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HONEY  作者: sora。+*
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第1章‐5

「そういえば、若葉、部活どう?」

「ぶ、部活? どうって言われても…」

 …どうなんだろ。つまんないし、辞めたいと思ってる。けれど逃げるのは嫌だから続けてるだけ。…そんなこと、言えるわけないじゃん。

「まあまあ…かな。陸斗は?」

「ん? 俺? まぁ、なんていうんだろ…いい感じ。大変だけど、楽しいし」

 知ってるよ。いつも見てるし、噂にも聞いてる。外周をしてる時に、陸斗の表情を見た。辛そうだけど、すっごく楽しそうだったもん。充実してる! っていうか。そんな感じに、見えた。私とは大違いなんだよね…。

 結局それから会話が進むこともなく、私達は家の前で別れた。そして家に入ってお母さんが「おかえり」と言うのも無視して、私は2階の自分の部屋に直行した。そして、制服から普段の服に着替える。その後、ベットに思いっきり飛び込んだ。…もう、バカバカバカ!私の大馬鹿野郎。せっかく、話せる機会がやってきたのに。ばかやろー!!!


 …ってか、その気になれば話せるんだよね。今すぐにだってまた話せないことはない。昔みたいに陸斗の家に行けば話せる。隣の家だし。しかも、それが無理なら電話って手もある。陸斗の家の電話番号知ってるし。…携帯のほうは知らないけどね。

 それに、学校でだって本気になれば話せるはず。ただ、勇気がないだけ。…なんで、話しかける勇気がないのかな。隣のクラスなのに。すぐそばなのに。朝、陸斗がうちのクラスに来たときに「おはよう」と言うだけでもできないことはないのに。意気地無し。私の、馬鹿。

 私ははぁと溜め息をつくと、ベランダに出た。風がひゅうと吹く。そして、髪の毛が顔にかかる。

 すぐそこには川がある。とっても綺麗な川が。今も、夕日が水面にうつってきらきらと輝いている。

 そういえば昔、陸斗と一緒にあそこで遊んだな…。川の向こうにある公園でも、よく遊んだ。日が暮れるまで遊んで、汗びっしょりになるまで駆け回って。お母さん達にもときどき怒られたけど、それでも思いっきり遊んでた。泥まみれになって、川の中ですべってころんだりもしたけど、すべていい思い出。…本当にあの頃は、よかった。あの頃の方が、すっと良かった。そう思うと、思わず涙があふれた。ふいてもふいてもこぼれおちる涙。止まらない、止まらない…。

 ねぇ、陸斗。私、こんなにもあなたのことが好きなの。ねぇ、教えて。あなたは私のことどう思ってるのか…。知りたいの、私、知りたいの…。

 …けれど聞けない。いつまでたっても、臆病な私は動けない。そう思うと、さらに涙は零れ落ちた。私の目から流れた水の粒は、とめどもなくぽた、ぽたとベランダの手すりに当たっては砕け散っていった。


 しばらく泣いた後、私は部屋に入った。長い間ベランダにいたせいか、体が少し冷えている。11月の風は、少々こたえた。けれども、なぜか心は少しだけすっきりとしていた…。





「はぁ…っくしょん!」

「もう、若葉ったら。あんな薄着でベランダに長いこと出てたら風邪ひいちゃうに決まってるでしょ。何考えているの? 今月、期末テストがあるじゃないの」

「…だって、ひかないと思ってたんだもん」

 次の日。熱、38.3度。私は風邪をひいてしまった。

「馬鹿だなー…」

 私は深く溜め息をついた。本当に、愚かかも。約2週間後には期末テストがあるから、この時期はあんまり学校を休みたくないのに。そろそろ真面目に通知表のことを頭に入れなきゃいけない。来年には、受験生なんだから。…あ、これは考えるだけで憂鬱になっちゃうから、考えるの、やめよう。

「とにかく、今日は学校は休みなさい。お母さんがちゃんと連絡しておくから」

「はーい…」

 あーぁ…。せっかく春日に陸斗のこと報告しようと思ってたのになぁ…。まぁ、38.3度もあったら仕方ないか。もともと平熱が35度台の私にとって、38度と言うのは結構つらいものだし…。

「は、は…はぁっくしょん!!!」

 それにしても、風邪なんて久々にひいちゃった。健康だけは自慢だったのに…。意外だって言われるけどね。みんな、私はか弱い女の子だと思ってる。か弱くて、おとなしくて、地味で平凡そのもの。…だいたい、当たってるけどね。

 でも、今年は欠席日数0を目指してたんだけどな。ん…。風邪薬のせいか、眠気が…。

 1分もしないうちに、私は熟睡していた。


「若葉、若葉!」

 ん…? 誰?

「若葉、ちょっと起きなさいって」

 …あぁ、お母さんか。何でそんなにゆさゆさして起こすの…。頭痛いのに…。

「若葉、お見舞いに来てくれたわよ」

 お見舞い? 千尋? それとも春日? 寝ぼけてる頭では、正常な働きができない。

「ん~…」

 ちょっとだるい体をがんばって起こし、私は部屋の扉のあたりにいる人物を見た。そして、その瞬間凍りつく。

 それまでは目がとろんとしていたけど、一気に覚めた。いや、覚めないほうがおかしいって、この状況では。

 …お母さん。何で入れたのでしょうか? この人を、何で入れたのでしょうか? なんでいきなり私の部屋にまで連れてきちゃうのかな? まぁ、お母さんなら入れてもおかしくないかも…。お母さんって、意外と天然で、空気が読めなくて鈍感なところがあるし。

 今、正直一番会いたくない人…つまり、安西 陸斗が、そこにいた。

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