No22 電光石火
「お兄ちゃん……!待っててね……!今行くから!!」
シアタールームを飛び出した私は、リバティを助けるべく全速力で駆け抜けていた。
メリーゴーランドの中を掻い潜り、ゴーカートよりも速い駆け足で向かう。
角を曲がった所で、血だらけで倒れるリバティを踏み付けるマイルの姿を発見した。
今にも、大鎌でトドメを刺そうと振り上げていたーー
私は猛スピードで走りながら、抜いた刀を投げつけた。
「私のお兄ちゃんに手を出すなー!!」
日本刀は高速回転しながら相手を襲う。
すぐにこちらに気がついたマイルは、大鎌を切り替えて日本刀をはじき飛ばす。
「くっ!なんだ!!」
カキンと刀が弾かれたが、大きく飛び上がった私はそれを空中で掴みとるーー
そして刃を真下に向け、落下と同時にマイルの身体を狙った。
「そいつからーー」
ドッ!!
マイルの首下に刀を深く突き刺した。
体制を崩し、その隙に私は剣を抜いて、勢いよく遠くへ蹴り飛ばした。
「ーー離れろ!!」
蹴られたマイルは、弧を描くように宙を舞い、近くの壁に激突する。
私はすぐに傷だらけのリバティを抱き抱えた。
こんな時でもリバティは辛い顔を見せずに、笑顔で私に強がりな台詞を言う。
「……何故、戻ってきたのです……!?」
今までの私なら、喧嘩口調で言い返すところだ。
けれど重症の兄を見て、溢れる涙を抑えられなかった。
ーーこの傷は、私を逃がすために……!
「うるさいバカー!!こんなになってまでカッコつけるな!!」
「酷い言われ用ですね……レナにバカと言われるなんて、うんこに臭いって言われるのと同じで心外です……」
「人を排泄物と同じにするなー!涙返せバカ!!」
前言撤回。
急いで涙を袖で拭って、抱き抱えていたリバティを振り落とす。
そんな私たちを見ていたマイルは、大きなため息を吐いて呟いた。
「……ほんと、鬱陶しい関係だよね兄妹って」
起き上がる敵に気づき、私は日本刀を構えて睨み付けた。
「観念しなさい!もう一人の死神は倒したから!」
「あ?アスフィアを殺ったの?ニシシ……」
仲間が倒されたというのに、マイルは笑って状況を楽しんでいる。
「これで2対1!もう私たちの勝ちよ!!」
「あぁ……そうかな!?」
刹那。
瞬く間に遠くにいたマイルが目前に現れ、それに気がついた時には既に大鎌を振りかぶっていた。
「えっ!?」
咄嗟に刀で受け止めることに成功し、間一髪で攻撃を防いだがーー
「ニシシ!遅いよ!!」
次の瞬きで、目前にいたマイルが私の背後に移動していた。
「レナ!!!」
リバティがすぐさま反応し、拳銃でマイルを攻撃する。
「ニシシ!」
パッとマイルが姿を消して、全く違う場所に現れた。
これらがマイル・ラ・ギャレットコートの『霊力』がなせる技だった。
「リバティ……!これって……!」
「奴の霊力はーー『ライトニング』!つまり、『電光石火』です!」
「『電光石火』!?」
高速移動の異能力相手に、いくら身体能力に自信のある私でも追いつけない。
更にリバティは深刻な口調で私に言う。
「それだけではありません……!奴の強さは他にあります……!」
「他ってーー」
私が喋る暇もなく、マイルは瞬間で私の目の前に移動。
ニシシと不気味な笑みを浮かべ、私を嘲笑うように言った。
「お前の霊力は『キャンセル』ーー”相手の霊力を取り消す霊力”!そうパスポートに書いてあっただろ!?取り消す暇なく動ける俺には、無意味な能力だ!」
確かに霊力の説明が書かれたパスポートには、一言一句ハッキリそう書かれてあった。
「それって……!!」
「俺に勝つなんて無理だぜ!?お前らの霊力は熟知してる!だってーーお前らにパスポート配布したの、主催者である俺なんだからな!」




