第十三話 蠢(うごめ)く陰謀
「これは意外な展開となりました! 先程失格となった六十七番が物凄い技であっと言う間に出場者を氷漬けにしてしまいました! この場合はどうなるのでしょうか?」
ディユロも進行に困っている中、少ししてコロッセオの外に一発の花火が上がった。
「どうやら大会運営本部の方はこのまま続行という事らしいですね。まあ、やり直せる状況にもなさそうですから、当然の判断かと。それで、残ったのは一人、二人……おお、これは偶然か。丁度六人になったようなので、ここで終了とさせて貰います!!」
どうなるのかと、一度静まり返っていた観客席が、一気にまた沸き上がった。
「それでは残った方々を紹介してまいりましょう。番号の若い順で、まず十七番ウルス・アルコート。続いて二十五番ライオ・ビルニーク。三人目は三十七番イグニア・カライス。更に四十一番シュタイル・クルーテ。更に更に、六十三番リベルラ・ティール。そして最後に、八十四番フラム・ブロージオの六人が選ばれました!!」
観客席から歓声と共に、健闘を称える割れんばかりの拍手が送られる。
「はあ~、終わった。何とか残れたわ」
「良かったでヤンス」
一息吐いたフラムの肩に、パルがとまって来た。
そこにイグニアが寄って来た。
「とりあえず、礼は言わないとね」
「礼なんかいいわよ。あんたに礼なんか言われたら鳥肌が立つもの。それより、これでお膳立ては揃ったわよ。今度こそドジは踏まないようにね」
それだけ言って離れて行った。
「せっかく礼を言ってやろうと思ったのに、あいつらしいわね。それ以上に礼を言わなきゃいけないのはシャルロアね。失格になったのは残念だけど、お陰で━━あれ、シャルロアは?」
周りを見渡してみると、気を失って倒れたはずのシャルロアの姿がない。オロドーアの姿もだ。
気が付けば、オルタニア兵が次々と入って来て、気を失っている失格者を荷台に乗せて何処かに運び出している。
シャルロアが凍らせた者も、魔獣召喚士が召喚した炎魔獣が溶かしてから同じように運び出している。
「ちょっとそこの人」
フラムは近くで失格者を運び出そうとしている一人のオルタニア兵に声を掛ける。
「さっきそこにオロドーアと一緒に倒れていた女の子知らない?」
「女の子? さあ、どうだかな。でも、失格者は通過者とは別の場所に運べと言われているだけから、多分地下の━━」
「お、おい!」
別のオルタニア兵が慌てた様子で首を横に振りながら制し、話していたオルタニア兵もそれ以上何も答えず、失格者を荷台に乗せて急いでその場から離れて行った。
「何か怪しいでヤンスね」
「ええ、失格者だけを別の場所にって随分きな臭い話だわ。少し調べる必要がありそうね。第一、シャルロアに何かあったらそれこそ大変だもの」
「でヤンス」
「ただ、通過者は別の場所に誘導されているみたいだし、私は行かなきゃあ失格になるかもしれないのよね」
フラムの目が、パルに向けられる。
「分かったでヤンスよ。オイラだけで調べればいいでヤンスね」
頷くフラムに見送られ、パルはフラムの肩から飛び立って行った。
失格者を乗せた荷台は、二人一組となったオルタニア兵によって、地下を走る通路を同じ方向に向かって運ばれて行く。
「何処に行くんでヤンスかね」
パルは柱の陰に身を隠しつつ後を追っていた。柱から柱へ、見つからないように素早く身を隠す。
少し先に進むと、声らしきものが聞こえて来る。
「もたもたするな! 早くここに入れろ!」
上官らしきオルタニア兵の指示で、荷車は鉄格子が並ぶ部屋の入り口の中に運ばれて行く。それに代わって空の荷車が出て来て、やって来た方へと去って行く。
「これで最後です」
「よし、鍵を掛けろ」
格子状の扉が閉じられ、鍵がかけられると、気を失っていない参加者達が慌てた様子で扉に駆け寄って来た。
「おい、どう言う事だ!」
「何故閉じ込める!」
「ここから出せ!」
鉄格子を揺すって騒ぐも、兵士達は構わずに去って行ってしまった。
頃合いを見て、パルは鉄格子に飛び寄ってみた。
「これは、まるで牢屋でヤンス……」
鉄格子の向こう側には、一〇〇人は入れるぐらいのかなりのスペースがあるものの、鉄格子と壁に囲まれたそこは、まさに牢屋だった。
失格者達は一緒に連れ込まれた自分の魔獣を使って牢を破ろうとするが、突然聞こえて来た悲鳴に動きを止める。
「何でヤンス?」




