第十八話 共闘
「来るでヤンスよ!」
森の奥から何か大きな物が勢い良く転がって来て、フラムとライオの間を通り過ぎる。
少し転がり過ぎて止まったそれは、背中に甲羅のようなものがある地魔獣のダルガードだった。しかも更に、二匹のダルガードが転がり出て来た。
「こんなものまで居るのか。面白い」
「面白がるところ? 三匹のダルガードって、余計にややこしくなったじゃないの」
真っ先に動き出したのはライジャットだった。
素早い動きで近くに居るダルガードに襲い掛かるが、ダルガードが背中を向け、振るわれたライジャットの爪を弾き返す。更にライジャットが体を激しくスパークさせて電撃をお見舞いするも、さほど利いた風もなく、逆に体を丸めて体当たりしてライジャットを弾き飛ばす。
「なるほどね、あれじゃあ体中が傷だらけになるはずだわ。相性が悪過ぎる」
「相性? 俺には関係ないな」
ライオの剣が激しくスパークし、近くのダルガードに斬り掛かった。しかし、ダルガードは直ぐに背中を向け、敢え無く剣は堅そうな音を立てて弾き返され、剣が触れた時に体に流れ込む電撃もまるで効いた様子もない。
諦めずにライオは何度も斬り付けるも、その悉くを弾き返される。
「だから言ってるのに」
「だったら、これでどうだ!」
ライオの剣の閃光が激しさを増す。
さすがにダルガードも嫌がる素振りを見せる。
「本当に常識のない人間だわ」
「でヤンス」
ただ、その事で他の二匹のダルガードがライオに敵対心を見せる。
「まずいわね。パル!」
「任せるでヤンス」
パルが一匹のダルガードの目を引き付ける。
さすがにもう一匹は相手が出来ず、ライオに襲い掛かる。しかし、ライオは強烈な閃光を放つ剣を振るって、二匹のダルガードを相手に奮戦して見せる。
ライジャットは先程の体当たりが効いたのか、地に伏せたままで、子供のライジャットが心配そうに体を舐め廻している。
「もう少しそのまま頑張ってよ」
フラムはその場にしゃがみ、右手を地に下ろす。
「アルシオンボルトーア!」
魔獣召喚陣が現れ、光を放つ。
立ち上がったフラムは、召喚陣を前にして印を組む。
「魔界に住みし炎の魔獣よ。開かれし門を潜り出でて我が命に従え」
フラムの手の印が形を変える。
「出でよ、炎魔獣フラント!」
召喚陣が光を増し、その中からフラントが飛び出して来てその身を炎で包んだ。
更にフラムの手の印が形を変える。
「魔界に住みし氷の魔獣よ。開かれし門を潜り出でて我が命に従え」
手の印がまた変わる。
「出でよ、氷魔獣ヒュービ!」
召喚陣から今度は三匹のヒュービが飛び出す。
「まずはフラント、どうにかしてダルガードを空中に上げてちょうだい」
フラントはパルが引き付けているダルガードに向かって駆け出す。それに気付いたダルガードも、体を丸めて廻転しながらフラントに向きを変える。
二匹の魔獣は激突すると共に動きを止めたが、フラントが直ぐに首を下から上に振ると、廻転を続けるダルガードは宙に舞い上がり、その廻転を止める。
「ヒュービ、今よ!」
一匹のヒュービが舞い上がったダルガードに冷気を吐きかける。
その間に、フラントはライオが相手をしている一匹のダルガードに体当たりしてまた舞い上げる。それを別のヒュービが冷気を吐きかける。
更に残るダルガードにもフラントが体当たりし、舞い上がった所を残るヒュービが冷気を吹きかける。
三匹のダルガードは、一瞬にして氷の塊の中に閉じ込められ、地上に落下した。
「それならあんたでも斬れるでしょう」
「余計な事を」
「打つ手もなかったくせに」
そう言われてはライオも返す言葉もなく、氷の彫刻と化したダルガードに電気を帯びた剣を振るう。すると、氷ごとダルガードは真っ二つになった。
続けざまに他の二匹も氷ごと真っ二つにしてのけると、ライオは剣を鞘に納めた。




