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炎の魔獣召喚士  作者: 平岡春太
 第一章 悪魔の科学者
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 第十三話 復活の悪魔

「離せ!!」


 盗賊団の全員がギュストが嵌めている指輪から伸びる無数の触手に体を完全に縛られ、身動きを取れないでいた。


「俺達をどうするつもりだ!」


 ラドローがギュストに怒りの目を向ける。


「言っただろう。お前達は餌だってな」


 二本の触手の先が、体を縛る盗賊の口の中に入り込み、直後に何かを飲み込むような音が聞こえて来ると共に盗賊の体が徐々に痩せ細り、やがて骨と皮だけになってしまった。


「人数が半分程になってしまったのは残念だが、これだけでもかなりの魔獣を召喚する事が出来るだろうさ」


 顔が恐怖に染まってしまっている盗賊達が、助けを求め、悲鳴を上げ、一人、また一人と、骨と皮だけになって行く。


「遅かったか……」


 やって来た村長は、呆然と立ち尽くす。


「おやおや、わざわざ餌が増えてくれたか」


 ギュストの指輪から新たに一本の触手が飛び出し、村長の体に巻き付いた。直ぐにその先端が村長の口の中に潜り込もうとしたが、その背後から来た影が横切ると共に、触手が寸断された。

 剣を構えて立っていたのは、ようやく逆立った髪が戻っているフリードだった。


「いつの間に?」


 少し遅れて来たフラムが気付かない程の早業だった。

 また新たにギュストの指輪から数本の触手が飛び出して来て、フリードと村長に襲い掛かって来たが、フリードが斬り落としつつ、村長を連れてフラムの元まで下がると、触手はそれ以上は襲い掛かって来なかった。


「この距離が限界みたいね」

「それより何なんだ、この光景は?」

「森を抜ける前に話してたでしょう。強力な魔獣を召喚するには、それなりの対価が必要だって」

「それじゃあ、その対価って」

「そう、人間の命よ。だからアルドは悪魔の(マッド・)科学者(サイエンティスト)とも呼ばれてたのよ」

「待てよ。だったら、今まで通って来た道にあったおびただしい数の人骨って、もしかして」

「バルバゴの民だ」


 村長が苦々しく洩らす。


「かつて町として繁栄しておったバルバゴも、アルドの研究の為に連れ去られ、当初居た町人の半数以上が命を落とし、逃げ出した者も相まって、今や村と呼ばれるまでに人が減ってしまった」

「なるほどね。村に入った時、建物は多いし道は舗装されていて、どうしてここが村なのか不思議だったけど、それで合点がいったわ」

「このままではと、先代の村長━━いや、町長が名のある剣士を雇い、アルドを暗殺した。ただ、アルドの名は全土に知れ渡っていて、その魔導具を求めて何度となく魔獣召喚士が村に訪れた。今回のように盗賊団を使った者は居なかったが、あんな物が人の手に渡れば、またあの惨劇が繰り返される事になろう。迷いの森を抜けられずに諦めてくれれば良いのだが、今回のように諦めが悪い者も居る。だから番犬代わりに魔獣を使う事にした」

「だからランボルトが居た訳ね」


 話を進めている間に、ラドローを残して他の盗賊達は全員が骨と皮だけになっていた。

 口を必死に閉じて抵抗を見せていたラドローも、触手が強引に口をこじ開けて潜り込み、その体は一瞬にして骨と皮だけになってしまった。

 触手は満足したかのように。ギュストが嵌めている指輪の中に戻って行った。すると、指輪が淡く青白い光を放ち始めた。


「これでもっと凄い魔獣を召喚する事が出来るぞ」


 ギュストの狂喜に満ちた目が、フラム達に向けられる。


「ほう、フラントを召喚する事が出来るのか。どうりで私の自慢のヒュービ達が敵わぬ訳だ。だが、この指輪があれば、フラントごとき━━いや、ランボルトさえも……さえも…………」


 突然ギュストが大きく目を見開き、胸を押さえた。


「何だ、これは。く、苦しい……」


 苦しみながらしゃがみ込んだギュストに、フラム達も何が起こったか分からずに、迂闊(うかつ)に近寄る訳にも行かず、ただただ見守る中、ギュストが嵌めている指輪の光が青白いものから徐々に黒く、やがて漆黒に変わり、突然黒いガス状のような物が吹き出し、ギュストの体を包み込んでしまった。

 漆黒の闇の中からギュストの悲鳴が聞こえて来て束の間、黒いガス状の物は一瞬にして消え去った。

 何事もなかったかのように立ち上がったギュストの肌には、今まで無かった黒いアザのような紋様が浮かび上がっていた。


「ようやくこの指輪を使う者が現れたか」


 そこに居るのは、ギュストであってギュストではなかった。


「声が変わった? どう言うこと?」

「あの声は……一度だけ聞いた事があるぞ」


 村長の体は、少し震えている。


「村長さん?」

「あの声はアルドの声だ」

「アルドの声って、まさか!?」


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