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Episode 6 リアル・シンクロ

「あー、よかった! 来てくれた!」


 生徒会室へ顔を出すと、顧問の先生からそんな声があがった。真央は一礼して、「先週の議事録、持ってきました」と言う。部屋の奥には生徒会長。彼はため息を呑み込んだ。


「うん、ありがとう。それもそうなんだけど。あのねー、君にお願いがあって!」

「なんでしょう?」


 教師のにこにこ顔に、ろくでもない気配を感じつつ、真央は尋ねた。教師は「あのねー、四月に全国生徒会大会あったじゃない? あれのレポート、出してないのうちの学校だけなんだって!」と宣う。


「レポート……? 聞いてませんが」

「うん、僕が言うの忘れちゃってー。てへ! でもさー、君ならきっと、ささっと書けるでしょ?」

「いつまでですか」

「明日の朝!」


 目を見開いた真央へ、教師は言い訳するように「だいじょうぶ! いちおう、みんなが書いてくれた感想文とかあるし!」と言った。ため息をつきつつ、うなずく。


「どこですか」

「……あっ、忘れて来ちゃった! ……ちょっと取ってくるね! 待っていて~!」


 そして、真央は生徒会長とともにその場に取り残された。

 とりあえず、席に着く。互いに無言で、昨日の話し合いもどきについて触れることもない。

 そのうち生徒会長が通学鞄からスマートホンを取り出していじり始めた。……たしかに、放課後の生徒会室で用いてはいけないという校則はない。だが、髪ゴムにはあそこまで反発したのに、スマートホンは堂々と用いるのか。真央は多少呆れつつ、生徒会長のお手本にならって自分もスマートホンを取り出した。

 いくつかダイレクトメッセージが来ている。『ダブル・チェイン』のアプリを開いた。消音設定にしているので、バレやしないだろう。『ソアラ』からは『まだ来ないのー』とひとこと。


『生徒会室で軟禁されてる』

『なにそれ、どしたん』

『なんか、書かなきゃいけない文書があるから、書け、だと』

『うわー、なにそれー 時間かかるヤツじゃん』

『うん、また連絡する』


 他には、グループ(クラン)加入申請と運営からのお知らせ。申請は無言で却下。お知らせは、明日から始まる現実連動型企画(ナッジイベント)についての説明と注意点だった。


(――そういや、レイナは……)


 現実同期機能(リアル・シンクロ)を確認する。『さゆり』『レッドアイ』『ソアラ』は、それぞれログオンしており、真央の現在地からの距離を見るに、それぞれ自宅に居るようだ。その他には名前がない。真央はもう一度ダイレクトメッセージのボックスを開き、『レイナ』を選択した。


『レイナ、運営からのメッセージは読みましたか? 明日から、ナッジイベントが始まります。ナッジは仲間と連携することによって、経験値を分け合えるシステムなんです。もちろん強制ではありませんが、ぜひ参加してほしい、と私は思っています。あなたは今、伸び盛りだ。この機会を捕らえたら、きっと強くなれる』


 送信すると、すぐに既読になった。そして『レイナ』からは『自信がないんです』という一言が返って来た。


『なに? どんな自信?』

『レオさんみたいになれる自信』

『さすがに、私のレベルになるには時間がかかるよ』

『そうじゃなくて』


 真央は言葉の続きを待った。少ししてから、『ワタシ、変わりたくて』と返信があった。真央はどきり、とした。


『自分が嫌で 変わりたくて、ダブル・チェインはじめたんです でも、なにも上手くいかなくて』

『レベリングも、人付き合いも、なにもかも』

『こんなんじゃ、リアルとぜんぜん変わらない』

『もし、ナッジに参加して、なにも変われなかったら、どうしようって』

『レオさんみたいになりたいのに』

『レオさんのフレンドって、名乗るの、怖くて』

『自信ないです』


 本当に、素直ないい子だ、と真央は思った。前に雄二が「中身はおっさんかもしれん」と真顔で言っていたが、きっと自分と似たような年齢の子どもではないか、と真央は考えている。

 なぜなら――それは、真央自身が通ってきた道だから。


『自信は、私もないよ』


 真央がそう送ると、即座に『うそ!』と返って来る。やさしい気持ちになって、真央は返信した。


『毎日、後悔ばかりしている。それに、なにもかも上手く行かないと思う日だってある。現実は、仮想世界みたいにレベリングできないし、嫌な人をブロックすることもできない。だから、どうしたって失敗ばかりだよ』


 既読後、少ししてから『レオさんでも、ですか?』と返信があった。『もちろん。毎日、あの言い方で良かったのだろうか、もっと違う仕方で行動できたんじゃないか、って思っている』と返した。


『だから、なにもためらう必要はないよ。レベルとゲーム経験が違うだけで、私もあなたと同じ、迷ってばかりで自信のないただの人間だ』


 すぐに返信はなかった。けれど、『あの、リアル・シンクロを、フレンド限定にすればいいんですよね?』と返ってきた。真央は口元だけで笑って、『そうだよ』と返した。

 真央のスマートホンが振動した。フレンドが同期(シンクロ)したときに、通知が来る設定にしておいたからだ。名前を確認するために通知を見ようとしたとき、生徒会室に聞き慣れた通知音が鳴った。


(――やっべ、音切れてなかったか)


 慌ててスマートホンを確認する。しかし、ミュートになっていた。そして、ダイレクトメッセージがいくつも飛んで来た。ソアラからだ。


『ねえ、なんでレオとレイナ同じ場所にいるの』

『ねえ、今どこ、真央』

『リアルでレイナといっしょにいるの? ねえなんで?』

『どこ?』

『だれ?』

『レイナ、だれ?』


 驚いて、真央はリアル・シンクロ設定画面を見た。


『レイナ:Cu()rr()ent() Lo()ca()ti()on()


 顔をあげて、周囲を見回した。そこには、スマートホンを持ったまま信じられないといった表情で、こちらを見ている生徒会長がいた。


企画のプロット部分はここまでです

続きは考えてありますので、大型連休とかで時間がとれたときに書き上げて投稿します

読んでくださりありがとうございました



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― 新着の感想 ―
[良い点] 続きが気になります。 レイナの中の人は、なんとなくそうかなと思っていました。 この先どうなるのか、楽しみにお待ちします。
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