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否定人クルピラ

 提案なんですが、他人の感覚を否定するのは止めませんか?


 いや、正確に言うと、俺の感覚を否定するのは止めませんか?今週いっぱいで止めてくれませんか?これからの世の中、我々人類は助け合って生きていく必要があるじゃないですか。何で敢えて否定するんですか。勘弁してくださいよマジで。こっちはもう27歳なんすよ。


 俺は基本的に、他人を小馬鹿にして生きている糞みたいな人間なんですけど、そのしっぺ返しが最近すごく来ているんですよ。ちょいちょい否定されるんですよ。俺の、この、愛すべきセンスを。センスの欠片も無いアホ丸出しの奴に否定されるのは屈辱ですよ本当。何も考えていないような奴ほど、俺を否定してくるのはなんなの?俺を否定すれば、そいつのセンスが俺より優れていることになる、っていう回路が働いているの?あの、俺を、上回ってやったぜ!みたいなことを、そのポンコツなカリキュレーターが導き出している訳ですか。もうね、アホだから気付いて無いのかもしれないですけど、もう2012年なんですよ。


 以下のお話はフィクションなんですが、具体的な例を挙げます。俺は、8番ラーメンの唐麺が宇宙で一番美味いと思ってます。これは信じて良いことなんです。8番ラーメンの唐麺は美味い。これは信じて良いことです。それをフワッと呟いたことを、しっかり覚えているアホがいるんですわ。それで、そいつが8番に行ったときに、敢えて、唐麺を頼むんですよ。で、美味いけど期待したほどじゃない、とか、他の店の○○の方が美味いとかニヤニヤしながらツイートするんですよ。いや、悪くは無いけどね、的な感じで。センスという名の階段の、一段上から言ってくるんですよ。そんなに上でもなく、少し上から言ってくるんですよ。いやいやいや、勘弁してくれと。まず、お前の味覚なんか知らんと。お前の味覚なんか誰も評価してないし、お前の味覚はお前以外の人間には何の価値もないし、唐麺を好きという俺の心はビタイチ揺れ動かないんですよ。しかも、俺には「唐麺が美味い」ということに対する根拠がしっかりとあるんですよ。俺は心の中に、美味さを評価する測定軸を6つ持っていて、6つの評価軸で、10段階でこれくらい、って他人が考えもしないような屁理屈をくっつけて、六角形の大きさを計算して、唐麺が宇宙一美味いっていう評価を出してんですよ。皆さんには伝わらないかもしれないですけど、そして気持ち悪いかもしれないですけど、そういうことなんですよ。俺はお勉強ができるんで、そういうことをしとる訳ですよ。


 でも、アホは何も考えずに、雰囲気でそんなに美味くないみたいなことを言っとる訳ですよ。アホ丸出し、アホむき出しですよ。剥き身のアホですよ。単に俺を否定して、気に食わない俺の一段上に立ちたい、余裕を見せたい、認めさせたいって感じが見え見えで、こっちはちょっとひいてしまうんです。ちょっと哀れに見えてしまうんです。もう、本当に、俺を否定しても得なんて無いし、むしろ損してるんですよ。むしろ解ってない奴だなってレッテルを貼られるんですよ。何故、それに気付かないのか。アホだからです。


 で、味覚に関しては、俺はそんなにこだわってないですよ。問題なのは、音楽と笑いと想像力のセンスですよ。この辺を俺に説いて来る奴は本当に頭がおかしいと思うわ。こちとら、お前の数倍の種類の音楽を聞いてるし、作曲もしとるし、お前の数倍の人間を笑わせとるし、小粋なトークでウィットに富んどるし、お前が想像もつかないことを頭の中で考えとるんですよ。今までこねてきた屁理屈の数が違うんですよ。


 これをもし読んでいる人がいるならば、何を熱くなってんだって思うかもしれませんが、考えてみてくださいよ。例えばですよ。仮に、上地ゆうすけという人が居るとするじゃないですか。仮にね。その想像上の人物が、俺は音楽が詳しい的なことを言って、俺のために上地音楽論を説いてきたらどうですか。キミ面白くないねならともかく、キミまあまあ面白いね、見込みあるねみたいなことを言ってきたらどうですか。俺はセンスがすごくあるんだけど、君のセンスも個人的には好きだよみたいなことを言ってきたらどうですか。怒りますよね?なめんな、ってなりますよね?自分が着ているTシャツを筋肉でブチブチって引き裂きますよね?そういうことが、最近俺の身に起こっている訳です。Tシャツが何枚あっても足りないですよ。何でお前みたいなもんに認められなきゃいけないんじゃ、と。屈辱じゃ、とそう思うわけです。


 とにかく、そういう風に、自分が見下している人に色々言われて怒り狂うんですけど、根本原因は俺が人を見下すカス野郎だって言うことなんですよね。相手に対して尊敬の念があれば、そういう考えもあるのか、なるほどってなるんですけどね。日常的に仲良くしている人相手には大丈夫なんですけど、あまりプライベートな接点の無い、職場の上司とか、知人レベルの人とか、ネットの向こう側に居るオマエラとかにセンス論を語られると、何かカリカリしちゃうんですよね。お前のことなんか知らんし、お前は俺の何を知ってんだと。実際、親密になって友達付き合いし始めれば、そういう考えもあるのかって感じになるとは思いますね。コミュニケーションって偉大ですよね。もう本当、何か死にたくなりますね。俺を否定してくる奴を否定する俺。この構図は本当最悪で、否定が否定を呼んで、全員損してますからね。もう何て言うか、レトリックの罠って言うか、この文章を書いたことにより俺も損しとるんですわ。そういう訳なんで、皆さんに提案します。他人の感覚を否定するのは、もう止めませんか?


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― 新着の感想 ―
[一言] あばら骨さん、否定人クルピラ、作品読ませてもらいました。 その昔「中学コース」とか「高校コース」とかな雑誌がありし頃、 「文通コーナー」 と冠した欄がありました。 「文通しませんか?」(○×…
2012/03/04 17:13 退会済み
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