始まりのはなし
何もかもが見切り発車。恐らく女神と魔法バカの恋愛物になるかなぁという感じです。暇潰しになれば幸いです。
「」と『』では使う言語が違います
俺は今、何度なく綱渡りな人生の波乱の中でも最もヤバい場面に居る。
「スッゲェ!スッゲェ美人!!なあアウグラルスイ!」
「巫山戯るな!!俺はまだ死にたくない!俺の生存には貴様が必要なのだ!つまりお前は失えない!だから勝手に好奇心で死神を呼び寄せるな!!」
小声で怒鳴るなど無駄な事をしてもああダメだ向こうは此方へ視線を向けて捉えてしまった。「我々二人」をその瞳に映してしまった。認識されたら最後、その無機質にも朧気にも見える存在に本能が警鐘を鳴らす。冷や汗は滲むのに口の中はカラカラで、隣のはしゃぐバカが一等どころか特等のイカレた魔術使いである事をこれでもかと突き付けてくる。
黄昏色の瞳に暁色の髪は物事の終わりを文字通り司る終焉とその真逆である物事の始まりである起源を織り交ぜたような色で此方を縫い付けていた。俺たちの追手であっただろう国の、俺の国の色で固めた騎士たちを死屍累々に地面に折り重ね敷き詰めて。
返り血の赤が恐ろしいほど似合いながらもその身に纏う赤を引き立てる程度にしかならない、そんな存在を。
「死んだ……」
小さな呟きを拾った。突然恐慌状態の人間に襲われるのもそこそこ慣れたもので、爪先程度には申し訳なく思いながらも蹂躙していく。魔力を捏ねて作った三又の槍で切り裂いていく。せめて痛みを感じないようにまとめて一振りで呆気なく幾多もの命が散っていく。彼らと言葉が通じなくなってどれくらいの時間が経つだろう。そんな事をぼんやり作業的に片付けた頃にその声は聞こえた。
灰色に近い銀色の髪にかなりの魔力の匂い。の、となりに居た金髪で可愛そうなほど青ざめた碧眼の、身なりのいい魔力の質。終焉の匂いがする金髪と。私を、私をその紫の瞳を輝かせる三白眼の二人。俗っぽく言えば
『噛ませで負け犬の匂いにと使い捨てられがち三下系属性……』
推せる。と
これでも私は一等序盤に物語から退場するような三下下っ端系や報われない系男子がめちゃくちゃ好みなのだ。
今回のまとめ
逃げた先に大軍よりおっかない奴がいた。