↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/16

第五話 異世界

これは、どういう事だ……?」


謎の右手を拾い、先生は呟く。

その断面は破裂したように裂けており、しかし肉が結晶化して血は流れ落ちていない。

気付けば周りの血痕も、魔術素子によって結晶化し始めていた。


「……恐らく、別世界に居た人類の召喚には成功した。しかしやはり、世界を超える時に巨大な力が掛かったのだろう。この手の持ち主には、申し訳無いことをした」


私はどんどん結晶化が進み、形を失っていくその右手を観察する。長い爪をピンクに塗り、小さな石を散りばめてある。そして一切肌荒れのない綺麗な手からは、水仕事や戦闘訓練をしていない事が予想できる。

たしか、前世の私もそんな手をしていた。


先生はサンプルとしてその右手をしまい、私達は飛び散った痕跡品を探し始めた。



「一通り集めたか。衣服と思われる物の切れ端と、小さな人形、そして謎の板と……他に参考になりそうな物は残ってないか?」


「はい、それで全部だと思います。土に埋もれている物も恐らく全て掘り出したと思いますし、大体殆ど結晶化してしまっていましたが……」


「まぁ、この板だけでも異世界の民を召喚したことを証明する材料になるだろう」


……見覚えのある板だ。というか、スマートフォンだ。既に故障して電源は付かないが、裏に林檎の付いた正真正銘のスマホだ。

可愛いくまのストラップが付いていて、一緒に散らばっていた衣服の残骸から推察するに、彼女は高校生だった事が分かる。


若くして異世界に落とされ、何も分からぬ間に死んでしまうなんて。

そんな哀れな娘に、しかし痛みを覚える前に即死だっただろう事が不幸中の幸いだった。ゲームの事を知っている人間が来なくて良かった。と考えてしまう自分が、とてもおぞましく思えた。





家に着いて直ぐ風呂で汚れを落とした私は、ベッドに腰掛けながら今日の事、そして前世の事に思いを馳せていた。


異世界召喚を可能にする星。それは夢のように思えると同時に悪魔の発明な気がしてならない。先生が悪用するとは思えないが、彼は学者。発表せずには居られないだろう。そして我が国がどう使うかは、その時にならないと分からない。


きっと大勢の人間が犠牲になるだろう。それだけの可能性がある、そう先生も言っていた。

なら秘匿すればいい、とは、私は言えなかった。先生を止めるのは不可能だと確信していたし、私に止める権利があるとも思えなかった。


手元にある、犠牲になった娘のストラップを眺めながら、今日の事を思い出すと高揚してしまう自分の存在を再確認する。


私は、あの、おぞましい実験が楽しかったのだ。迸る魔力、絶大な力、世界を変える神秘に、私は運命を見出してしまった。

これなら私の人生を変えられる。

世界が変わる。


これじゃあ、本当に悪役令嬢だ。

世界の敵、聖書の予言通りの存在になってしまう。

ベッドに倒れ込み、くまを握り締める。

私は運命を変える。それはゲームだけじゃない。この世界に予言された運命からも。


運命から逃れるんだ。


くまを解放し、私は目を瞑り無理やりにでも意識を闇へと葬った。





※※※※※※



「召喚術式について、やはり上に報告する事にした」


先生は朝顔を合わせるなり、私を呼び止めた。

先生の話を、特に驚く事もなく聞き届ける。


「しかし、公表はしない。これは、非常に危険かつ、人道に反する物だ」


「え……」


「魔術協会のロードにのみ報告する。決して公表しないように、と」


先生は決意の固まった表情でそう告げる。

それは自分の実験成果を放棄し、譲渡するのと同義だ。


「本当によろしいのですか」


「ああ、もう決めた。報告する以上、そんなことで罪から逃れたとは思わんがな。しかし一般に出回っていい魔術では無い。ロードも危険性が十分分かれば禁術指定にしてくれるだろう」


私は俯きながらそれを聞き届ける。

先生は今日から直ぐにでも王都に向かう事になった。帰りは私の入学に間に合わないそうなので、実質昨日のあれが最後の授業になる。

先生から、主要星子、補助星子をそれぞれ効果が確認出来る様になるまで刻んで覚えるという課題を出され、専用の鑿を渡される。


「これは、本来入学直前に渡すつもりだったんだがな。お前の為に作った専用の鑿だ。硬い石にも精密な星が刻める魔道具に加工してある」


「ありがとうございます」


「あんな事があったが、お前はただ見ていただけだ。気にするな。もし鑿を握るのが怖ければ、しばらくはペンで描いて覚えるだけでもいい。少しづつ慣れていけば、それで良い」


「はい。ありがとうございます、先生」


先生は、セバスに宜しく伝えると、馬車に乗って王都に旅立って行った。


それから私の授業はセバスが引き継ぎ、専門的な質問は出来ないものの課題の監督をしてくれた。

特に何事もなく順調に習得していき、先生に貰った課題をクリアし、セバスにもお墨付きを貰えるまでになった。

そして遂に、私は入学の日を迎える。




批評感想お待ちしております。

分からない所、キャラの設定等についてもぜひ質問してください。

あとマイページにTwitterのリンクがありますので、是非フォローお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。