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神様じゃないので。  作者: 彩華
2/2

いしのそつうをためしてみよう

人物

アウグラルスイ 可哀想なやつ。一応偉い

グレイ ヤバイやつ。魔法使い


女神様 すごい存在



めちゃくちゃ興奮しているツンツンとした銀髪君を隣の坊ちゃんがコチラをチラチラ見ながら多分、諫めているんだろうか。長年培った観察眼から恐らく主従、しかも主人がリードを握れていないタイプの。


『ー、ーー?ーーーー……!』



残念ながら今の時代の言語は分からない。いつだったかはまだ頼りになった言語翻訳も時代の流れによるアプデはしてくれなかったから悲しいものだ。それよりもこんなに存在する事自体が想定外だったんだろうけども。

困った。とても困った。意思の疎通なんて暫く試みた事がない。


「ねぇ」

『ーーー!ーーー!!ーーー?ー!』


ガクガクと顔面蒼白な一般的反応をする金髪のお坊っちゃんと興奮しながら私に、声も耳に入らなさそうなお坊っちゃん両方に何か訴えるこの子の傍から離れるのも忍びなくてかれこれ暫く突っ立っているのだけど、私の一挙一動に真逆とはいえ反応する二人をいつまでも足止めしている訳にはいかないんじゃあなかろうか?



「ここ、汚いからこっちにおいで」


陽も傾いて来た。掃除も済んでないここは不衛生だ。どうせ言葉は通じてないだろうけど声を掛けて蛍火のように灯りをいくつか出してついて来るように促す。久々に素足で踏み締めた地面と草の感触だけはどれだけ経っても変わらないらしい。



『ーーー、、ーーー?ーーー。ーーー』

『ーー。ー、ーー。』



ついてきてくれたら嬉しいなあ、くらいの気分だったけれど銀髪くんは嬉々として、金髪くんは恐々と銀髪くんを盾にするようについてきてくれた。

適当な森の木々を左右に避けさせて誰にも見つからず騒がれない湖のほとりまで、自然を操る魔法は妖精も使うとは言ってもよくついてきてくれたと思う。そこで適当な猪の首をサクッと落として血抜きをして、火種を作って焼いてあげて。二人は最初こそ戸惑っていたものの銀髪くんが豪快に食べ出すと恐る恐るというように金髪くんも手に取ると夢中になって食べ出した。随分と薄汚れているしワケしかなさそうな二人は予想通りに空腹だったらしい。いっぱいお食べ。


気が休まらないだろうから私は少し離れた所に腰掛けて物思いにふける。

 



「なあアウグラルスイ、お前はさ、女神様の言葉分かってんじゃねえの?」

「ぐっ!」


図星だ。隣の王子様は彼女が歌うような声をかけて来るたびにぎょっとしていた。あれは思い当たる節がある時の反応だ。追われ続ける日々で久々の肉をたらふく食っているととびきり不味い薬草を口いっぱい押し込まれたような顔をする。


「……全部じゃあ、ないが」

「やっぱな!」



女神様はこの開けた湖の縁に腰掛け豊かな長い髪を揺らしながらほのかな灯りの魔法で物語の中のように視界いっぱいを照らしている。月明かりの下で黄昏と暁を溶かした髪も、睫毛までも神秘的に存在している。その瞳は月を見上げていて、爪先は優雅に湖を撫でている。



「いつ心変わりして殺されるかも分からないんだぞ」

「そんな恨みがましく言われてもあの先回りしてた大軍を滅ぼしてくれたおかげでお前も生きてるし、こうして女神様は食事まで振る舞ってくれる。なんならもう死んでてもおかしくないんだ、幸運の至りだろ?」


「能天気め」



意思の疎通は不可能と言われ遥か遠き時代にこの世界の罪の証として存在すると言う神々。その中でも暁の女神とも、黄昏の女神とも呼ばれる存在は時に慈愛に満ちたとも暴虐の限りを尽くしたとも語られ魔道に通ずるものは必ず名を知る女神。古の禁術で生み出されたと、次にその禁術を行使しようとすればかの女神は怒り世界を再び白紙に戻すと伝承されし存在。人はその存在を炎に例えて戒める。


