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大遠野国物語  作者: 古月 うい
巫女国での会議

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12/24

さあやのお誕生日

「みる。本当に久しぶりね。元気にしていた?」


「おかげさまでね。今年は、死者数も少なく済んだよ。」


寒国の冬が明け、みるがお茶会にやってきました。


「姉さん、服が変わった?」


「気がついた?前は先代のを使っていたのだけれど、この冬に私用のものが完成したの。」


巫女の服はその人物の象徴となるものなので、代によって変えることが原則とされていました。


各国の巫女はそれぞれ専属の衣装製作者がいます。


今代は全て寒国関係者のお針子でした。


寒国のお針子は優秀な人が多く、評価が高かったのです。


寒国はその冬の長さゆえ、工芸や手仕事の類、保存食などが発達しています。


「冬の間大変だったよ。

豪族長会議でひたすら威張り散らしてマウントをとる豪長たちに、腹の中を隠した穏やかな嫌味たっぷりの茶会をする婦人たち。

揉めたら私にくるし」


「その程度ならまだ可愛らしいものじゃない」


ゆらゆらとゆれる月のような形の置き物…もとい砂糖入れを揺らすたまき。


「そういえば、何度かたまきから通信が来ていたけど、何かあったの?」


「…なんでもないわ。見ていたなら、出てくれればよかったでしょうに」


鏡は、誰かが通信に入っていると、該当する人物の司る模様のところが光る仕組みです。


「気がついたのが会議中で。ごめんね。」


たまきは別にと言って置き物の動きを止めさせました。


「姉さんに共有。

先先代ぐらいのころの記述に、執政官という言葉が出てきた。」


「…執政官?」


みるに視線を贈られたたまきは首を横に振りました。


「はじめて聞くわね」


「私も、先代からは聞かなかった。

執政官がやってきてくださった。おもてなしをしないと、ということしか書かれていなかった。

説明がいらないほど当時は常識なのかもしれない。」


詳細が一切書かれないほど、当たり前のことなのでしょうか。

もし特殊なことなら事細かに記していそうなものです。


「それ以前の記録はまだ漁れてない。」


「招光帝国ってすごいのね。」


たまきが感心したように呟きました。


「華木皇国ではそういった日記のようなものは重要なところだけをまとめてあとは再利用されるわ。

しかもそのまとめすら同じような内容ならまたしてもなくなる。

お陰で随筆のまとめだけが残っていて、面白くないのよ。」


大衆小説や人物評は残るが、伝承などは残さなくてもいいというスタンスでした。


お陰で過去のことがほとんど残っていないそうです。


「寒国は、領地によって使われている言葉が微妙に違うの。まあ、一年のうち半分も引きこもっていたらそうなるよね。

それに、識字率もあまりいい方ではない領地も多いの。充実しているところはしているのだけど…」


政治の大半を豪族に任せている弊害でした。


「話を聞く限り寒国の基盤が最も脆そうね。一度みんなで行ってみましょうか。」


「なりません」


後ろを見ると、この国の人が立っていました。

先程まではいなかったはずですが…


「理由を説明なさい」


「巫女が他の地域に足を踏み入れることは禁止されています。

外交などで連れ出されるばあいや情勢の変化による領域の増減除いて、原則。」


三人とも初耳でした。


「あなたは、誰?」


「巫女さま、それは何か関係がありますか?」


その人はそのままどこかに行ってしまいました。


「知らなかったわ。」


「私も、先代から何も」


先代たちも教えてくれればよかったのにとぼやくたまき。


「…そもそも、今までの先代たちがこんなに仲良かったのかもわからないしね」


みるが議論の先陣を切りました。


「というと?」


「先代たち、結構歳の差もあったらしいし、巫女同士の関係性は代々で大きく違うだろうから。

業務連絡のみとか、腹の探り合いやってたとか、あり得るなって。」


今代は、全員が巫女会議初参加から始まりました。


つまり、前の世代の雰囲気を全く知らないよです。


となると、関係性が大きく違ってもおかしくないでしょう。


「先代たちも知らなかったと?」


わざわざ会いに行こうとしなければ知らないことです。


「説明はつきそうね。さあや、何か意見は?」


「…話が変わるけど、相談いい?」


なんと珍しいことにさあやが恐る恐る話を切り出したのです。


「いいわよ。どうぞ」


「私が招光帝国の宰相の娘だってことは話した?」


名乗っていた始めの頃のことです。

興味がなかったというわけではないけれど、流石に全員の記憶が薄れています。


「…そうなの?」


「妾の。婚外子っていうやつ。本妻と側室の間に子供はいたし、私は認められてもいないから。」


出自不明ということになっていたそうです。


「光花禰宜が、私の異母兄の娘かもしれない」


「姪が使えているということ?どうしてそう思ったの?」


普通に過ごしていて、実は姪なのではと疑うことは稀でしょう。


何か理由があるとみるは考えました。


「この間、神儀で異母兄にあったときに、親子みたいだって。本人に聞いた方がいい?」


難しい問題めした。


「さあやが、知りたいと思うのなら聞けばいいし、壊したくないとか、知るのが怖いって思うのなら言わないでもいいと思う。

でも、これはさあやの今後の扱いにもか変わるかもしれないから、気をつけて。」


『姉さんたちはいつもお互いに親切で、まるで自分のことのように心配してくれて、守ってくれようとしていた。』


「わかった」


「さあやに誕生日プレゼント。さあやのと似たものになっちゃったけど、どうぞ」


みるが差し出したのは球体の中に雪の結晶が入ったものです。

ときどきふわんと雪が中で舞うようになっていました。


「…みる、毎回凝るわよね。私の水を渡しても面白みはないのに。」


「水の花ぐらいつくれない?

それに、たまきからは眺める綺麗なものよりももっと私たちに合わせた役立つものがもらえるってわかっているし」


たまきは能力よりも考えている方が似合っていました。


「みるに見透かされているのが癪だわ。はい、さあや」


「…なにこれ」


「カードゲームよ。全部で七十二枚で、十三種類の数字と四種類の模様があるから、色々な遊びができるわ。」


たまきは模様を合わせたり、数字ごとに並べたりと四種類ぐらいの遊びを紹介しました。


「姉さん、ありがとう。」


「もー!さあやかわいい!」


みるがそういってさあやに抱きつきました。


「姉さん、あつい、痛い」


さあやが抗議の声をあげてたまきに助けを求めるが、助けてはくれなさそうです。


「私も」


そういってたまきも抱きついてきました。


「あはは」


みんなが笑っています。


ここで、私たちの居場所で。


三国は睨み合っているが均衡が保たれ、少なくとも今戦争が起きるような事態はありませんでした。



それから数年が経ち、みるが雪で来られなくなる時期に、みるから一報が届きました。


「執政官がやってきた」、と。

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