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炎の魔獣召喚士  作者: 平岡春太
第九章 サバイバル

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 第九話 真の目的

「破壊ですって? そんな事、ケイハルトが許さないでしょう。ケイハルトはこのダルメキアの王になりたがっているんでしょう」

「ダルメキアの王? 浅はかな」


 驚くフラムとは対照的に、ビエントは落ち着いていた。


「そう、ケイハルトも了承済みのはず。全ては聞いていた通りか」

「ほう、そうですか。知っている所を見ると、ケイハルト様が仰っておられた通り、ラファールはあなたが差し向けた間者だったようですね」

「ラファールが間者!?」


 次から次へと知らない事を訊かされ、フラムは目を白黒させる。


「ケイハルトを(そそのか)したのはお前か?」

「これは人聞きの悪い。私の話を聞いて、直ぐに了承して下さっただけですよ。実に理解の良い方で、だからこそ、私は()を選んだのですが」


 その時、下方から聞こえて来た大きな音に視線を落とすと、ジェモグリエが地面に開いた大きな亀裂に足を取られて体勢を崩す所だった。


「大きいのはいいですが、不具合も多いようですね」


 再び視線を戻したシュレーゲンの目の前には、漆黒の魔獣召喚陣があった。


「あいつ!」


 言葉より早くフィールが動き出していた。

 ビエントが駆るグリードもいち早くシュレーゲンに向かって動いている。


「随分楽しませて貰いましたよ」


 ビエントが持つ三叉戟による突きとフラムのヴァイトの一振りは、漆黒の魔獣召喚陣と共に消えたシュレーゲンによって空振りに終わる。


「遣り辛い相手だ」

「結局逃げるんじゃないのよ! これじゃあジェモグリエが……」

「フラム!」


 何処かに飛ばされていたパルがようやく戻って来た。


「あんたは一体どこで油を売ってたのよ」

「飛ばされてジェモグリエにぶつかって伸びてたでヤンス」

「いつもながら役に立たないわね」

「役に立っている時もあるでヤンスよ! ああ、それより、フリードが居るでヤンス」

「それを早く言いなさいよ!」

「だから役に立ってるでヤンス」

「分かったから。それで、何処に居るの?」

「こっちでヤンス」


 パルの先導でフラムのフィールは飛んで行った。


「相変わらず良いコンビだな。さて、私は」


 和んだ笑みを覗かせた後、真顔に戻ったビエントは、フラムとは別の方向にグリードを向けて飛んで行った。


「お、あれはパルじゃないか? だとすると、あのフィールは……」


 黙祷を終えたシュタイルとフリードの元に、パルとフラムを乗せたフィールが向かって来た。


「フリード!」


 揚々と飛んで来たパルに続き、フィールからフラムが飛び降りて来た。


「居た。居た」

「おう、元気か?」

「元気か、じゃないわよ。ここに来るまでにどれだけ時間が掛かってんのよ!」


 詰め寄るフラムに、フリードはのけ反る。


「いや、それがだな。先生の所に着いたのはそう遅くもなかったと思うんだけどさ。ほら、俺は飛んで来れないだろう。だから先生が、海を渡るよりどうせなら魔界を進んだ方が早いだろうって言うから、道を教えて貰って走り出したのはいいんだけどさ……」


 フラムは大きな溜息を吐く。


「全くあの先生は、私よりずっとあんたとの付き合いが長いはずなのに、あんたの事が分かってないんだから」

「フリードは方向音痴でヤンス」

「何回か当たりを付けて上に出てみたんだが、駄目でさ。ようやく辿り着いたんだぞ」

「そんなの自慢にならないわよ。それで、何であんたもここに居るわけ?」


 その矛先はシュタイルだ。


「いや、魔界を進んでたら偶然そいつに会ってさ。ここに出られたのもそいつの御蔭なんだよ」

「俺の用事はツェント(こいつ)だけだ」

「それって、そこに倒れてるヴェルクって奴の?」


 フラムは首を傾げる。

 シュタイルが持つツェントは、ヴェルクが手にしていた時の形状とは違い、両刃の一つの先端が長く変わっていた。


「確か、元々あんたのだって言ってたわよね」

「これでもう俺の用は済んだ。それじゃあな」

「ちょっと、ちょっと、待ちなさいよ」


 立ち去ろうとするシュタイルを、フラムが呼び止める。


「どうせ来たならあんたも手伝って行きなさいよ。相当腕に自信があるんでしょう?」


 その時、再び上空からジェモグリエの足が落ちて来る。

 何とか散り散りになって躱す。

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