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炎の魔獣召喚士  作者: 平岡春太
 第五章 交差する過去

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 第八話 開会

 議会場の中は円形を囲むように五階席まで設けられた観覧席が並び、その席の殆んどを人が埋め尽くしていた。

 各国の王族や首脳、それに伴う従者や護衛などが並び、煌びやかな様相を呈するその数は、オルタニアで行われていた王位継承戦のコロッセオの数を遥かに圧倒する。

 一緒に中に入って来たフラム達だが、シャルロアが王族と言う事もあり、フラムと共にかなり良い席に通され、ウィルと村長は、自由席とも言える場所に案内され、少し離れて座る事となった。

 席に着いたウィルは、フリードの姿を探そうとしたが、余りの数の多さに圧倒され、見つける事が出来なかった。

 ざわつきは更に酷く、外もそこそこ賑やかであったが、その比ではなく、人も多い上に議会場であり円形になっている事もあって声が反響し、話が出来る状況でもない。

 そんな中、アインベルクとビエントが入場して来て、喧騒は更に増した。

 五賢人には王族と言えどそうそう会えるものでもなく、それが二人揃ってとなると、「おおっ!!」と言うどよめきが波を打つように巻き起こる。

 中央に設けられた議長台に二人が登壇しても尚、ざわつきが収まらなかったが、アインベルクが手に持つ錫杖の先で床を一突きした音が場内に響き渡ると、声はゆっくりとながらも消えて行き、静かになった。

 一転して静寂が訪れると共に緊張が走る中、アインベルクが口を開いた。


「皆々様、わざわざ御足労頂き、誠に有難う御座います。私はこの度議長を務めるアインベルクです。まず、議会を始める前に、何か質問がある場合は挙手にて指名された者だけで御願いします。議会を円滑に進める為ですので、勝手な発言は御控え下さい。何度注意しても従えない者は議会場から退席して貰う旨、肝に銘じておいて下さい。では、これより世界会議の開会を宣言します」


 世界会議に際する注意に少なからずざわついた場内が、開会の宣言によって緊張を与え、再び静寂を取り戻す。


「議会の運びが上手いな。さすがは氷の女王と言った所か」

「その呼ばれ方は嫌いだと以前にも申したはずですよ。如何(いか)にあなたでもね」

「おっと、これは失礼した」

「さあ、今度はあなたの番ですよ」


 ビエントはアインベルクに肩を並べ、軽く咳払いする。


「私はアインベルクと共にこの度議長を務める事となったビエントだ。まず、今回の議題だが、このダルメキアの危機に関して━━いや、それでは廻りくどい話になるな。はっきり言おう。ケイハルトについての事だ」


 ケイハルトの名が出た途端、議場が再び波打つようにざわつく。


「静粛に!」


 アインベルクが錫杖の先で床を叩いてその場を収める。


「議長、宜しいでしょうか?」


 二階席に居る豪奢な様相をした一人が手を挙げた。


「そちらは?」

「ブリューム国の国王に御座います」

「どうぞ、何でしょう?」

「五賢人であらせられたケイハルト様は、亡くなったと聞き及んでおりますが」

「確かにそうなっていますが、実際はまだ生きております」

「それは如何な事でしょうか? 御説明頂けますでしょうか?」

「では、それは私から説明しよう」


 ビエントが代わって語り出す。


「ルディア様にはケイハルトとエルベルトの二人の息子がいた事は多くの者が知っておるはず。エルベルトはその妻と共に事故で死んだとされておるが、それもまた事実とは異なる。本当はケイハルトが自ら持つ野心ゆえ、弟であるエルベルトとその妻を殺すと言う大罪を犯したのだ」


 衝撃的な事実に、場内は一気に騒然となった。

 今度はビエントが手に持つ槍の柄の先で床を何度も叩き、場を収める。


「動揺するのは分かるが、話の途中だ。最後まで話を聞いて欲しい。エルベルトとその妻が殺された直後、ルディア様はその場に居合わせ、当然の如く大層お怒りになられ、カチャッカ山と言う山の麓にある洞窟の中でケイハルトを分厚い氷の中に閉じ込めなされたのだ。その後、ルディア様と残った五賢人の四人で話し合い、事が事だけに真実を話せばダルメキア中が混乱に陥るかもしれないと、皆が信じて来た話を伝える事とした。これが真実だ」


 とは言うものの、フラムの存在は伏せてある。


「では今まで、ルディア様と五賢人は我々を騙していたのですか!」

「今説明されても結果は同じでは!」


 議会は紛糾する。


「お静かに!」


 アインベルクが錫杖の先で床を叩き、静まるよう求めるが、今回は収まるのに少し時間が掛かった。


「発言は挙手にてと申してあったはずですよ」

「いや、騙していたのは本当だ。甘んじて非難は受けよう。この場にてお詫びする」

「まあ、それもそうですね。私からも謝罪します」


 その場の殆んどが苦い顔をしているものの、五賢人の二人に頭を下げられては、唸るしかない。


「宜しいですか?」

「そちらは?」

「アンダルト国の宰相ヘンデマンと申します」

「どうぞ」

「ケイハルト様が氷の中におられるのなら、わざわざ世界会議を開かなくても良かったのでは?」

「いや、ケイハルトは氷の中にあらず。外に出ておる」

「外に? どうやって? ルディア様やアインベルク様の氷はそう簡単に溶かせぬと聞き及んでおりますが」

「無論、そうですよ。予想外の事が起こったのです。そうですね……あれは二年程前の事でしたか。これはその場に居合わせた者から聞いた話ですが、その者も見ていない所もあるので、少し予測した箇所があるとしてお聴き下さい……」

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