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炎の魔獣召喚士  作者: 平岡春太
 第六章 邂逅(かいこう)
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 第一話 さらなる成長へ

 朝になって目を覚ましたフリードが、食事が用意されていると執事に連れられて部屋に向かうと、部屋の入り口で立ち尽くすアインベルクとシャルロアの姿があった。


「どうかしたんですか?」

「いえ、私達も今来たのですが……」


 シャルロアが苦笑いしながら部屋の中を指差した。

 フリードが部屋の中を覗き込むと、広々とした部屋の中に何人が席に就けるのだろうと言う長いテーブルで、フラムとパル、そしてウィルとその父親であるバルバゴの村長が朝食をとっていたのだが、昨日塞ぎ込んでいたのが嘘のようにパルとウィルと共にフラムが物凄い勢いで食事を胃袋へと送り込んでいる。

 あの後、ウィルもどうせならここに泊まればとバルバゴの村長も呼ばれ、二人の部屋も用意されて一泊したのだった。

 ただ、ウィルと違って、ただ一人村長だけは少し呆れながらゆっくり食事をしていた。


「おい、ウィル。少しは遠慮したらどうなんだ? 私達は元々呼ばれた訳じゃないんだぞ」

「だって、おああさんのごはんもおいひいけど、ここじゃあ食べられないものがはべられるから」

「食べながら喋るんじゃないぞ。いつもお母さんに怒られているだろうに」

「まあまあ、たまにはいいじゃないですか。それに、幾ら食べたってここの主は裕福なんだし」

「そうでヤンス。フラムなんか全然遠慮がないでヤンスよ」

「あんたもでしょう」


 睨み合うフラムとパルの姿に、ウィルと村長は笑顔になる。


「どうやら元気が出たようですね」

「これはアインベルク様、この度はご招待頂き、誠に有難う御座います」


 部屋に入って来たアインベルク達の姿を見た村長は、慌てて立ち上がって頭を下げる。


「良いのですよ。礼ならばこちらが言いたいところです。特にそちらのご子息にはね」


 ウィルは鼻高々に笑みを見せる。


「連れて来たのは俺なんだけどな」

「ええ、勿論あなたも功労者ですよ」

「にしても、相変わらずよく食べるよな。太るぞ」


 フリードがポツリと洩らした一言に、直ぐにフラムの鋭い視線が飛んで来る。


「相変わらずあんたは失礼な事を平然と言うわね。レディに太るって言うのは嫌われる言葉だって思わないの?」

「レディ? お前からその言葉が出るのも驚きだけどな」

「本当にあんたってデリカシーがないわね。もういいわ。何を言ったってあんたは女性に嫌われる事しか言わなさそうだから。どうせ太るってなら、あんたの分も全部食べちゃおうかしらね」

「それは困るな」


 フリードは慌てて席に着く。


「フラムさん、立ち直ったようですね」


 シャルロアが小声でアインベルクに話し掛ける。


「さあ、どうでしょう。表面上はそう見えても、内面はどうか。それでも、今はあれで十分です。さあ、私達も朝食にしましょうか」


 ようやく全員揃っての朝食も終えると、アインベルクのいつものルーティーンである紅茶でのティータイムが始まる。


「お母様、一つお願いがあるのですが」


 唐突なシャルロアの申し出に、アインベルクの紅茶を飲む手が止まる。


「ティータイムが終わるまで会話は慎むように言っていたはずですが。まあ、今日は特別に許しましょう。何ですか?」

「私に修行をつけて貰えないでしょうか?」

「おや、自分の方からその様な事を言うのは初めてですね」

「最近、自分が無力であると感じる事が多くて。私は守られてばかりで、このままではいけないと。ただ、今のままでは誰も守れません。だから、修行をつけて欲しいんです」

「実に良き心掛けです。やはり、シャルロアをフラムに預けて正解だったようですね」

「私は何もしてませんよ」

「そうでヤンス」


 フラムの睨みをパルは受け流す。


「技術的なものを言っているのではありませんよ。今までのシャルロアは何かにつけて後ろ向きな考えをしていました。それが、昨日は私に意見するようになっていましたからね」

「あれは思わず……」


 シャルロアは少し紅潮した顔を伏せる。


「元々素質があるのに自分からやる気にならず、もう一人のシャルロアと言うものを生み出してしまった」

「もう一人のシャルロア?」

「それは良いのです。力をつければ、二度と現れないでしょうから」


 シャルロアは何の事か分からず、眉を顰める。

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