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黒鳥奇譚  作者: ヤマトゥー
腐敗の翼
25/26

「委員長〜leader」

冬休み開始の宣言をしろ!磯野ぉ!!

2学期続行ォォォ!!


なぜだ…なぜ休ましてくれない…

 廃病院での任務終了後、僕はMARS東京支部の治療棟に入院していた。魔力のおかげで1ヶ月かかる怪我も、半月ほどで治るらしい。

 ちなみに、環くんや影斗くん、周さんはとっくに傷が治って復帰しているらしい。これは僕の治癒力が低いわけではなく、傷がダントツで酷いからだ。

 ここは東京支部だけど、都会のイメージは微塵もないのどかな山の中にある。一般人には僕たち、MARSという存在は知られてはいけないからだ。山を切り開いた場所に、馬鹿でかい学校みたいな建物が建っていて、その八方の山を国の土地にしているらしい。

 中には僕たち隊員の寮や食堂、病院、コンビニまであるし、Wi-Fi、水道、電気、ガス全部完備されている。娯楽施設はないが居心地は最高だ。

 十数年前まではMARSは一般的に知られていた組織らしいのだが、ある事件以降、完全に秘匿しているらしい。何があったのか、なぜなのか翠綺さんに聞いても教えてくれないし、自分でスマホや支部の記録庫を探しても何も出てこない。


 その日はあいにくの大雨で、骨折したあばらの傷口が痛んでいた。医務院の先生いわく、低気圧が原因らしい。難しいことはよくわからないが。

 そんなある日、今の空に浮かんでいそうな雲のように、暗い顔色をした翠綺さんが険しい顔をしながら病室に入ってくる。

「どう…しました?」

 翠綺さんが能力を使っていると勘違いするほど張り詰めた空気。すこし間を置いて、口を開く。

「上層部がまたちょっかいをかけてきた。やはり普通の任務を1、2個こなしたところでジジイども(幹部)の信用は得られなかったか」

「僕が今問題の〈ゾンビ〉って疑われているんですか?」

 しかし僕の質問に、翠綺は「うーーん」とうなり、「どちらとも言えない」といった返答をする。

「いや、君が保有している能力は〈鴉〉だけと判明してるし、そもそも議題はゾンビじゃない」

「じゃあ…」と困惑する僕が疑問を吐露する前に、さらに説明を続ける。

「そもそも今回のゾンビが大事になってる理由として、【民間人への大規模な被害】だ。魔物が民間人をただ襲うのとは違い、既にゾンビの被害に遭った人は100近い。人が能力を悪用する例もたくさんあるが、ここまで被害が大きく、残虐性が高いのは類を見ない」

「じゃぁ、なぜ僕がゾンビとは関係ないと言い切れないんですか?」

「あぁ、それは任務に初めてゾンビが出現した日、それが君がMARSに入隊した日だからだ。

 だが、最高幹部たちはそんなこと(ゾンビ)いっさい気にしていない。なぜなら今最もヤツらが関心を持っているのは、〈()がMARSに入隊したこと〉だからだ」

「………」

「改めて…いや何度でも言うが君の持っている〈鴉〉はとても長い歴史と大きな因果がある。そしてその因果を恐れたジジイどもが、君を処刑しようとしていた」

「ハハ、罪状は能力を持っていたから、ですか」

 乾いた笑しかできない僕。

「そうだ、それを胸糞悪く想い、私は君を助けようと思った。君を私の庇護下に置くにはやはりMARSに入隊してもらうのがいいと判断してな、今君がここにいる。一般人は簡単に秘密裏に処分できるが、やっぱり組織に所属している者を簡単には殺せないしね」

「二つほど…質問いいですか?」

「あぁ…どうした?」

「僕のこの力の因果ってのはッ…一体なんなんですか?!そのせいで僕は命を狙われて、高校のあの人たちも…死んだんですよね…」

「すまないが今の君にそれを教えることはできない。…本当にごめん」

 喰ってかかるような勢いで問いかけた僕の質問に、翠綺さんは淡々と応える。しかし奥歯を噛み潰しているかのようにも見え、ただ平然を装っているだけだった。だからこそ、あの謝罪は心からのものだと感じ、それ以上の追求はできなかった。

