「罵声〜noise」
「目標の殲滅を確認、今から帰還する」
龍美は剣に付いた血を払い、腰の鞘に収める
「ん?雨か。返り血を落としてくれるのは嬉しいが、風邪はひかせないでちょうだい」
ポツポツと雨が降りだした
雨が滴る音に紛れ、龍美に近寄る影が一つ
「うーうー」
ゾンビである
それに気づいた龍美はそっけなく「フンッ」と鼻で一蹴し、剣を抜く
剣に風を纏わせ、一振りする………
*
「任務ご苦労、龍美。緊急で出てきた「ゾンビ」分の給料も弾ませておこう」
龍美は施設に戻り、翠綺の事務室で会話をしていた
「すまない、ゾンビが魔物でなく“人”である以上、未成年たちにゾンビが乱入してくる可能性の高い任務をやらせるのは気分が悪い」
「いえ、大丈夫です」
「ふふっ、やはり君は信頼できるよ、龍美」
「ところで彼、廻くんは?」
翠綺は何も言わずに紙をペラペラさせる
そこには『玲渡 廻、貴殿を対魔人類保護組織[MARS]のBランク隊員に認める』
「今は久しぶりの休暇を満喫してるよ」
「受かりましたか、良かった」
「いや、何もいい事だけじゃない、“コレ”」
そう言うと翠綺はもう一枚紙を見せる。
『Sランク隊員、一条 翠綺殿。そなたを“議会”に召集する
議題:そなたの受け持つ隊員について』
「………なるほど…」
「そうなんだよ、“あの”おっかな怖いジジどもの相手さ、面倒だ」
「まぁ、頑張ってくださいな。ところで廻君は今どこに?」
「彼なら日用品の買い出しに行った、寮はベットと机しかないからな」
「彼一人暮らしでしたよね?お給料日まで、まだ少しありますし…、お金あるですか?」
「…どうやら有るらしい、本人に聞いても『分からないけどある』としか答えない」
「不思議な人物ですね、彼」
*〈MARS組織本部、最深部、都道府県:???〉
翠綺は階段を降り、右に左に迷路の様な所を抜けて、部屋を1つ2つ3つ見送り、4つ目の部屋に入る
部屋は普通の生活感のある部屋だが、右の壁を3回叩く、床を踵で2回鳴らして、左の壁を2回蹴る。
ベットが動き、隠れた穴が現れる。
ハシゴを使って降りたその先にはタブレット端末がある。
『パスワードを入力してぐたさい』とあり。
「2280」と打ち込むと『パスワードが違います』と出てくる。
も一度「2280」と打ち込むと『パスワードが違います』と出てくる。
更にもう一回「2280」と打ち込むと、壁に隙間が生まれ、段々と開いていく。
(なんでこーも面倒なのかね〜)
暗い通路を抜けると、赤い砂、赤い岩が敷き詰められたドーム状の場所に出る。
岩はそれぞれ「狼」、「イノシシ」、「啄木鳥」、「鶏」、「トネリコ(木の一種)」の彫刻になっており、彫刻の岩1つにつき、老人が1人座っている。
MARS組織は政府が運営する組織、存在しないはずの“13個目の省庁”
内閣で働いてる人間もその存在を知っている者は少ない
そして今ここにいる人物たちが、「MARS省」と呼ぶか分からないが、MARS省を牛耳っている最高幹部だ。
それぞれが、過去の大戦で指揮をとり、勝ち星を挙げた人や、ウン百億円MARSに投資した人など、MARSに大きく貢献した人間だ。
「毎度毎度茶も出なければ、椅子もないのかしら?」
(相変わらずしわくちゃの顔で怖い顔して、“老い先短い顔”て感じね)
翠綺はこの5人の老人が嫌いだ、なので毎回呼び出される度に態度悪く振る舞う。
勿論彼らはそれをよく思わない。
「学校で廊下に立たされた事はないのか?それと同じだ」
「生憎、今も昔も成績優秀なもんで」
「自分たちの方が上の立場だ」とわからせるための発言も翠綺には意味を成さない。
「で?議題は?」
「とぼけるな!貴様が世話している人間はなんだ?!現在の「生徒会長」に始まり」
「若くして「島津真拳流」の師範代になり、Aランクをも一撃で瀕死に追い込んだ島津 源馬!」
「そして存在自体が“最高機密条例”に反する、「烏」の玲渡 廻!他にも数え切れない優秀な若者、それらは全て貴様の息のかかった人間だ!」
「私が優秀過ぎて自分らの退職金が少なくなる事より、もっと心配する事が有るじゃない?ゾンビとか」
