No24 最強の異能力
「遊びは終わりよおチビちゃん!私はもう……負けない!!」
呼吸を落ち着かせて、何度も心の中で自分自身に言い聞かせていた。
ーー大丈夫。大丈夫よ私……私は勝てる……!こいつに勝てる!
刀を構えてマイル目掛けて駆け出した。
「人間風情が俺に勝とうって!?」
マイルは相変わらず余裕といった笑みを浮かべ、私が向かって来るのを待ち構えていた。
先ほどブルーベルから託されたパスポート。
そこには”霊力を凍らせる霊力です”と書かれてあった。
しかし実際に私が目の当たりにした彼女は、霊力だけでなくありとあらゆる物を凍らせて戦っていた。
ここでパスポートに書かれた霊力説明に”矛盾が生じる。
ーーこの仮説が正しいなら……!
私のパスポートーー”霊力を取り消す霊力”というのもおそらく……!
私は大きく踏み込むと同時に、高く跳び上るようにマイルを襲った。
「はぁぁぁ!!」
マイルがニシシと笑い、『ライトニング』を使って瞬間移動。
背後に現れ、私の身体を大鎌で大きく二つに斬り裂いた。
「じゃあなバカ女!!」
上半身と下半身で真っ二つにされた私を見たリバティが、大声で名を叫ぶ。
「レナー!!!」
私は消えそうになる意識の中、最後の力を振り絞って自身の胸を掴んで願いを叫んだ。
「わ、私の傷を取り消して!『キャンセル』!!」
刹那。
願いが力に変わるーー
マイルに斬られた事実が取り消され、私の傷が綺麗に無くなった。
私の霊力が成功し、マイルの表情から笑みが消えた。
「何!?」
「よっし!思った通り!!私の勝ちって言ったでしょ!!」
空中で刀を持ち替えると、後ろにいるマイルの右腕を斬り落とす。
バランスを崩したマイルが先に地に倒れ、私はスタッとゆっくり着地した。
キョトンと口を開けていたリバティに、ブルーベルのパスポートを見せて説明した。
「これは別の参加者からもらったパスポートなんだけど、ここにほら、”霊力を凍らせる霊力”って書いてあるでしょ?でもその人、霊力に限らず色んなものを凍らせてた」
「……なるほど、あの氷山はこの霊力によるものでしたか」
ジェットコースター付近で見かけた巨大氷山のこと。
「だから私、あいつが私たち参加者に配布したパスポートには、一部嘘が含まれているんじゃないかって思ったの。ドンピシャだったわ」
私のパスポートーー”霊力を取り消す霊力”にも同じ事が言えた。
「……嘘じゃないんですよねこれは。事実、レナは霊力を確かに取り消せます。しかし、取り消せるのは霊力に限った話じゃない。まんまと踊らされました。予め”霊力を”と言っておくことで、こちらの思考を制限し、主導権を握る手法です。これはメンタリスト……いえ、詐欺師がよく使う技です」
主催者であり、プレイヤーでもあるマイルにとって、自分に都合がいいようにパスポートを作り配布した。
それを見破った私たちは、これで初めて五分の戦いができるわけだ。
「調子に乗るな!!」
左腕を斬られたマイルだったが、怒り狂ったように大鎌を振り回しながら突っ込んで来た。
瞬間移動で私の目前に近づき、大鎌の柄を使って殴り飛ばす。
けれど私はーーすぐにそれらを取り消すんだ。
「私のダメージを取り消して……!『キャンセル』!!」
パッと景色が変わり、マイルに殴られる直前に位置に戻る。
私は、大鎌を持っていたマイルの右腕を日本刀で切り落とす。
ザッ!!
「ぐわぁっ!!」
もがき苦しむ両腕を失ったマイルだったが、私は躊躇なく追撃に出た。
首を狙うように刀を振り、マイルははっと反応して体制を深く落として回避する。
回避したーー
ーーけれどごめんね。それも取り消すから。
「敵の回避を取り消して!『キャンセル』!!」
回避が瞬時に取り消されたマイルは、元の体制に戻り、私は身体を回転させて再度日本刀で首元を狙う。
「あぁっ!!」
マイルは後ろに体制を逃がし、全身の力全てを使って私の刃を回避する。
これには回避できたのだが、バランスを失ったマイルは足元をふらつかせ、今にも転びそうだった。
全力の回避だったのだから無理もない。
ーー私は全力で刀を振るい、あなたは全力でそれを避けた。うん、だったら私は今の攻撃を無しにしよう。
「私の攻撃を……取り消して『キャンセル』」
私だけパッと剣を振る直前の構えに戻り、ふらつくマイルを前にして最後の攻撃に切り替えた。
相手の懐に飛び込み、鋭い斬撃で突き上げるーー
ズダっ!!!
マイルの身体を真っ二つに斬り裂いた。
「うがァァァァ!!!」




