No.12 私達は人間じゃない
「私をただの女だと思わない方がいいよ……!伊達にあのキチガイと義理の兄妹やってないから……!」
キチガイの義理兄ーーリバティを真似するように、チケットを構えて敵と向かい合う。
敵スナイパーの男は、私の登場に驚いていた。
「この女……!この短時間でここまで登ってきたのか……!?」
ここはジェットコースターの最高部。
私は先程のスナイパーの射線を辿り、たった数分で90mの高さもあるこの地点まで移動した。
「走ればすぐだよーー」
走ればすぐーーリバティのいる位置から、3キロほど離れた狙撃地点だったが、私にとってそれはたいした距離ではない。
呼吸ひとつ乱すことなく、すました顔で言い放ってやった。
「みーつけた。スナイパーさん」
「くそっ!見つかったからってなんだ!?女が調子に乗るな!」
スナイパーの男はライフルの銃口をこちらに向け、躊躇うことなく頭を狙って発砲。
しかしーー
「これだけ近くなら当たらない!」
首を横に傾げて、弾丸をすかさず回避する。
この常人離れした反射神経には理由があったーー
銃声を遠くで聞いていたリバティが、笑いながら歩いてジェットコースターに向かっていた。
「やってますねぇ。レナは救いようのない馬鹿ですが、幼少期から優れた身体能力で、様々なスポーツで優勝しています。相手の視線や呼吸、そして心拍を察知して次の行動を予測します。例え目の前で雨のようにショットガンを撃ち込まれても、レナは射線の合間を掻い潜りますね」
リバティの言葉通り、私は敵の撃つタイミングや弾道を予測し、咄嗟に回避してみせた。
当然何かのまぐれだと信じる男は、何度も何度も発砲を繰り返した。
「くそっ!くそっ!!くそっ!!!」
スナイパーライフルを、まるでドッチボールで避け続けるように、ジェットコースターレーンの上で躱していた。
「もう止めなよお兄さん。降参して」
「黙れ!人間じゃねぇのかこいつ……!」
男の台詞が私の心を抉るようだったが、私は呑み込むように受け止めた。
このゲームに勝てば人間に戻り、胸を張ってママの所へ帰れるのだから。
「……もう私たちは人間じゃない。だから人間じゃない私は、貴方を殺せる……!」
構えていたチケットが赤く燃えるーー
これがこの”天国と地獄ゲーム”の中で与えられた、私だけの専用武器。
炎が姿を変え、私の手の中に収まった。
紅い柄に銀色に光り輝いたーー灼炎の太刀。
「剣……!これが私のーー地獄を斬り裂く運命の剣……!」
日本刀の造形に酷似し、刃先が100cmとかなり長いものだった。
ーー長い……けど、不思議と全然重くない……!
両手で構え、怯えるスナイパーの男目掛けて踏み込んだーー




