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炎の魔獣召喚士  作者: 平岡春太
 第五章 交差する過去

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 第七話 懐かしき顔

 世界会議が開かれるルティアン議会場があるヴェルティエは、ダルメキアの南西に位置する。ただ、その地域に人の姿はなく、国と言う定義はされておらず、正に会議が行われる為の場所である。

 ルティアン議会場は開かれた会議場で、どの国でも、いや、街やどんな小規模な村でも使用を許されている。

 その中でも世界会議は最優先で行われなければならない。ただ、余程の事がない限り、更には重要な権限を持つ者が複数人提言して初めて行われるものなので、ここ二十年以上は行われていない。

 それだけ重要な会議なので、各国の要人、その従者、また護衛なども続々と集まって来ており、人が居ないヴェルティエも、活気を帯びていた。

 ただ、議題は知らされておらず、色々な憶測や、何が行われるのかと不安の声が飛び交っていた。

 周りに人が居ない事もあって、移動手段が少なく、近くに居る者は魔獣を使った馬車などで駆け付け、遠くに居る者は様々な飛行タイプの魔獣を使って駆け付け議会場の近くに次々と飛来して来る。

 空を埋め尽くさんばかりに飛んでいる様々な飛行タイプの魔獣の中に、フラムが乗るフィールが飛来して来た。

 フィールから飛び降りたフラムは、しゃがんで魔獣召喚陣を作り、その中にフィールを戻して召喚陣を消した。


「途中でアインベルク様の一団からはぐれたでヤンス」


 肩に乗るパルが言う。


「さすがにアインベルク様が召喚したサウロンね。私のフィールも速い方なんだけど、アインベルク様が召喚したサウロンはレベルが段違い。それに、お付きや護衛の分のサウロンを召喚して、まるで魔力を消費した感もないし、さすがは五賢人と言った所ね」

「でも、どうするでヤンス?」

「別に。アインベルク様は議長を務められるだろうし、個人で参加する私は発言権もないだろうから、傍聴席で静かに見させて貰うわよ」


 巨大な塔の様相をしているルティアン議会場の周りにある四つの入り口に次々と人が飲み込まれていく中、見知った顔が目に留まった。


「フラム、あそこに居るのはウィルでヤンスよ!」

「ウィル? あ、本当だ!」


 ゆっくりと進む人の群れの中に、確かにウィルとそれを伴う父親であるバルバゴ村の村長の姿があった。


「ウィル!」


 フラムが呼ぶ声に反応し、ふと横を向いたウィルがフラムに気付き、笑顔を見せる。


「お姉ちゃん? お父さん、あそこにフラムお姉ちゃんが!」

「おお、本当だ」


 寄って来たフラムに、村長は深々と頭を下げる。


「その節は本当にお世話になりました」

「いいの、いいの。こっちも儲けさせて貰ったんだから」

「そうそう、ちゃっかり貰うものは貰ってるでヤンス」

「何か、トゲのある言い方ね」


 肩の上で口笛を吹いてはぐらかすパルの姿に、ウィルはクスクスと笑う。


「相変わらずだな。パルとお姉ちゃんは」

「そうだな。まあ、こちらも、アルドが残した遺産の御蔭で何とか村も持ち直しましたし」

「そう、それは良かった。それにしても、村長さんも呼ばれたの?」

「ええ、本来ならバルバゴの様な小さな村の代表が呼ばれる事はないのでしょうが、アルドと関わったと言う事で意見を求められるかもしれないと呼ばれたのですが、今回の議題にアルドが何か関わっているのでしょうか?」

「なるほど、そう言う事か。関わっているのは確かでしょうからね。それで、ウィルは何で居るわけ? 今の話だと、わざわざ子供を呼ぶような話ではないと思うけど」


 ウィルはパルの真似をして、素知らぬ顔で口笛を吹く。


「儂だけで行くと言ったのですが、どうしても行きたいといつものようにごねてしまって」

「ウィルらしいでヤンス」

「いや、その……あ、そうそう! フリードのお兄ちゃんも来てたよ」


 話をそらそうとウィルが出した名前に、フラムが食いついた。


「あいつも来てるの?」

「フリードさんも、あの時アルドと関わったので呼ばれたのではないでしょうか」

「まあ、関わったって言えば関わったけど……」

「嫌そうな顔して、本当は跳び上がるほど嬉しいんじゃないんでヤンスか?」


 パルが意味深な目でフラムを見る。

 よく見るとウィルも同じ目でフラムを見ている。


「何なのよ、二人して。そんな訳ないじゃないのよ」


 フラムがパルの顎を拳でグリグリしていると、また見知った顔が駆け寄って来る。


「あ、居た! 居た! フラムさん!」

「シャルロアでヤンス」

「そっか、先に来てたんだっけ」


 シャルロアは、少し弾んだ息を整えてから口を開いた。


「遅かったですね。何をしていらっしゃったんですか? もう直ぐ始まりますよ。あら、そちらの方々は?」

「少し前に仕事で知り合った人達よ」

「儂はバルバゴと言う村で村長をしているヘイルと言う者です。こっちは儂の息子のウィルです」


 ウィルは頭を下げる。


「これはこれは、ご丁寧な挨拶、有難う御座います。初めまして。私はシャルロアです」


 シャルロアはいつもの様に深々と頭を下げる。


「シャルロア。はて、何処かで聞いたような……?」

「そりゃそうよ。アルファンドの王女様だもの」

「そうですか、アルファンドの……王女様!?」


 村長とウィルの驚きの声が、周りの注目を集めた。



 

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― 新着の感想 ―
重い過去の話の後の世界会議。何も起こらないはずがないですよね? ここからの展開も楽しみです!
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