている冒険者や、上半身と下半身が分裂している冒険者は無視。どう考えても死んでいる。


統夜は人間の死臭に顔をしかめながら、生存者を確認していた。




調べた限り、6人は死んでいた。


最後の1人は、他の冒険者とは少し離れた位置に倒れていた。


「女の子?」


倒れていたのは、リリネアや統夜と同じくらいの年齢の少女だった。銀髪ショートの可愛らしい少女で、杖を持っていることから考えると、《魔術師》系か《回復師》系のクラスであることが窺える。とりあえず生死を確認する。


「息はある。傷が酷いな……」


身体中に切り傷、擦り傷、打撲があった。幸いにも骨は折れてない。


「【ファーストエイド】!」


統夜は、自分が使える唯一の回復魔法【ファーストエイド】を使った。【ファーストエイド】は傷を塞ぐだけの効力しかない初級回復魔法だが、傷を塞ぐだけでも十分だ。


統夜は次にマジックポーチから瓶を取り出した。その中には、自作の回復薬が入っている。治癒薬同様、凄まじい効力を持つ。


だが、飲まそうとして、気づく。


「どうやって飲まそう……」


意識のない人間に、薬を飲ますのは難しい。


「あ……」


統夜はひとつだけ解決策が浮かんだ。この少女がどういった性格かは知らないが、恐らく羞恥に頬を染める行動だ。

だが、緊急事態なこともあり、統夜は決行した。



まず、口をむりやり開けて、回復薬を含ませる。


そして、顎を引かせて喉を回復薬が通りやすくする。

重力で舌が回復薬の通り道を邪魔するので、少女の口に指を突っ込み、舌を引っ張る。


口の中に含ませた回復薬は喉を通っていった。


それを何度も続ける。


回復薬1本分使い切るときには、統夜の指は少女の唾液でベトベトだった。


緊急事態だから仕方ないとはいえ、気持ちいいものではない。

可愛らしい美少女であったから良かったものの、そうでなかったら死にそうだ。


統夜はマジックポーチから水が入った瓶を取り出し、手を洗った。






未だにゴーレムは現れない。オークさえもだ。


「う……」


少女がかすれた声を出した。ゆっくりと目を開ける少女。


「気がついたか?」


統夜は、覚醒しようとしている少女に声をかけた。


「あなたは……誰ですか?」


「俺は統夜。君達の救助に来た。……まぁ、生きてたのは君だけだが」


「そう……ですか……」


「ああ、正確には君だけじゃないな。あと5人、生存者がいる」


「本当ですか!?」


「ああ」


「リリィは……リリィはいましたか?」


「リリィ?」


「リリネアっていう、赤い髪の毛の活発な女の子です」


「ああ、あいつか。生きてるよ」


「良かった……」


本当に安心したように、少女は言った。


「あっちは君が死んだと思ってる。早く安心させに行こう」


統夜がそう言ったとき、フィールドに異変が起こった。


中央の地面が盛り上がる。


「あれは……」


少女の顔が真っ青になる。


「ゴーレム、だな」


地面から現れたのは全長5mの石造りの巨人。


Cランク最強といわれるゴーレムだった。





「なぁ」


真っ青になっている少女に問いかける。


「君の名前は?」


「い、イリヤ・サナリィです」


少女は気丈にも答えた。


「よし、イリヤ。俺が時間を……」


その時だ。ゴーレムから怪しい光が漏れだし、第3層への転移門という退路を包みだしたのは。


「おいおい……冗談だろ?」


転移門は音を立てて、怪しい光に押し潰された。


「イリヤ……」


茫然自失しているイリヤに統夜は声をかける。


「……君の得意な戦法は?」


「……わ、私は……」


混乱の真っ只中にあるイリヤは、そんな簡単な内容の質問さえ理解できなかった。


「しっかりしろ!!」


統夜はイリヤの肩を持ち、強く揺さぶる。


「生きて帰りたいんだろ? 帰らしてやるから、君の得意な戦法を教えろ!!」


「……後方支援です」


「分かった。俺があいつの相手をする。イリヤは、自分のできることをやれ!!」


「そ……そんなの無茶です!」


イリヤは叫ぶように言った。


「あなた1人で何ができるんですか!?」


12人もいて負けたのだ。統夜は、とてもじゃないが強そうには見えない。だが、統夜は自信ありげな笑みを携えてこう言った。


「か弱い女の子を生きて帰らすことくらい、やってやるよ」


そのセリフを聞いたイリヤは、胸を締め付けられるような感覚に襲われた。嫌な感覚ではない。少し苦しいが、心地良いかもしれない。




「じゃ、行ってくる」


「あ……」


声もかける間もなく、統夜はゴーレムに駆けていく。




「……絶対に……死なないでください」


イリヤは、たった今会ったばかりの少年に、本心からそう願った。






最近、レベルとか魔法の概念の設定に振り回されている気がします……



レベルとかはテキトーに考えてください。Cランクの平均レベルを25から35に変更したりして、作者自身もよく分かってないです(笑)


レベルが上だと強くて、同じレベルでも個人差があって……


でも、レベルとは別に技術や経験も重要。そういう風に考えてください( ̄∀ ̄)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