法衣貴族の件
貴族が冒険者やってるわけはこれかと。
ちょっと不思議に思ったので調べて見たんですが。
「なろう」では異世界の王国がよく出てきますし主人公や周囲の人達は貴族だったりなったりする事が多いと思います。
ゲームの影響なのかその王国は西洋風で、貴族制度もそっちです。
そこに出てくる「法衣貴族」というものは「土地を持たない爵位持ち」という便利な存在で、例えば貴族でありながら冒険者をやったり無職で年金生活していたりする事があります。
で、現実の貴族制度をググッてみたんですがそれに相当するものは「法服貴族」と呼ばれるもののようです。これはヨーロッパの貴族制度にあるもので、要するに土地を持たない貴族です。
そもそも貴族というものは爵位の前に土地があるというか、国王(主権者)からその土地の所有権を認められてなるものだったようです。爵位は土地についているので人にではありません。
よってその土地を支配(所有)する人だけが爵位を持っていて、代替わりすると爵位は新しい人に移動します。これが世襲貴族です。別に血縁だとかで世襲するわけではなく、あくまで土地の所有権保持者です。だから養子とかでもいいですし爵位持ちは一人しかいません。
世襲貴族家と言えども本物の「貴族」は当主(爵位持ち)だけで、その家族は「貴族家のもの」という位置付けです。また本人も爵位を委譲すれば貴族ではなくなります。
世襲貴族(土地持ち)はその土地から上がる収入の他、土地およびそこに住んでいる臣民自体が財産です。臣民から税金を取るのと収穫などの収入から国(国王)に税金を払います。
その土地における裁判権や役人の任命権も持っているのでそっちからも(笑)収入があったりして。でも一方、警察や税務署および今でいう県庁的な役所を運営する必要もあって支出も大きく責任もあります。
楽が出来るわけではないと(笑)。
一方法衣貴族(法服貴族)ですが、こちらは土地を持たずに貴族になったというか、国王から認められた人(個人)だったようです。認められ方は様々ですが、基本的には王政府で重要な役割を担っているとか。
要するに政府の偉い人ですね。「なろう」には侯爵家の当主などが宰相なんかをやっているケースが多いようですが、それ以外の平民などが高級官僚になって実績を上げると貴族に叙任されたりします。
つまり勤め人です。「法衣(法服)」はサラリーマンとしてそういった服を着ている事から来ているからのようです。月給取りなので収入はあるのですが財産などはあまり多くありません。
そして、当然ですが仕事を辞めたり首になったりしたら無職で無収入になります。爵位については名誉爵位という形で名乗ることもあったみたいですが、そうすると格式に合った生活をしなければならないので大変です。
まあ、現代日本でも高級官僚は退職後に関連団体に天下りしたり名前だけ貸したりして収入を得ているみたいですが、それと似たような形態だったと思われます。
そこで問題です。
「なろう」の異世界物で時々「貴族だから国から年金が出る」みたいな表現があるので気になりました。
これはどうかと思います。
貴族はどっちかというと国に税金を払う側なので。
世襲貴族なら土地持ちなので年金なんか出ませんし、法服貴族は辞めたら無収入です。
もっとも現代でも企業年金や恩給といった制度はあるのでそれかもしれません。
また世襲の場合は国が運営する事業の優先株みたいなものを持っていれば配当があるでしょう。
ですが法服貴族ってサラリーマンなんですよ。
少なくとも働いてないとお金は貰えません。まあ「長年の貢献を讃えて」みたいな形で恩給はあるかもしれませんが、それは「長年」働いて「貢献」した後です。
貴族になれば国から無条件でお金が貰えるわけではなく、むしろ爵位持ちは何だかんだと金を取られかねません。大商人が下級貴族にされるのはそれ目当てだったりして。
ああ、勲章に年金がついているという話もありますが、それも怪しい話です。少なくとも日本の勲章には年金ついてません(笑)。
あれは一時的な栄誉の印であって将来を保証するものではないので。
だから没落貴族が出るんだよなあ。