第二話 修行の場
「ふう~、片付いた」
汗を拭うフリードの後ろには、真っ二つになったグラルドンの死骸が横たわっている。
「随分と時間がかかったのお」
「もうちょっと分かりやすく教えてくれれば早く終わったでしょうに」
フラムが不服そうに不満を口にする。
「それでは強くなれぬであろうに。ほっ、ほっ、ほ」
「何かと言えば、笑って済まそうとするんだから」
「でヤンスね」
「では、本格的な修行と行こうかのお」
「え、休憩は?」
「必要かの?」
「色々と考えたり動いたりで疲れちゃって、ここから一歩も動けませんよ」
へたり込むフラムは、がっくりを首を落とす。
「そう言われたら俺もクタクタだ」
フリードもその場にへたり込む。
「だらしのない連中じゃのお。じゃが、心配する必要はないぞ。歩く必要はない。修行はここでするからのお」
ウォルンタースは杖で軽く地面を叩く。
パルは訝しげに辺りを見廻す。
「ここって、もう死魔獣はグラルドンが食べちゃったし、そのグラルドンもフリードが斬っちゃってもう相手は居ないでヤンスよ」
「それとも先生が直接手解きしてくれるんですか?」
余り期待していない風にフラムが訊く。
「勘違いするでない。修行はここですると言っておるのじゃ」
再び杖が地面を叩く。
「だからここには━━て、まさか!?」
「先生、ちょっと待って!!」
フラムもフリードも何かに気付き、フリードが慌てて立ち上がるも、三度ウォルンタースの杖が地面を叩いた時、杖を起点に周りの地面に幾筋もの亀裂が走った。
「さて、修行の場に行こうかのお。ほっ、ほっ、ほっ」
「無茶苦茶だ!」
二人の言葉が重なった時、地面が大きく崩れ、大きな穴が口を開けた。
ウォルンタースの笑い声と二人の絶叫が、空いた穴の暗闇の中に一瞬にして消えて行った。
「本当に無茶苦茶な人でヤンスね」
寸前の所でフラムの肩から飛び立ち、頭を掻いてパルも、後を追って空いた穴の暗闇の中に消えて行った。
目を覚ましたフラムは、ゆっくりと身を起こす。
「全くもう、何て無茶すんのよ。でも、何とか生きてるみたいね」
周りは木々で囲まれていて、森の中に居ると言うのは察しが付く。
「何処かしら、ここ…………?」
とりあえず歩き出そうとしたその時、何かが猛スピードで飛んで来る気配を感じ、ヴァイトを身構える。
木々の間から飛び出して来たのに合わせてヴァイトを振るうが、
「ストップでヤンス!!」
寸前の所で止めた刃の先には、パルの姿があった。
「何だ、パルか」
「何だはないでヤンスよ。もう少しで真っ二つにされる所でヤンス」
「あんたがいきなり出て来るからでしょう」
「剣聖が急いで伝えて来いって言ったでヤンスよ」
「剣聖が? その前に、ここは一体何処なのよ?」
「魔界でヤンス」
「魔界? そうか、あの辺りは魔界と通じている場所が多いって聞いてたけど、まさか地面の下にあるなんて。そもそも不意に落とすなんて何考えてんのよ。それもその先が魔界だなんて、一体何を考えて━━」
「ストップでヤンス!」
止まらない愚痴をパルが止める。
「とりあえず、剣聖の話を伝えるでヤンス」
「忘れてたわ。それで、何て?」
「ここから北の方に行った所に、ダルメキアとを繋ぐ出入り口があるらしいでヤンス。そこまで辿り着くのが修行だそうでヤンスよ」
「つまりサバイバルって訳ね。それで先に十傑を使いこなせるようにしたのね。じゃなかったらここでは生き残れないでしょうから。それで、先生は?」
「ゴールに向かう前に穴を塞ぐって言ってたでヤンス」
「だったら開いている穴から来ればいいでしょうに」
「オイラもそう言ったでヤンス。そしたらこの場所がスタート地点に向いているそうでヤンスよ」
「何処だって一緒な気がするけど。フリードは?」
「高い所から落ちて気を失っていたでヤンスけど、直ぐに目を覚まして剣聖から説明を受けて先にゴールに向かったでヤンスよ」
「そう、じゃあこっちも急がないと。って、どっちが北なのよ?」
初めての場所に、方向が分からずにフラムが苛ついていると、近くにある叢がガサガサと音を立てる。
「今度は何?」




