プロローグ
初めて書く一次創作です。ながーい目で読んでくださいね。誤字の指摘、感想お待ちしています!
チリンチリンと扉を開ける音がする。
店の店主である有銘 合歓は店の外に出て草木の手入れを始める。
合歓の見た目は至って普通の若い男性だ。暗めの茶色の髪に同じ色をした二重の目、身長は少し高め。
何か違うところがあるとすれば、合歓は人を惹き付ける。見た目で惹き付けられるのではなく、人を"引き付ける"と言った方がしっくりくる。そのままの意味だ。引き付けられるのは心に傷がある人。
「ねーむー!」
花壇にはピンクや黄色、水色など色鮮やかな花が咲いている。合歓はその花達の間に生えてきた雑草を抜いていた。
大声で名前を呼びながら飛び付いてきたのは彩蝶だ。人間でも妖怪でもない彼女はいわゆる妖である。普段は人間の姿でいるが本来の姿は名前の通り美しい蝶の姿をしている。
「彩蝶、邪魔するな」
いいじゃん、お腹すいたんだから。と頬を膨らませている女子高校生の容姿をした妖は合歓に抱き着いたままだ。抱きついたまま離れないのはお強請りしている証拠で満足するまで離れない。
元々の姿が蝶ということもありほとんど重さがない。温かさがあるのに重くなくて驚くことはない。彼女と暮らし始めて何年も経つ。だからこそ彼女の性格も把握しているつもりだ。
「じゃあ、朝ご飯にするか」
「今日は菜の花がいいの!」
「ハイハイ」
彩蝶の注文の通り、庭の隅に咲いている黄色い菜の花を摘み取る。
彩蝶は蝶の妖なので花の蜜が主食だ。
手に菜の花を持ち、店の奥に入る。平屋建てのこの建物は合歓が祖母から受け継いだもので奥が住居スペースになっている。
台所で自分のご飯の準備を終え、ダイニングテーブルに和食の料理と花瓶に活けられた菜の花が並ぶ。花瓶は彩蝶の最近のお気に入りである透き通った水色のガラスで作られたものだ。
彩蝶はぱっと蝶に姿を変え、菜の花の先にとまる。
いつもと同じ光景に目を細め、頂きますと呟いて味噌汁を啜った。
今日はどんな客が来るのだろうか。
栞と本とミルクティーのお店を読んでくださりありがとうございます!次回のお話も楽しみにお待ちください!
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