「っ!あまり調子に乗るなよ若者、貴様がもし我々(MARS)を裏切った際にはあのガキ共は貴様に味方する、軍隊を作るつもりかね?君は」
「それ以上貴様たちが力を持つと“国家反逆罪”に問われる可能性があるんだ!」
老人たちがギャーギャーと騒いでいる。
(あいも変わらず、老いぼれの声帯でよくこんな大声がだせる………)
「貴様は驕っているのだ!その“能力”を持ったが故にだ」
「儂らは政治上の立ち回りを知らん貴様を正しく導いてやろうとしているだけなのだ」
「さあ答えろ、貴様は何を企んでいる?なぜ強力すぎる若者を育てる?」
「………はぁー、鬱陶しい」
「なぁ〜に?なんだと!?」
「鬱陶しいと言ってるんだ老いぼれ共!「なぁぜなぁぜ」が絶対に帰ってくるのは幼稚園と老人ホームだけなんだよ!」
だいぶ我慢していたが、もう聞くに耐えなかった。
翠綺には悪癖があった、それは怒ると、とてつもなく口と性格が悪くなる。
「オマエら老いぼれが企んでるのは、私に後世の育成を辞めさせ、魔物退治に専念させようって魂胆だろ?!『自分の生きてる間だけ平和なら後はどうでもいい』て薄汚い考えはお見通しだっ!」
「………」
「…黙ったか、オマエらこそ“駆け引き”を知らないじゃないのか?」
翠綺は「ニッ」と笑う、嘲笑う。
「ここで黙ったら負けよ、ほら鳴けよさっきの猿みたいにキィキィうるさく。………私は、私たちMARSの隊員はロボットじゃない、オマエらの駒じゃない、オマエらの駒になんか、成るものか」
一通り、言い終わると、スッと熱が引いて行くのが分かる。
つま先は先程通って来た通路に向かう。
「待て、我らがその気になって、本気にならば貴様らの首なんて簡単に落ちるぞ」
「フッ、フハハハ、アハハハハハ!何処までも愚かだ」
高笑いする顔が、一気に氷のような冷たい顔に変わり。
「私は本気に成らなくてもオマエらの頭を粉々に出来るぞ」
“空気を操る能力”
それは翠綺が所持する能力だ。
ここに来てから能力は一切使わなかった、しかしまるで使ったかのように空気が震える。
それに怯えた老人たちは、ただ黙って翠綺の背中が小さくなっていくのを見ることしかできなかった。
*
「この度は、あなた様の高貴な計画を遂行できなかったこと」
「そして大変ご不快な暴言を吐かれたこと、我々[5大賢獣]の頭全てを下げ、謝罪申し上げます」
「それでも、足りぬのであれば」
「腹でも首でも切りましょう」
「どうかお許しを」
「「「「「MARS様」」」」」
老人たちはある一つの方向に向かって頭を下げる。
そのは翠綺ですら気が付かなかった、「王の間」。
「……良い、頭を上げよ。しかし面白く育ったものだな、あの女も。拾ってやった当時のガキの面影は微塵も無い」
「しかし!あそこまで無礼とは」
「この国にSランクの能力者は何人いる?」
「っ!…」
「そういうことだ、Sランクの者が片腕で数えられる今、彼女が職務を放棄したならば、それこそ余の計画にも、オマエらの計画にも、修復不可能な程のヒビが入るのだ」
「それに、余もあの“烏”には充分な策を練ってある故、案ずるな」
*
(ふぅー、あの場面ではあんな態度とったが私とてバカじゃない。あのまま廻をほっといてはいけない事ぐらい分かる、はてさてどうしたものか)
翠綺悩む。
(そう言えば最近廻のことばっかり悩んでないか?)
*〈廻の休暇明け〉
「休息はしっかりと取れたか?廻」
いつもの事務室に廻は翠綺に呼ばれた
「ハイ、しっかりと。それで要件は?」
「まずはこれだ」
紙を見せる。
「『玲渡 廻其方をBランクのMARS隊員に認定する』ですか…」
「そうだ、合格おめでとう。これで一旦の死刑は免れたようだ」
「良かった〜」
廻が最近ずっと心配していたこと、それは勿論自分の命のこと、やっとその心配から解放される。
「君には関東支部に移動してもらう、大丈夫だ、私の管轄内だ」
「ハイ!」
「…そして早速だが任務の知らせだ」
ぶっちゃけ戦闘シーンとかより、こう言うシーン書く方が楽しい
補足メモ:源馬は鹿児島の方で、「翠綺関係ないじゃん!」となりますが、特別講習的な感じで翠綺が鹿児島に行った際に出会い、お気に入りになりました