「それで、二個目の質問は?」

 これ以上追加をしてはいけない気がする…、とりあえずこれを聞いておくか…

「これから僕はどうなりますか?」

「君が、使える人物だと証明するために、本部である人物と本気(ガチ)で戦ってもらう。詳しくは車で移動しながらだ」

 タイミングを見計らって、黒服の人が新しい隊員服を持って入ってくる。廃病院で血糊と穴でボロ切れ同然になっていたから新品を持ってきてくれたようだ。

 病院で着るタイプのパジャマを脱いで、新しい服に袖を通す。サイズもピッタリだ。

「行こうか」

 重い雰囲気は車まで引きずられる。


 車は今、僕と翠綺さん、そして運転する黒服の人を乗せて、高速道路の上を走ってる。

「それで、僕がガチで闘う(やる)相手は?」

 翠綺さんは、タブレットを起動させ、顔写真を液晶に写して手渡してきた。

 そこに写っていたのは、僕と同い年ぐらいの少年。金髪のオールバックで、左目だけ黒いサングラスをしていた。漫画とかで、ヒゲの生えたおじいちゃん博士がしている、片っぽだけのメガネ。それのサングラスバージョンて感じだ。

「彼の名前は鷹宮 慧(たかみや けい)。通称:〈委員長〉と呼ばれている。

 若き天才、最年少でAランクに昇格。さらに未成年のMARS隊員が、不当な扱い、ランクに合わない危険な任務に派遣されるとか、そういったのを防ぐために、〈未成年安全保障機構〉、通称:慧眼局(けいがんきょく)を設立し、そのトップとしても活動している」

 金髪で片目だけ隠してるとか、いかにも厨二病を患ってそうな外見だ。でも、なんだろう、この深い黒のレンズのさらに奥の奥に、怪物を飼っている。そんな気がしてならない。

「廻、そろそろ目隠しをつけてくれ。B級以下は本部の位置を知ることはできないからな」

 そして黒い目隠しを渡され、それを付ける。

 ()を出して、そこから視覚を得ることもできるが、特に興味が沸かなかったからしようと思わなかった。


 カーブの回数や揺れが多かったから、多分山道だろう。1時間ほど経って到着した。目隠しを外すとそこはやはり山の中だった。

 そこには東京支部のように山に囲まれた大きな体育館みたいなのがあった。

「ここが本部ですか…」

「今回用があるのはあの建物だけだ。あの建物は本部の敷地の端っこの端っこだよ」

 緊張で速まる鼓動を抑え歩き出す。


 無人の雰囲気を醸し出している入り口。重そうな扉を開き、さらに進むとだんだん光が見えてきた。

 そして長い廊下を歩いて、ついた先は正方形のコンクリートでできた部屋。“訓練”って空間じゃなくて、“実験”って感じがする、なんとも殺風景で無機質な空間だ。“部屋”というよりむしろ“箱”だな。

『来たか、一条 翠綺(いちじょう すいき)()()M()A()R()S()()()()()()

 上から声が聞こえ、向くとホログラムが5つ映し出される。全部首から下しか写ってないが、曲がった腰や、杖から全員老人なんだなと推理できる。そして漏れなく、全員老害。

(漏らすのはしょんべんだけにしとけっつうの)

「彼には【玲渡 廻(れいら めぐる)】という名前がある。そんな呼び方は辞めていただこう」

 翠綺さんが噛み付く。

(ヨシッ!もっと言ってやってくだせぇ)と小物臭満載なことを心の中で言う。

『それは君が提案してきた案の、結果次第だ』

 その時、奥から1人の男が歩いてくる。身長は僕より少し低いぐらい。金髪、片目だけのグラサン。

 アイツが…

「彼が鷹宮 慧だ」

「よろしく。で、君が例の?処刑予備軍か?」

 片方だけ手を挙げてヒラヒラと振ってくる。

(やっぱり、あの眼……、ただの眼が出す眼圧じゃないよ)

『一条が提案してきた内容は[鷹宮 慧と試合をし、MARS、人類の役に立てるほどの実力があると証明する]、だったな』

「翠綺さん………聴き忘れてたことが一つあった、あの…鷹宮って人の能力は?」

「Curse Eye、呪いの眼。あの眼で5秒見つめられたものは例外なく死ぬ」

 僕は今からそんなヤツと文字どおり〈死ぬ気〉で、戦わなくてはいけないのだ。

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