第七話 更なる乱入者
「仲間がいたの? あ、レガラントがまた!」
隙をついてまたレガラントが奥に駆け去って行く。
「お前達はレガラントを追いなさい!」
アローラの指示を受け、現れた五人は山肌から飛び降りるなり、そのままレガラントの後を追う。
更にそれを見たエレーナが後を追う。
「ちょっと勝手に。仕方ないわね。フラントも後を追って!」
フラントも直ぐに後を追う。
「させるものですか」
アローラが剣を地面に突き刺すと、そこから地面が凍り、前方に氷の道が勢い良く伸びて行く。それは一瞬にしてフラントの元まで達し、振り返る間も与えずにフラントを氷の彫刻と化した。
更に伸びる氷の道は、その先を行くエレーナまで達した。
エレーナにもまた躱す間を与えなかったが、距離が離れているせいか、振り返ったその下半身のみを凍らせた。
「私のフラントが一瞬にして!? あいつ一体……?」
エレーナは直ぐに剣を使って下半身の氷を削って行く。
「こんなもの!」
「私が魔獣召喚士である事をお忘れ?」
急にエレーナの周りを影が覆う。
ハッと見上げたエレーナの上空には、大きく口を開けたサウロンの姿があった。
「しま━━」
サウロンが吐いた冷気が、エレーナを一瞬にして凍らせた。
「さて、残ったのはあなた一人ね」
「オイラもいるでヤンス!」
パルが隙をついてアローラに体当たりしようとするが、
「うるさいハエね!」
アローラが地面から引き抜くと同時に振るった剣に当たって吹っ飛んでしまった。
「パル!」
地面を転がったパルは、当たり所が良かったのか、体が頑丈なのか、さしたる怪我はない様子だが、目を廻して伸びている。
「よくもパルを!」
フラムはアローラに迫り、剣を振るう。
アローラも剣を振るってそれに応戦する。
何度も打ち鳴らされる金属音に、その剣技は互角に見えた。
ただ、アローラの顔には余裕が見えた。その要因は━━。
「お前も私が魔獣召喚士と言う事を忘れたか?」
上空から舞い降りて来たサウロンが吐いた冷気がフラムを襲う。
「舐めんじゃないわよ!」
フラムは大きく飛び上がって寸前で冷気を躱すと、降下して来たサウロンの背面に廻り、体全体をぶつけるような体勢でサウロンの背中に体当たりした。
そのまま地面に叩き付けられたサウロンは、二度羽を羽ばたかせてから動かなくなった。
フラムはサウロンの背から飛び降りるなり、背後に気配を感じて振り返ると同時に剣を構えたが、直ぐ目の前に立っていたアローラが振るった剣に剣を弾き飛ばされてしまった。
「さすがにやるわね。サウロンを生身で気絶させたまでは褒めてあげる。ただ、詰めが甘いようね。残念だけどこれで終わり」
アローラは振り上げた剣を、何も出来ずに立ち尽くすフラムに向かって振り下ろした。
思わず目を瞑ってしまったフラムだが、寸前で聞こえて来た剣と剣がぶつかり合う音に、ゆっくりと目を開けた。
目の前では、背を向けて立つ見知った人物が、フラムに振り下ろされたアローラの剣を自ら構える剣で受け止めていた。
「あんたは!?」