No.6 足掻いてやる
「『天国と地獄ゲーム』は、”生き返り”を賭けたーー最後の一人になるまでのデスマッチです!」
リバティは私の腕を掴みながら、薄暗いアウトレットモールの中を、身を隠しながら進んで行く。
月明かりだけが頼りだったーー
売り物のぬいぐるみを、何度ラビットエッグと見間違えたか分からない。
「ねぇこんな暗い所だと、いつラビットエッグに出会すか分からないよ……?」
「敵はあのウサギだけではないと言っているでしょう。これはウサギに喰われないよう逃げ回るゲームですが、制限時間という概念が無い以上、喰われるより前に他のメンバーを全員始末した方が早い……そう考える連中が必ずいます」
「……うぅ」
リバティの言うことは最もだった。
私も、早く他のメンバーの脱落を願っていないと言えば嘘になるーーそれが本心だった。
「……まぁ確かにレナの言う通り、それでウサギの餌になってしまっては元も子もありませんがーー」
そう言いながら銃をクルクルと手先で回す。
「……へっ?」
次のリバティの行動は、あまりに唐突すぎるものだったーー
銃口を真っ直ぐこちらに向け、ニコッと笑顔を見せていた。
私はリバティにとって、他のメンバーと同様ーー”邪魔な存在”。
ーーやっぱり私を騙したの……!?
震えて声が出せなかったーー
そんな時ーー
「レナ……頭を下げなさい」
「えっ!?」
リバティの声に咄嗟に反応した私は、言われるがまま頭を下げてしまう。
ズガン!!
激しい銃声の後、私の頭上を高速の弾丸が風を切る
振り返ると弾丸に貫かれ、弾けたラビットエッグの姿があった。
「嘘っ……!私また……!」
ーー助けられた。
乱暴なやり口とは言え、リバティ・エンフィールドによってこれで2度目となる助太刀だった。
肩を落としていると、リバティは再度私の腕を掴み、まるで踊っているかのように私を引っ張り回す。
「ボサっとしないでください。それではウサギの餌以下です」
ズガン!!ズガン!!!
窓や商品棚の上ーー様々な死角から、次々と新たなラビットエッグが、腹部の口を広げて襲って来た。
リバティは社交ダンスのように私を振り回し、迫り来る敵を四方八方撃ち抜いていく。
「きゃっ!きゃぁーっ!」
目を回している私には、声を上げるしか出来ない。
最後に私をグッと引き寄せたリバティは、残り一匹を撃ち抜いて、拳銃のマガジンをサッとリロードし終えた。
「誰だろうと死ぬのは怖いです。ですが、泣き喚くのは後にしましょうーー何もせずにただ泣いているだけでは、それが何れ後悔に変わります」
リバティは私の動揺した表情を見て、ニコッと笑う。
思わず顔の近さに赤面してしまったが、すぐに突き飛ばして首を左右に振った。
ーーな、何こんな奴に顔赤くしてるの私は……!
リバティの言う通り、泣いてばかりもいられない。
私は私だけの力でこのゲームに勝利しなくてはいけないのだ。
先程リバティが言っていたーー
『大人しく僕に利用されて下さい』
こいつは私を、自分が勝つために利用しているだけ。
けれどこのゲームは誰か一人しか勝ち残れないデスゲーム。
ーーだったら私だって、こいつと同じことをしてやればいいんだ。
「分かったよ……!足掻いてやる……!」
ママにもう一度会うんだ……!
その為だったら、逆にこいつを利用する……!
覚悟を決め、歩きだそうとしたその時ーー
「うわぁぁぁ!!!た、助けてくれぇぇえ!!!」
建物の外から、何かが裂けるような大きな悲鳴が聞こえて来た。




