23.5 「暗躍〜conspiracy」
「今月に入り、ゾンビの被害はいくつだ?」
日本の何処か、MARS最高幹部が揃う、火星の間。
5つの大きな岩の彫刻。
「狼」、「イノシシ」、「啄木鳥きつつき」、「鶏」、「トネリコ(木の一種)」
それぞれに鎮座するように老人が座っている。
「今月だけでも50件は超えている」
1人が答える。
「ならば…ゾンビが最初に発見されたのは…いつだ?」
「先月じゃな」
違う1人が答える。
「そうならば、先月と今月の合計は?」
立派な白い髭を携えた1人が答える。
「約80件」
「ならば…一条翠綺が、例の、鴉のガキを拾ってきたのはいつだ?」
「ちょうど先月だったのぅ」
「では、〈例のガキがMARSに入隊してから、発生したゾンビの被害は?」
もう皆言わんとしてることはわかる。側から見たら無駄な会話。
だがこのような回りくどい会話も暇つぶしの一つである。
「約…80程だ」
「フンッ、一条翠綺はなんと言ってある」
「『ゾンビの件はコチラ側で対処する。指を咥えて見ていろ』と」
「完全に舐めておるな。我々を」
その時、ピピピッ!と電子音が鳴り、空中にモニターが映し出される。
そこに出された内容は『玲渡廻が廃病院にて、ゾンビと戦った』というもの。
そして、『魔物がゾンビ化した』という報告。
1人がニヤリと笑う。
「決まりだな、タダでさせ鴉を保持しているだけでも死刑だが、その上民間人にも被害が出ているゾンビ。そして…そのゾンビの危険度がさらに高くなった」
「ほっほっほ、殺すための大義名分は…充分すぎるほど揃っている。ということだな?」
5人一同、ある一箇所に身体を向け、跪く。
「それでよろしいですかな?MARS様」
*
空気が重く湿った、天気が最悪の日。
(ここまでジメジメするならば、いっそ降って欲しい)
任務終了後の一条翠綺はそう思った。
(こんな天気の日は…嫌なことが絶対に起こる)
そしてそれは的中する。
彼女が自分の事務室に入ろうと、ドアを開くとそこには、真っ黒な封筒を持った黒服が待機していた。
そして黒服はそれを手渡すと、何も言わずに退室して行った。
この封筒は、MARS最高幹部が直々の命令や任務を通達する時にのみ使用される物。
イスに座ることすら後回しにし、その場で開き、深い深いため息を吐く。
(何か…策を考えなければ)
中には紙が一枚。
【玲渡 廻の死刑を執行する】と書かれていた。




