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大遠野国物語  作者: 古月 うい


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4/11

露華

「皇女様、美珠皇女様。とちらにおられるのですか?」


私はかくれんぼが好きな子供でした。


お勉強は苦手で、よく隠れては教育係たちを困らせたものです。


「皇女様、見つけました。さあ、行きましょう」


「嫌だー!」


いくら暴れても所詮小さな子供でしたから、大人が本気で連れて行きたいと思っているのに抗えはしませんでした。


華木皇国は、兄弟全員が皇位継承のライバルでした。


座学の成績、人となり、信頼度などによって順位づけがされていましたから、教育係にとっては私が逃げると言うことは文字通り死活問題でした。


そんなことをつゆほども理解せずに、私は懲りずにかくれんぼに勤しんでいた時。


「はじめまして、皇女様。私は水の巫女です。聞いたことはありますか?」


五歳ごろの私をいきなりそういって迎えに来たのは先代の水の巫女でした。


皇女として生を受け、教養として巫女の存在は知っていました。


「はい。なにかようじですか?」


「先程宣託が降りました。皇女様が新たな水の巫女です。」


その言葉を聞いた父の皇はおおよろこびして、とんとん拍子に事は進みました。


訳がわからないまま、私は五歳で華木皇国の皇女にして水の巫女の跡取りになりました。


「ねえ巫女、あなたの名前は?」


先代と共に神殿に閉じこもって、いろいろなことを教えてもらいました。


「…わたしには名も家族もありません。皇女様もでございますよ。」


「わたし、美珠皇女っていうの。」


先代は笑っただけでした。


名前がないという意味を知るのはそう遠くなくて、引き取られたころには肩だった髪が腰に届く頃でした。


確か、八歳か七歳だったと思います。


「第六皇女を、水の巫女露華とします。以降、美珠と名乗らないように。」


母である第四側室、義母である正室の皇后、父である皇の三人でやってきて、そう伝えられました。


まだ先代が亡くなって三日ほどだったと思います。


私は、美珠は殺されました。そして、それ以来私のことを美珠と呼ぶ人はいません。


美珠と認識する人もいません。ただの第六皇女です。


私が巫女になって数年ほど過ぎたころ、初めてお茶会への招待状を受け取りました。

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