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六・五話 運命の足音

ゲームのヒロイン視点です。

乗ってきた馬車の荷台から飛び降り、おじさんにお礼を渡してから走り出す。

ああ、まさかこんなことになるなんて。楽しみすぎて眠れなかったからって、寝坊するなんてあんまりじゃない!

やっと学校の門が見えてくる。少し安心してついむせ返るが、頑張って落ち着けて門番さんに声を掛ける。


「あの、すみません!入学式の会場って……!」


「何?君新入生!?ちょっと、もう式始まっちゃってるよ!ほら早く!」


門番さんに急かされて、式場まで向かう。いきなり遅刻なんて、もう泣きそうになりながら一生懸命走る。

でも、私を待っていたのは残酷な現実。式典は終わり、私の同級生たちは皆出てくる所だった。

ああ、終わった……私の学園生活。もうきっと先生に目を付けられちゃうし、友達にも笑われちゃうんだわ……



「あれ、どうしたの?そんなところで」


「えっ?私ですか……?」


ふいに話しかけられて、振り向くと、そこにはとっても綺麗な顔をした男の子が立っていた。


「君しか居ないでしょ。新入生?入学式には出てなかったよね……?」


「あ、あの、私寝坊しちゃって……」


「えっ、寝坊?……あっははははは!寝坊したのか君!面白いね!」


「あ、あはは……」


もうっ!やっぱり笑われちゃった!耳まで暑くなるのを感じて、逃げるように顔を逸らす。


「ふふ、笑った笑った。ねぼすけさんの君はなんて名前?」


「意地悪しないでください!もう……私はアリスです。ヨプ村のアリス。よろしくお願いします」


「ふうん、アリスちゃんか……僕はオーリオン。同じ学院に通ってるんだ。いつかまた会える時を楽しみにしてるよ」


じゃあ、とオーリオン君は去っていこうとする。私は大事な事を聴き逃していたことを思い出し、急いで呼び止める。


「あの!遅刻者って、どこに行けばいいのでしょうか……」


「おっと、僕としたことが。ごめんね。まだ会場には先生が残っているはずだから、魔力検査だけでも受けておいで」


今度こそじゃあね、と去っていくオーリオン君の背中にお辞儀をする。

と、そんな場合じゃない。私は急いで会場に向かい、先生を探す。


「すみません!ここに先生は居ませんか!」


「誰だ!私達は全員教師だが、何の用だ!」


会場の中にて、作業中の人達の中から一人、怖そうな見た目の男の人が出てくる。

つい縮こまってしまい、何でも無いと逃げ出したい衝動に駆られる。でも勇気を振り絞って遅刻した事情、そして検査を受けたい旨を伝えた。


「何、遅刻しただと?だらしがない!反省しなさい。して……貴様は貴族枠の生徒ではないな。名前と出身地を言いなさい」


「ヨプ村のアリスです……」


「ヨプ村のアリス……と。確かに入学予定の新入生だな、了解した。今から特別に魔力検査を行う。付いてきなさい」


もっと怒られると思ってたら、意外とすんなりと事が進んだ。ほっと胸を撫で下ろしながらも先生の後をついて行くと、物置の奥に鎮座する大きな魔道具の前に連れてこられた。


「この星に手を翳しなさい。別に無理して力を込めたりする必要は無い」


先生が促す。遅刻者の検査を聞きつけて他の先生が数人集まってきて、少し恥ずかしい思いをしながら恐る恐る手をかざした。


するとなんということでしょう!魔道具の星の下にある、まるで空のように澄んだ宝石。その宝石の放つ光が、私の指を突き抜けて暗い部屋飾り立てる。それはまるで冷たい小川を照らす朝日、沢山の星屑を詰め込んだ宝石箱の様だった。


「まぁ……!素敵……!」


こんなにも素敵な光景を新入生の皆の分だけ見れた筈なのに、遅刻したばっかりに見逃してしまうなんて。私は入学式に遅刻したことを今日一番後悔した。

だんだんと光が止まり、私は辺りを見回す。すると何故か皆ぼーっとしていて、心がここに無いみたい。

もうっ、もう入学式で見飽きたのかもしれないけれど、私の光にも反応してくれても良いじゃない。

唯一ぼーっとして無かった私を連れてきてくれたちょっと怖い先生に視線で感想を求めてみる。しかし先生は全然気付かないみたいで、目を合わせてすらくれない。私が不満げに膨れていると、先生は手元の紙に何かを書き記し終わった様で、やっとこちらを向いてくれた。


「ふむ、光の魔力か。中々優秀そうだな」


「え、私優秀なんですか?」


「ああ。かなり素質がある。もし貴様が貴族なら間違い無くAクラスだった。まぁ平民はDクラスからっていう決まりだがな。頑張って勉強して、三年後のクラス分けでAクラスを目指しなさい。頑張り次第では爵位も夢ではないからな」


先生は私をポンポンと撫でる。少し照れくさくなり、先生の手を掴んで下ろす。先生の手を握りしめたまま勢いで訪ねる。


「あの、先生はお名前なんて言うんですか?」


「私か。入学式でも自己紹介はしたが、仕方がないな。アルフレッド・サフィルアベイユ。宮廷魔術師で学院の魔術教師もやっている。今までは上級生にのみ授業を持っていたが、今年は特別に一年生の担任を任される事になっている。貴様の担任になるかは分からんが、まぁよろしく頼む」


「はい!頑張りますっ!」


「うむ、そしてこれが寮の鍵だ。西2号館の105だ。分かるか?」


「えーっ、と」


「ここを出て真っ直ぐ進み、左に曲がれば直ぐだ。一階の扉を順に確認すれば辿り着ける。寮は全室相部屋だ。恐らくルームメイトが先に待機している筈だから、喧嘩せず仲良くするように」


寮の鍵は沢山宝石が付いていて、一体幾らするんだろう?なんて考えてしまう。


沢山の失敗もあったが、遂に私はこの学院の生徒になったんだ。まるで異世界の様に全てが目新しく、これからの学院生活へ想いを馳せる。

きっとこれから沢山の楽しい事や面白い事が私を待ち受けている。にこにこ笑顔に膨らんだ夢を胸に抱えながら、私は自分の寮に足を運んだ。



ゲームのシナリオはこの入学式の後、三年間の研鑽期間があって上級学級に入ってから始まります。

またたまにヒロイン視点を入れると思います。

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