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炎の魔獣召喚士  作者: 平岡春太
 第一章 悪魔の科学者
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 第十一話 悪魔の研究

 フラムとフリードは、村長婦人から教えられた道を辿り、迷いの森の入り口までやって来た。


「これからどうするんだ?」

「これを使うのよ。パル」

「はいでヤンス」


 パルはフラムが持って来た村長の帽子をくわえ、フラムの肩から飛び立ち、宙に静止する。

 フラムはその場にしゃがみ、右手を地面に下ろす。


「アルシオンボルトーア!」


 魔獣召喚陣が現れて輝きを放つ。

 立ち上がったフラムは召喚陣から出て、それを前に両手で印を組む。


「魔界に住みし属性なき魔獣よ。開かれし門を潜り出でて我が命に従え」


 両手の印が形を変える。


「出でよ、魔獣ドゥーブ!」


 召喚陣の光が増し、その中からズングリとした体躯(たいく)で四つ足の魔獣が姿を現した。その鼻は、目と口が何処にあるのかが分からない程に肥大化している。


「変わった魔獣だな」

「こう見えても結構役に立ってくれるのよ。パル」


 フラムは飛んでいるパルから村長の帽子を受け取って、それをドゥーブの鼻に近付ける。


「さあドゥーブ、これの持ち主の所に連れて行って」


 ドゥーブは帽子の臭いを嗅ぐと、辺りを探るように鼻を動かし、ゆっくりと森に向かって歩み始めた。

 フラムとフリードもその後に続く。パルも慌ててフラムの肩に戻った。


「へえ~、これで臭いが辿れるのか。だとしたら本当に役立つな」

「魔獣は結構攻撃的なものだと思われてるけど、このドゥーブのように大人しくて人の役に立つ魔獣も多いのよ」

「オイラもそうでヤンス」

「どうだかね」

「さっきこき使っといてよく言うでヤンス」

「何の事かしら?」

「あ、とぼけるつもりでヤンスか? ズルいでヤンスよ」

「ま、それはそれとして、魔獣も使う人間によるって事ね。野生化して狂暴になる魔獣も、元々は見境なく召喚する人間が悪いんだし、さっきのバカ魔獣召喚士みたいに悪い事に使われたら、それこそ可哀そうよ」

「そう言えばその魔獣召喚士、いやに指輪を欲しがっていたけど、そんなに凄い指輪なのか?」

「凄い? まあ、アルドの指輪を使えば強力な魔獣を召喚する事が出来るみたいだから、一見すればそう聞こえるかもしれないわね」

「一見すれば、か。じゃあ違うのか?」

「その指輪を作ったアルドも元々は魔獣召喚士なんだけど、大した魔獣も召喚する事が出来ないごくごく普通の魔獣召喚士だったらしくて。そこで、そんな自分でも強力な魔獣を召喚する事が出来る魔導具を作ろうと考えたのよ。それから魔導具を作る研究に没頭するようになって、数々の魔導具を作る事に成功したって聞いたわ」

「へえ~、魔獣召喚士としては凡人でも、研究には長けていたって訳か」

「まあね。ただ、その研究は悪魔の研究だったのよ」

「悪魔の研究?」

「アルドが作った魔導具を使えば、確かに強力な魔獣を召喚する事が出来るわよ。でも、その為にはその分の魔力を必要とする訳だから、対価が━━」


 突然ドゥーブが鼻を激しく鳴らしてから、走り出した。


「どうやら近いみたいね。話はまた後にしましょう」

 

 フラムとフリードも後を追って走り出す。

 少しして迷いの森を抜けた所で、ドゥーブが動きを止めた。


「やっぱりドゥーブを使って追って来たか」


 ドゥーブの後ろで足を止めたフラム達を待ち構えるようにして、前方にギュストと盗賊団、そして村長が並んで立っていた。村長は後ろ手にロープで縛られている。


「とりあえず村長さんは無事なようね。でも、どうして中に入らずに待ち構えていたのかしら……?」


 その答えは直ぐに分かった。


「よし、連れて来い!!」


 ラドローが後方に開いている大きな穴に向かって大声で合図を送った直後、穴の奥から大きな咆哮が聞こえて来た。


「何!?」


 フラムとフリードが驚く中、ドゥーブは少し飛び上がってから、近くの木の陰に慌てて身を隠した。フラムの肩に乗っているパルも、少し身を震わせている。

 軽い地響きを体に感じ始め、それが徐々に大きくなって来たと思った直後、穴から二人の盗賊が血相を変えて駆け出し、それを追うようにして巨大な漆黒(しっこく)の体を持つ獣が姿を現した。


「ランボルトですって! どうしてこんな所に……?」


 人の多さに驚いたのか、動きを止めたランボルトは、天高く咆哮を上げる。穴の奥から聞こえて来たものとは桁違いの大声とその迫力のある姿に、その場に居る全員が面喰らい、硬直する。


「お、おい、早く分かれるんだ」


 ギュストの声に我に返った盗賊団は、慌てて二手に分かれて遠ざかる。

 ランボルトの前には、丸まったまま震えている三匹のヒュービと、その場を離れる前に盗賊に蹴り倒された縛られた村長だけが残されていた。

 唸り声を洩らしつつ歩み出したランボルトは、ヒュービの前まで来ると、一匹を咥えて上に軽く放り投げ、口を大きく開けて一気に丸呑みしてしまった。

 それを見ていたギュストと盗賊団は、ランボルに刺激を与えないように静かに動き出し、穴の中へと雪崩れ込んで行った。


「あいつらヒュービを餌に。それに村長さんまで囮に使って。どこまで卑怯な奴等よ」


 三匹のヒュービをあっと言う間に胃袋に収めたランボルトは、縛られて立つ事さえ出来ないでいる村長に歩み寄る。


「パル、急いで!」


 フラムの肩からパルが飛び立つより早くフリードが駆け出し、村長に噛み付き掛かったランボルトの歯を抜き様の剣で受け止めた。


「それじゃあダメ、早く離れて!」


 フラムの声に反応する間もなくランボルトの体が激しくスパークし、歯を剣で受け止めているフリードの体に強烈な電撃が流れ込んで来る。

 フリードの苦痛のあまりに上げた声が響き渡り、フリードは全身から白煙を上げてその場に倒れてしまった。

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