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十五 桜の夢話

 桜が居着いて三ヶ月が経った。その日、清兵衛は寄り合いで朝から家を空けていた。弥生とは掃除洗濯など家事を分担して仲の良い姉妹の様な関係であった。

 「姉様、昨日の夢が変な夢だったのです。薄い紅色の何もないところをただふわふわと、漂っているのです。月に一度くらいは同じ夢を見るのですよ」

 「神様のお告げか、何か運命的なものが夢に表れているのでしょうか」

桜が思い出したように話し始めた。

 「不思議な夢といえば、私が屋敷の前で倒れて座敷の布団に休ませていただいているときの夢です。見たこのない男二人が会話をしていました。その二人は互いの身の上話をしていたようです。一人は鍛冶屋に作られた仕込み杖と言っており、何人か持ち主が変わりまた初めの持ち主の身内の手に戻ってきたと。もう一人は西国で打たれた刀で、刀匠は早くに亡くなりその妹が形見として持っていたと」

 「姉様、其の西国の刀はほかに何か言っておりませんでしたか」

 「妹も戦で亡くなり、戦場に長く捨て置かれていたところを老婆に拾われ杖代わりにされていたらしいです。嵐の夜に得体の知れない物を被ってしまい、さび付いた刀身が変化したらしいです。また、老婆もその次の日には、若返ったらしいです。その後、刀は老婆が若返った女人にょにんとともに長い時間をかけこの地に来て、今はこの家の家宝になっているらしいですよ。何代前かの当主が熊を斬ったとか、女子おなごにだけ抜刀できるとか言っておりましたね」

 「話からしますと、その会話の男たちは刀が憑依したものでしょうか」

 「夢の中の話ですから、常識では考えられないことも普通にあり得ますね」

 「仕込み杖は、先日、宿をとっていた三条鍛冶の杖の事だとおもいます。もう一方の刀は、確かにそれらしいものがこの家にあります。父様には妖刀だから触ってはいけないと強く言われています」

「清兵衛様がお帰りになられたら、この話をしてみましょうか。何か知っておられるかも知れませんね」

仲良く団子を食べながら茶を飲む娘たちであったが、弥生は先ほどの刀に何かを思い当たる節があった。

【確か、兄様の形見の刀もおなごにしか抜けぬわがまま刀だったな。私が絶命して、それ以来、巡り合う事も無かったが。しかし、何かをかぶって刀身も新品のようになり婆様も若返るとは、私の小水か排便でも被ればそれは、ありえる。何せ私は、少しでも傷んだものを口にすると直ぐに腹下りを起こすからなぁ。何処かで龍にまたがり漏らしたことも数知れず。そのときか?いずれにせよ、父様が帰られたら抜刀すればハッキリする】


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