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炎の魔獣召喚士  作者: 平岡春太
 第二章 里帰り

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 第十八話 共闘

「来るでヤンスよ!」


 森の奥から何か大きな物が勢い良く転がって来て、フラムとライオの間を通り過ぎる。

 少し転がり過ぎて止まったそれは、背中に甲羅のようなものがある地魔獣のダルガードだった。しかも更に、二匹のダルガードが転がり出て来た。


「こんなものまで居るのか。面白い」

「面白がるところ? 三匹のダルガードって、余計にややこしくなったじゃないの」


 真っ先に動き出したのはライジャットだった。

 素早い動きで近くに居るダルガードに襲い掛かるが、ダルガードが背中を向け、振るわれたライジャットの爪を弾き返す。更にライジャットが体を激しくスパークさせて電撃をお見舞いするも、さほど利いた風もなく、逆に体を丸めて体当たりしてライジャットを弾き飛ばす。


「なるほどね、あれじゃあ体中が傷だらけになるはずだわ。相性が悪過ぎる」

「相性? 俺には関係ないな」


 ライオの剣が激しくスパークし、近くのダルガードに斬り掛かった。しかし、ダルガードは直ぐに背中を向け、敢え無く剣は堅そうな音を立てて弾き返され、剣が触れた時に体に流れ込む電撃もまるで効いた様子もない。

 諦めずにライオは何度も斬り付けるも、その(ことごと)くを弾き返される。


「だから言ってるのに」

「だったら、これでどうだ!」


 ライオの剣の閃光が激しさを増す。

 さすがにダルガードも嫌がる素振りを見せる。


「本当に常識のない人間だわ」

「でヤンス」


 ただ、その事で他の二匹のダルガードがライオに敵対心を見せる。


「まずいわね。パル!」

「任せるでヤンス」


 パルが一匹のダルガードの目を引き付ける。

 さすがにもう一匹は相手が出来ず、ライオに襲い掛かる。しかし、ライオは強烈な閃光を放つ剣を振るって、二匹のダルガードを相手に奮戦して見せる。

 ライジャットは先程の体当たりが効いたのか、地に伏せたままで、子供のライジャットが心配そうに体を舐め廻している。


「もう少しそのまま頑張ってよ」


 フラムはその場にしゃがみ、右手を地に下ろす。


「アルシオンボルトーア!」


 魔獣召喚陣が現れ、光を放つ。

 立ち上がったフラムは、召喚陣を前にして印を組む。


「魔界に住みし炎の魔獣よ。開かれし門を潜り出でて我が命に従え」


 フラムの手の印が形を変える。


「出でよ、炎魔獣フラント!」


 召喚陣が光を増し、その中からフラントが飛び出して来てその身を炎で包んだ。

 更にフラムの手の印が形を変える。


「魔界に住みし氷の魔獣よ。開かれし門を潜り出でて我が命に従え」


 手の印がまた変わる。


「出でよ、氷魔獣ヒュービ!」


 召喚陣から今度は三匹のヒュービが飛び出す。


「まずはフラント、どうにかしてダルガードを空中に上げてちょうだい」


 フラントはパルが引き付けているダルガードに向かって駆け出す。それに気付いたダルガードも、体を丸めて廻転しながらフラントに向きを変える。

 二匹の魔獣は激突すると共に動きを止めたが、フラントが直ぐに首を下から上に振ると、廻転を続けるダルガードは宙に舞い上がり、その廻転を止める。


「ヒュービ、今よ!」


 一匹のヒュービが舞い上がったダルガードに冷気を吐きかける。

 その間に、フラントはライオが相手をしている一匹のダルガードに体当たりしてまた舞い上げる。それを別のヒュービが冷気を吐きかける。

 更に残るダルガードにもフラントが体当たりし、舞い上がった所を残るヒュービが冷気を吹きかける。

 三匹のダルガードは、一瞬にして氷の塊の中に閉じ込められ、地上に落下した。


「それならあんたでも斬れるでしょう」

「余計な事を」

「打つ手もなかったくせに」


 そう言われてはライオも返す言葉もなく、氷の彫刻と化したダルガードに電気を帯びた剣を振るう。すると、氷ごとダルガードは真っ二つになった。

 続けざまに他の二匹も氷ごと真っ二つにしてのけると、ライオは剣を鞘に納めた。



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