胃が痛い会議(みる)
それから、手元に巫女国での会議の日程が届くことはないまま、数ヶ月が過ぎた。
ふと外を見ると、むき出た茶色い地面と遊ぶ子供たちがいた。
「雪が溶けたんだ」
ようやく、寒国の長い冬が明けた。
それは寒国にとって白と黒の景色ではいられなくなり、その景色に色がつくことを意味していた。
少し不穏な感じがして、慌てて首を振った。
「そろそろ会議に行かないと」
寒国では雪の中で一回、雪が止んだ時に一回、夏に一回豪族長が集まって会議を行うことになっていた。
豪族同士の権力争いの場だ。
明確な国王がいないため、毎回私が豪族長会議を取り仕切っていた。
しかし、社交の場は苦手だ。
あんなところに長くはいたくない。
私は一つ決意をしていたのもあって、とても気が重かった。
それでも行かなくてはならないのには変わりないので、私は重い腰を上げた。
「それでは、会議を始めます。
何か議題のある人は?」
何人かが手を挙げる。
こういう時が一番面倒だ。
一番に当てられただのなんだのと争うことになるから。
「では、私から。」
今回は私にも議題があったので問答無用で私が喋る。
「最近地震が増えます。
その対策をしてもらうことになりました」
会場にどよめきがはしった。
まあそうだろうなとは思う。
「驚かずに聞いてください。
近いうちに、この国は壊れます。」
荘園だのなんだのと私にも理解できていない話をするよりも理解しやすいだろう。
「なんだと!?華木皇国のやつらか!」
「いいえ。その原因について、今言えることはなにもありません。けれど、この国がなくなるのは確実です」
どうか他国に責任を押し付けたり思い込みで責めるようなことはしないでと願いつつ話を進める。
「生き残る方法はあります。そのためには、協力しなければなりません。
争いは、かえって死者を増やすだけです。どうか、ご協力を」
豪族長たちは顔を見合わせるものが大半、笑みを浮かべるものが数名。
どうか、争いになりませんように。
「巫女さまはそれでよろしいと?」
「受け入れるしかありません。足掻いてもどうにもならない次元の話です。
それよりも、その後のことを考えなくては。」
豪族長たちが重要なのは国か命か、判断できる人たちであるといい。
「平民は一日先、町人は一月先を見るのに夢中です。なら、私たちはさらに先を見なくては。
どうか、目先の感情で行動を起こされませんよう。」
言っても無駄だろう。絶対に反乱が起こる。
それでも、少しでも減ればいい。
私に見えやすい力なんてないけれど、これでも巫女だ。
「他に議題がある人は?」
誰も手を挙げなかった。
「巫女さま、回避する方法はないのですか?」
「今探っております。けれど、あまり期待しない方が良いでしょう。」
神たちは、少なくとも嘘をついているようには見えなかった。
傲慢で、自己中心。それでも、こちらへの悪意はない。
「他にはありませんね?では、終了します」
どよめきのまま、豪族長会議は終わった。
私は部屋に戻って鏡を手に取った。
誰のところも光っていない。
あれから、鏡で会うこともなかった。
二人はどうしたのだろうか。
私は正しかったのか、聞く相手はいない。
私は一人で闘うしかないのだと思った時、たまきの思いが少しだけ理解できた気がした。
「まだ雪が降るの…」
外に、少しだけの雪がちらついたが、すぐにやんだ。




