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炎の魔獣召喚士  作者: 平岡春太
 第七章 剣聖

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 第十六話 ムカつく奴

「何を遊んでんのよ。剣は手に入れたの?」

「遊んでる訳じゃないって。あいつが邪魔をしてだな」

「あいつ?」


 フラムとパルの目がシュタイルに向く。


「あれ、あいつは……」

「確か、この間、荒野で会った奴でヤンスよ」

「ええ、確かシュタイルだったわね」


 シュタイルは思い出したように鼻で笑う。


「なるほど、あいつに手古摺っていた連中か。それではゼクスを抜く事は叶わぬはずだ」

「ゼクスを知ってる? まあ、ある程度の腕があるなら知っていて当然か。それより、大きな口を叩いているようだけど、見たところあんたも目的は達していないようだけど。確か、あいつの武器が俺のだって言ってなかったっけ?」

「あれは、あいつの逃げ足が速かっただけだ」


 シュタイルの慌てる姿に、フラムはしてやったりと笑みを見せる。


「それで、代わりにゼクスを取りに来たってわけ?」

「いや、ゼクスは俺を選ばない。俺の武具はツェントだけだ。ここにはたまたま近くに来たから、ゼクスに選ばれた人間が居るかどうか確認しに来たまで」

「ちょっと、さっきから選ばれるとか選ばれないだとか、何の話をしてるのよ」


 シュタイルの視線が、フラムの剣に向けられる。


「さっきから気になってはいたが、お前の持っている剣はヴァイトだな。そんな事も知らずに十傑を所持しているのか。どうやらお前も、ヴァイトに選ばれた訳でもなさそうだな」

「あんた、さっきから私にケンカ売ってんの?」


 フラムは露骨に苛立ちを見せる。


「そう言うつもりはないのだがな。ただ単に、無知な奴だと言っているだけだ」

「ライオと遣り合っていた理由が分かるような気がするわ。口の悪さは似た者同士のようだものね」

「ライオ? ああ、あの時の奴か。確かに口は悪かったが、一緒にして貰いたくないな」

「オイラにすれば、フラムもいい勝負でヤンス」

「あんたもケンカ売ってんの?」


 フラムの拳が肩に乗るパルの顎をぐりぐりする。

 その姿に、シュタイルは呆れたように首を振る。


「用がないならさっさとここから去れ。どう見てもゼクスに選ばれるようには見えなぞ」

「そのものの言い方が人を小バカにしてるって言ってんの。大体、さっきから選ばれるって何の事を言ってるのよ」


 シュタイルが軽く溜息を吐く姿も、フラムは気に食わない。


「だったら分かるように言ってやる。全てとは言わないが、腕の立つものなら優れた武具を求めたがるものだ。それはまた逆も然り。武具もまたそれを扱うものを選び、認められない者が扱えばその武具は並の━━いや、並以下の武具に成り下がると言う事だ。況してやここから引き抜けないようではそれ以前の話だろう」


 苛立つフラムの目は、シュタイルからフリードに移る。


「ちょっと、あんたもバカにされてんのよ。さっきから黙ってないで、何か言い返しなさいよ」

「いや、剣が抜けないのは確かだからな」

「何納得してんのよ。仮にも剣聖の弟子でしょう」

「仮って、お前も酷いな」

「そうか、お前達はウォルンタースの弟子か。お前達を弟子にするようでは、あの老いぼれも随分焼きが廻ったようだな」


 シュタイルのその言葉に、今まで笑みを見せていたフリードの顔が険しく変わる。


「俺の事をどう言おうと構わないが、先生を悪く言うと許さないぞ」

「ほう、怒ったか?」

「先生の弟子に、そんな軟な奴は……軟な奴は……」


 言い返そうとしたフリードの脳裏に、エドアールの顔が過る。

 それを払拭するように激しく首を振る。


「このまま引き下がったら先生の名前に傷がつきそうだ。だったら絶対にお前に勝たなきゃいけないな」

「その意気よ」

「融通が利かない連中だな」


 フリードとシュタイルの双方が剣を構え、対峙したその時、間を割るように地面に大きな地割れが走り、そこから黒い影が飛び出した。


「おお、本当にこんな所にルディアの剣がありやがるぜ。って、何であの時居た連中がこんな所に揃ってやがるんだ?」

「お前は!?」

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