子供時代
二人は驚きましたが、即座に納得しました。
二人は一応前々からたまきから華木皇国の後継争いについて聞かされていたのです。
「確かたまきは継承順位六位だっけ。」
みんなにとっては昔の、この巫女国にみんなが集まり始めたばかりのころ、たまきはひとつお願いをしました。
皇位継承順位を下げるにはどうすればいいか考えてくれ、と。
信仰と結びついた権力は危険だから皇になりたくない、と言って。
華木皇国の皇位継承順位は素行や成績で決まります。
たまきは巫女であったこと、水路を整備したことで結構継承順位が高い状態でした。
それを止めたいと言ったのです。
けれど、下手をして順位が低くなるといつのまにがいなくなるとのことでした。
そうして決められた後継順位から、後継者選抜になるとそれぞれに課題が出されます。
その問題はクリアすることではなく、どのように行動するのかをみられます。
そして、皇位継承権を持つ人たちが順位を決めていきます。
さらに、最終的には国民による投票で次の皇が決まります。
そのときは、みるの提案で体調が悪いことにして公式行事を欠席することになりました。
結果、いい具合に順位が下がりました。
「今は一名死亡し、一名継承権を失ったため四位に格上げされているわ。
…十分に後継者になれる順位だわ」
ただでさえ、荘園の崩壊とかいう訳の分からないことに対応している最中です。
こんなことやっていられないと思うのは当然の反応でしょう。
「今やることではないでしょう…」
「じゃあどうしろと言うの?わたくしの立場あなたたちにはわからないわ」
たまきはいきなり激昂しました。
口調もトーンも変わっていないませんが、これはたまきが殺されないために貼り付けたものだと二人とも知っていました。
けれどたまきの激昂は長続きするものではなく、たまきは力なく床に座り込んでしまいました。
「あなたちは気楽でいいわね。」
その言葉にいらだったみるはたまきを睨みつけました。
「私たちがあなたより気楽だと、いつ決まったの」
「気楽だわ。あなたは絶対に知らないわよ。
いつ殺されるかもわからず、けれどどうずればいいか誰も教えてくれない私の辛さなんて」
たまきも負けじと睨み返します。
決して負けないとでも言うようでした。
華木皇国の皇位継承争いでは、いつ殺されてもおかしくありません。
「姉さん」
さあやはみるの袖を掴みました。
みるはしばらく迷ってから、大人しく席に座りました。
「なんで、よ」
みるとの睨み合いから解放されたたまきは声を絞り出しました。
『それは決して声を荒げられない姉さんの悲鳴に聞こえた。
私たちは巫女でなかったら所詮いてもいなくてもさほど変わらない立場だ。
けれどたまき姉さんは皇女だった。
巫女になったせいで一人で戦うことを強制された。
けれど、姉さんはただの一人の女の子ではいられなかった。
巫女だからと同じくらい、皇女だからと言う理由が強かった。
私たちは、姉さんのその孤独に寄り添うべきだったのだ。
そうなるべく巫女国は存在していた。
…少なくとも私たちの認識では。
そして、幼い頃は確かにそうだった。
いつ、そのあり方は変わったのだろう。
私たちはいつ、気楽な子供ではいられなくなってしまったのだろう。
ただ、変わらずに生活していたいだけ。
それなのに、月日は残酷に私たちを大人に向かわせる。』
風が強く吹いて、季節外れな雪を運んできました。
その日は、初めの喧嘩したままでの解散になってしまいました。




