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規則は――破る為にある

なんちゃってSFファンタジー。

人間×アンドロイド。女主人公です。苦手な方はスルーお願いします。




「・・ふぅ~、駄目だわ。あの時代にすっかり慣れきっちゃってる」



 本当に、いろいろなことがあったのだ。


 あそこに居た2年間は、やはり自分にとってそう簡単に無かったことに出来るものでは無いらしい。


 分かっていても、ついついあそこで使っていた便利な機能をここでも使おうと思ってしまった。


 慣れとは恐ろしい。



「・・・早く、ここでの生活を思い出さないと」



 もうここには、いつも使っていた情報端末やGPSは無い。



「せっかく戻って来れたのに何だか、原始時代にタイムスリップした様な感覚だわ」



 東京23区内の中でも、都心へのアクセスに非常に便利であることが売りの住宅街の一画に居るにも関わらず。


 このセリフは随分失礼な言い方かもしれない。


 だが、過去へタイムスリップをしたと言う点に置いてはあながち間違った表現方法でもないのだ。



「・・・まぁいいわ。とりあえず、家がどうなっているのか心配ね。

 早く戻りましょう」



 一応、自分が居なくなった時間から、そう経っていない時間に飛ばして貰った筈だけれど。


 本当に成功しているかは分からない。


 その場から踵を返し、急いで記憶にあるまだ存在している筈の家へ向かおうとした。


 だが。


 次の瞬間、目の前に何の前触れも無く文字通り突然、人が現われた。


 まるで、どこからか超能力でも使い瞬間移動をして来たのかのように唐突に。


 しかし、そんな現代の一般知識から考えると有り得ないその現象に。


 彼女は全く動揺することも無く、冷静にその現象を受け止めた。


 ・・・いや、動揺はしていた。


 前述とは全く違う要因での動揺ではあるが。


 現われたのは、流れるような銀髪に透き通るような青碧の瞳を持つ青年だ。


 まだ若い、どう見ても二十代前半ほどであろう年頃。


 まるで作り物の様な端整な美貌を持った青年は彼女を見て、それは嬉しそうに綺麗に微笑んだ。



「そんな・・・まさか、追いかけて来たの・・?」


「ええ」


「・・・何で?過去の時代にオーバーテクノロジーな物を持ち込むのは禁止ってあなたが言ってたんじゃない。

 だから、その塊その物である自分は絶対に付いていけない、だから帰らないでくれって・・・。

 あれは嘘だったの?」


「嘘ではありません。しかし、私があれ程お願いしたのにあなたは考えを変えませんでしたからね。

 ・・・ですから、諦めました」


「それなら・・っ!」


「ええ。諦めて、付いていくことにしたんです。

 貴女の考えは変えられない。そして私は貴女を諦めることは絶対に出来ない。

 それなら・・・貴女に付いて行くしか選択肢は無いでしょう?」



そう言ってにっこりと微笑む銀髪の男。


向こうで、沢山の人間を男女問わず虜にし、様々な騒動を引き起こしたその笑顔。


彼の近くに常に居たために、自分も巻き込まれたいくつかの騒動を思い出し、少し憂鬱な気分になった。



「規則は・・・」


「貴女が私に言ったのではありませんか。

 規則は――破る為にある、ってね」


「それは確かに言ったけど。

 ・・でも。あれほど、規律に煩かったあなたがまさか」


「ふふ。そんな顔をしなくても大丈夫ですよ。

 バレなければ罪にはならない。・・・これを言っていたのも貴女ですよね?」


「・・・よく覚えているわね」


「何度も言っていたではありませんか。私は忘れません」


「ええ。よく知っているわ。だって、――あなたはそう作られているのだものね」


「ふふ。その通りです。流石は我が姫――私の事を誰よりも良くご存知だ」



彼はそう言って、まるで中世の貴族のように私の手を取り、甲に軽く口付ける。


その姿は彼によく似合っていた。まるで本物の貴族のようだ。


実際は、似ても似つかないものだとは分かっているけど。



「そんなこと、あそこに居た連中なら誰でも分かってることじゃない」


「それはそうですが。しかし、私のことを誰よりも貴女が知っていると言う事に間違いはありませんよ?」


「知ってるわよ。それも、・・・良く分かってるわよ。

 ・・・でも、いいの?バレたら、どんな事になるか・・・っ!」


「私のことを良くご存知な貴女なら、これも分かっていますよね?

 ・・・私が過去、何かを失敗したことはありません。

 成功しない事は初めからやりません」


「・・・それじゃあ」


「ええそうです。つまり、失敗しない・・・バレなければいいのです。

 大丈夫です。絶対、バレませんから」



 それを言った時の彼のその晴れやかな、でも真っ黒い笑顔を見て。


 私は、こいつは絶対敵に回したくない。


 心底そう思ったのだった。

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