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大遠野国物語  作者: 古月 うい
巫女国での会議

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13/24

波紋が広がる

ーさあやーーーーーーーーーーーーーー


「あれ、みる姉さんからの通信…」


あれは初めて誕生日を祝いあってから五年ほどの月日が経過した冬のことだった。


「「はい」」


『あー、二人とも久しぶり。早速なのだけれど、不測の事態が起きたの』


姉さんが不測の事態というのなら、結構なことなのだろう。


『執政官を名乗る集団がやってきた。集団とは言っても、人数は少ないけれど』


「執政官…」


それは五年前に私が存在を発見したものだ。


確か、巫女よりも立場が上の人たち。


『吹雪がおさまってから身分をつけて招光帝国と華木皇国に向かわせることにするから、各自対応よろしく。私からは以上』


『みるも強かになったわね。正体がわからない以上、私たちで監視はしましょうか。』


身分をつけるのは、後で辿りやすくするためのようだ。


「次は街道で直接繋がっている招光帝国…」


『”朝日”、口調』


いけない、いけない。


あれから随分怒られて矯正されたが、口調はなかなか治らなかった。


背だけ伸びて頭でっかちでも、それを利用できない。


「気をつけます、姉さん」


『危ないと思えばすぐに華木皇国に寄越してもらって構わないわ。

こちらでは対処の仕方が桁違いに多いもの』


華木皇国は軍が三国の中で最も強力だ。


「みる姉さんも、気をつけて」


『もちろんよ。それじゃあね』


通信はあっさり切られてしまった。


「…執政官」


御伽話のようになってからもう長い時間が経った人々。

なぜ今更やってくるのか。


どうか、変な人たちではありませんように。



『特にパッと見た限り悪い人という確証もいい人という確証も得られなかったから、神官の立場を与えたよ』


執政官たちは姉さんのところから出発したようだ。


『上出来ね。こちらも神官が来れば対処しろと伝えておくわ。

招光帝国は間に合わないかもだから、通達はしつつ街道沿いを見回れるように』


「大丈夫。ちょうど寒国の関所あたりまで神事をしに行くから、そのついでに」


『朝日』


いけない、口調が。


『巫女に渡せと物を託したから、あちらも巫女を探すはずよ。すぐに会えるわ。』


「姉さん、すごい!」


目的が巫女でなかったとしてもこちらに来ざるおえなくするなんて。


しかも、もしこちらに来なくても寒国の物なら出回ればすぐにわかる。


『朝日も巫女なのだから、せめて思慮深さを表面上だけでも身につけなさい』


「姉さん、光花禰宜が来たから」


危ない、またお説教が始まるところだった。


「巫女様」


「…今行く」


鏡は置いていくことにした。


姉さんたちに怒られてなんだか癪だったから。


ーーー本編ーーーーーー


「執政官が何か、わかる人は?」


執政官騒動から二週間、巫女たちはお茶会に集まりました。


まだ寒国では冬の盛りでなかなか出歩けないほどの吹雪の季節でしたが、みるはそれほど子供ではないし欠席するわけにはいかないとやってきました。


「少なくとも、私たちよりもっと高位な存在であることは確実だと思う」


みるの見解に二人は頷きました。


「あの中の一人…人形であっても、暴れられたら被害は一国では済まない」


さあやは心底怯えるといった風で腕を抱きました。


けれど、他の二人はその言葉に違和感を抱いたようでした。


「…さあや、人形が暴れることはないんじゃない?」


みるの指摘にむしろさあやは意味がわからないという顔をしました。


「姉さんには、あの人形がただの人形に見えたと?」


みるに視線を送られたたまきも首を振りました。


「やっぱりさあやは違うわね。悔しいけれど、能力などの巫女として必要な技能はさあやが1番よ」


さあやは能力の扱いが本当に上手でした。


純粋な使用可能な能力だけではみるの方が上でしたが、さあやはそれを技術で、努力で超えました。


「話を戻す。あの人形は、生きた人間の魂が入っているとみて間違いない」


「あれが…?」


二人にはなんの変哲もない人形に見えたようでした。


「執政官は、どういう人たちかはわからない。でも、あれは恐ろしい。」


さあやは相変わらず震えていました。


「執政官は、頻繁にこちらに来ると見るべきなの?

流石に雪の人形を多数操って会議させるなんて真似、もうしたくないよ」


「そんなことやってたのね。あれは平気よ。たぶん、向こう五年は来ないのではないかしら。

ここから色々回る気のようだし」


「たまき、もはや人間辞めてるよ…」


華木皇国の皇女であるたまきは人の感情の機微に聡い人でした。

見ただけで思考を読み取れるほどでした。


「警戒をするに越したことはないわ。しばらくは、様子をみましょう」


二人は頷いたが、なんともいえない沈黙が訪れました。


「…昔は、ここでは普通の少女のように過ごしていたよね」


いつからか、業務連絡の比重が増し、笑い合いのんびり過ごすことが少なくなりました。


「みる姉さん、悲しいの?」


みるは首を振りました。


「…もう、あの頃に戻れないのはわかっているから」


誰も、幼い少女のままいられません。


「それでもここは味方よ。少なくとも私はそう思っているわ。」


みるはただ穏やかに微笑みました。

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