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十一 女忍に姫の気まぐれ

 五日目、女は爺様の介抱の介あって日に日に元気を取り戻した。そんなある日、爺様が山に入っている時であった。突然、小娘が訪ねてきた。

「家主はおられるか?」

「爺様は山に行っておりませんが何か御用でしょうか」

「お主、大怪我をしておるな。右腕を見せてみよ」

そう言って半ば無理やり上半身を脱がせ傷を確認した。

「成程、さすが山人やまびとの知恵による手当だ。普通であれば、間違いなく死んでおったな。しかしこの傷、なみの毒ではないな。北方、村田藩辺りの間者がよく使う毒矢の様だが、其方そなた、公儀の隠密か」

「なにやつ」

その時、女の手にはシノビ苦無くないがあった。

「落ち着け、敵ではない。かといって人の子でもない。其方、公には既に死んでおるのであろう。ならば、ここから新しい人生を始めるのも一興だぞ」

そして小娘は、二枚貝を開き中から軟膏を指につけ傷に塗り込んだ。

「爺様の薬湯も効くが、わしの油薬はもっと効くぞ。明日の朝を楽しみにしておれ。傷跡も痛みも何もかもがよくなるわ。ヌシの急所に塗れば娘に戻り男の竿に塗れば若いころの様にそそり立つ、禿げた頭に塗ればたちまち毛が生えてくる、神の薬じゃ。噓か誠か、明日の朝ヌシの右腕の傷跡がどうなっているかを見てから決めるが好かろう」

そう言い終わると薄紅色の煙に巻かれ消えていった。夢か幻か、半信半疑ではあるが右腕の妙な痛みはすでに消えていた。

 次の朝、痛みが消え快調そのもので起床した。昨日まで大変だった小用も今日は難なくできた。その姿を物陰から爺様は覗いていた。既に爺様の心理は小娘のそれを見るより下の毛の生えた女の方が良いことを決定していた。

「爺様、こんなもので良かったら何時でも幾らでもお見せしますぞ」

そう言われてばつが悪そうに姿を見せた。

「 ケガは良いのか?」

「実はそのことで話があるのです」

 その後、あばら家の中で茶を飲みながら昨日の出来事を爺様に話した。


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