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炎の魔獣召喚士  作者: 平岡春太
 第二章 里帰り

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 第十六話 アリューシャの森

「すかしてんじゃねえぞ!!」


 集まった男達も次々と剣を抜き、ライオに向かって駆け出した。

 ライオは全く動かず、一人が振るって来た剣を剣で受け止めた。すると、男の方は雷魔獣の電撃を受けたかのように体を震わせて倒れ、体から白煙を上げて、それ以上立ち上がる事はなかった。

 構わずに一人、また一人とライオに斬り掛かるが、剣を合わせた途端に同じ様に倒れ、動かなくなってしまった。

 殆どの者が倒れ伏すのに、そう時間は掛からなかった。

 残った数人も、苦虫を嚙み潰した様な顔でライオを睨み付けていたが、


「覚えてろよ!」


 と在り来たりな台詞を吐き捨てて、その場から駆け去って行った。

 ライオも剣を鞘に納め、歩み出す。


「ちょ━━」


 フラムは呼び止めようとするのを飲み込んだ。


「今の技、ご主人が使っていた技に似てたでヤンス」

「炎と雷の違いはあれ、きっと同じ技よ。魔獣の属性の力を剣に込めて使うなんて技、他にないでしょうからね」

「一体何者なのかしらね?」

「本当に━━わ!? いつの間に……」


 遠目で見ていたはずのイグニアが、いつの間にか直ぐ後ろに立っていた。


「一緒に食事していたみたいだけど、知り合いなの?」

「違うわよ。単なる相席相手よ」


 丁度その時、イグニアのお腹が鳴る。


「忘れてたわ。私もお腹が空いてたんだっけ」


 イグニアはまた店の中に駆け込んで行った。

 フラムは呆れたように首を振りながら、ライオが去って行った方に目を向けた。


「本当に何者なんだろう……」


 この日は日が暮れて来た事もあって、近くの宿屋に泊まる事にした。


 翌朝、宿屋の主人から、アリューシャの森が近くにあると聞き、パルを肩に乗せて歩いて向かっているのだが、その足取りは重く。


「何であんたが付いて来てんのよ」

「目的が一緒なんだからそうなるでしょう」


 隣にイグニアが歩いているせいで。


「本当に暇なのね」

「でヤンスね」


 フラムとパルの溜息が揃う。


「誰が暇ですって。勝手に決めないでよね。私はあんたに一泡吹かすのが第一目標なの。ようやく見つけたんだから、絶対に逃がさないわよ」

「まあ、それはいいとして、今度は帰った方がいいわよ。普通のライジャットでもかなり手強い魔獣なのに、今までの事を考えたら並みのライジャットとも思えないし、炎魔獣しか召喚する事が出来ないあんたじゃあ、身の危険もありうるわよ」

「余計なお世話よ。ライジャットだろうが、ランボルトだろうが、蹴散らしてやるわよ。第一、あんたに心配されたくないわね」

「何を言っても無駄みたいね」


 フラムとパルは呆れ顔を見合わせる。

 やがて教えて貰ったアリューシャの森らしき深い森の中に入った。


「さあ、ここからは勝負よ」


 イグニアはそそくさと森の奥の方に駆け去って行った。


「どうなっても知らないわよ」


 フラムはイグニアとは違う方向へ歩み出す。


「結構広そうだけど、何処にいるのかしら」

「フラム、あっちから声が聞こえるでヤンス」

「ライジャット?」

「一つでないでヤンス。人の声もするし、魔獣らしき声もするでヤンス」

「あのライオとか言う男かしら。先を越されたら大変だわ。とにかく急ぎましょう」


 パルの指示に従って、フラムは声が聞こえると言う方に向かって急いだ。

 急ぐその先から、閃く光が見えると共に、フラムの耳にも聞こえる人の悲鳴が聞こえて来た。ただ、閃く光も人の悲鳴も一つではなく、次々と聞こえて来る。


「これって……!」


 人が倒れている。それも一人だけではなく、木々の間から覗いて見えるだけでも複数人。

 その数人の顔にフラムは見覚えがあった。昨日ライオに絡んでいた男達だ。


「性懲りもなく、仕返しに来たのね。だとしたらあの男が……違う。この傷は剣の傷じゃ━━」

「フラム、後ろでヤンス!」


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