「女神…もっとドワーフみたいなのを想像していた。聖典だのその挿絵だの、醜く描いて恨まれてはたまったもんじゃあないからな」

「そういやお前はそう言う奴だったな」

「魔法バカの貴様にだけは言われたくないな。いいかグレイ、年齢に見合わない美しさを持つ女というのは人生で最も避けるべき存在だ」

「あぁ…」


まだ青年とも呼べる歳とは言え王子、いや元王子だったアウグラルスイの言葉は重い。儚い美少女と思っていた婚約者が自分の何倍も生きていた上で度をすぎたロマンチストで重過ぎる愛情たっぷりで周囲から女を一掃し、男は傀儡にし、嫌味を叩いた隣国の外交官を微笑みをたたえたまま外交の席その真っ只中に魔法でミンチにしたとしても。



「魔法を使う、歳上の美人は、地雷だ。いいな?」

「それはあれだろ、お前が何にも知らずに箱入り魔女様に夜会で声なんてかけたからだろ?自業自得じゃん」



絵に描いたような悪人面のせいで散々魔法使いの中でも散々な言葉を浴びながら生きてきた「バケモノ」が瞳孔と共に正論を開く。

そも俺と共にこのふざけた逃避行に同行しているのも研究所すらあの女の干渉でまともに機能しなくなったからだ。いかにも適当に切られた髪に獣のような瞳が獰猛にこの俺を脅してくる。恐らく無意識だろうが俺はコイツが空恐ろしく、だからこそ利害の一致している内は信用できる。その狂気を。


「……古語だ。貴様らの使う魔法に関する古語とは違う、王家に伝わる長ったらしくややこしくうんざりするようなカビの生えた文法……と、似ているとは思ったがそれが正しく翻訳出来ているとは自信がない」

「王家か……チッ。じゃあこれから翻訳頼むぜ!王子様」


舌打ちから一転して眩い笑顔で言われる。俺はまだ死にたくはない。死にたくはないから殺して記憶を奪うような事をしそうなグレイの言うことを聞くことにした。



「女神よ」

「!」


急に話しかけられて心底驚く。恭しく膝をつく金髪くんは私に向かって、私のわかる言葉を発したのだからこんなに興奮する事があるだろうか!?


「無礼を、許してください。話す、は上手くない」

「もちろん」


ドキドキと胸が高鳴る。誰かと会話をするのは久々でソワソワする。祈るような姿はちょっと可哀想だけど動物とでもなく人間との穏やかな会話なんて私にとってエリクサーより価値がある。


「私たちに敵意はないれ、です。さっき、は……助けてくれてありがとう」

「どういたしまして。結果として君たちを助けられたなら、嬉しい」


ゆっくり、聞き取りやすいように心掛けて話す。一生懸命言葉を捻り出す姿が見た目よりも小さな子供に見えて微笑ましい。


「私、名前はアウグラルスイ。彼の名前はグレイ」

『ーーー』

「アウグラルスイ、グレイ」


二人の名前を舌で転がすと揃って目を張るのが可愛くて嬉しくて。思ってたよりも私は寂しかったのかもしれない。


『ーーー』

「彼は、彼は……あなたがだいすきです。言ってる」

「まぁ」

『ーー?』

『ーー』


迷って迷って出てきた言葉のニュアンスに迷ったのはわかる。それでも私を怖がらず純粋に好かれてるのは嬉しい。


「おいで」


二人を魔法で引き寄せると抱き締めれば息を飲むのがわかる。心臓の音が二つわかる。

可愛くて、可愛くて。私が180と少しだから190センチくらいの二人を抱き締めるのは変かもしれないけれどそれでも。


「ら、ぁ…ぁいちゅき」

「!?」


悪人面の男の子が決死の表情で言ってて陥落しない同胞が居るなら見てみたい。少なくとも私はもうこの二人が可愛くて仕方なくなったし、どうせする事がないからついてくと決めた今決めた!


まとめ

最近の若者言葉が分からない女神様は意思の疎通が出来た事に舞い上がって見た目も好みだし付いていく事にした。



オマケ 身長


女神 現在185

グレイ 192

アウグラルスイ 181

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