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二  紅姫の昔語り

 かつて私も人の子であった。しかし、今は違う。また、貴様らがいう神様などと呼ばれるほど立派なものでもない。戦国末期の事だ。西国の下級武士の娘であって、兄のように慕っていた人に授けられた刀を常に持ち歩いておった。その御方は体が弱く早くに他界されてその刀をその御方と思って暮らしていた。そんな折に敵方に攻め込まれ、私は無我夢中で抜刀し滅茶苦茶に刀を振り回した。気がつけば回りは血と斬殺された敵兵の肉片だらけであった。そして、自分の行いが恐ろしくなり刀を持って一目散に逃げた。逃げながら武術の経験など皆無の小娘が何故ここまで大量の敵を殺める事が出来たのかを考えた。【兄様あにさまの私を守りたいという念が刀に宿っているのか?】しかし、その一瞬を敵の鉄砲は見逃さなかった。一発の発砲音!そこで、私の人としての記憶は止まっておる。形見の刀とも何百年と生き別れだ。

 気がつけば薄紅色の空間に浮遊していた。そこには実体がなく、その色に包まれているという感覚と心地よい春の陽だまりの様な暖かさがあった。【これが、死んで極楽浄土へ行くということか。であれば、また大好きな兄様に会えるな】などと、楽観的に考えている時だ。そよ風の様であり、無限に続く細長いものに跨った薄紅色の髪の毛で蒼い瞳の小娘が現れ言った。

「人の世は、未だ争いが絶えず乱世の様ですね。この様に純情無垢でありながら命の駆け引きに否応なく身を投じねばならぬとは。私もかつては人の子であり、この空間で魂を拾われた者です。そして、人の子の何百倍もの時を流れに任せ見聞きして来ましたが、そろそろこの膨大な記憶を持って昇天し、先に逝った者たちに聞かせねばならぬ時が来たようです。この依り代を貴女に引き継ぎます。神通力で人の子の運命に関わることも良いでしょう。時の流れに漂い沢山の事を見聞きし、昇天し、生前貴女に関わり先に逝った者たちへ聞かせる為に、継ぎの紅姫に引き継ぐのですよ」そう言い終わるとその娘の魂は昇天し、代わりに私の魂が吸い込まれた。そして、 風の龍にまたがり、ただただ時代に流されているだけの小娘と成った


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