No.10 インビジブル
「このチケットは念じるとそれぞれの武器へと変化します。私は数枚のチケットが同封されていましたーー」
リバティの持つ一枚のチケットが、突如赤く燃えて姿を変えたーー
そしてチケットだったそれが、リバティの言う通り、もう一つの拳銃へと姿を変えた。
「すごっ!銃になった!」
魔法のような光景に、無邪気に喜んでしまう私だったが、今は敵の襲撃を受けている事を思い出す。
両手にそれぞれ拳銃を構えたリバティは、私を足払いして転倒させた。
「おすわりですレナ!」
「ぎゃ!!」
体制を崩し、地面に両手をついて倒れ込む。
その瞬間リバティは2丁の拳銃を前に突き出すように構え、身体を回転させるように、辺り一面四方八方乱射した。
ズガガガガガ!!!!
激しい銃声が鳴り響き、空薬莢がカランカランと落下する。
私はその場で頭を抱えて泣き叫ぶしか出来なかった。
ーーきゃぁぁぁぁ!!!
ガガガガガ……
銃声が鳴り止んだーー
確認すると私はゆっくりと顔を上げた。
そこには先程まで居なかった、左肩に風穴を開けてもがき苦しんでいる男が立っていた。
「ぐああああ……!く、クソがァ……!」
男の突然の出現に戸惑う私だったが、男の右腕に装着してあった”鉤爪”に気がついた。
先程私達を襲っていた、浮かぶ鉤爪と全く同じ形状。
「その鉤爪……!」
すかさず弾丸を込め直したリバティが、再度男に銃口を向ける。
「下がりなさいレナ。この男は何処からか現れたのでは無く、最初からそこにいたんです」
「最初から!?だってさっきまでーー」
私がそこまで言ったところで、痛みに苦しんでいた男が動き出す。
痛みに耐えながら、鉤爪を装着していた右手を振り上げる。
そしてーー
「ぶっ殺してやるテメェら!!」
荒々しい台詞を履いた直後ーー言葉通り”姿を消した”。
その場から瞬間的に消えたんだ。
「消えた!?」
私はその超常現象のような光景を目の当たりにし、混乱して動き出せなかった。
しかし常に冷静なリバティは、辺りをキョロキョロと見渡して、私の腕を掴んで駆け出した。
「なるほど『インビジブル』ですか……!」
「リバティ!?インビ……何!?」
「『インビジブル』……!簡単に言うと”透明人間”です!」
「”透明人間”!?そんなオカルトな!?」
「ハハハ!死者の貴女が何言ってるんですか……!?夢みたいですが現実です!相手は透明になれる力を持っています!それが相手の『霊力』です!」
「『霊力』……!?」
おそらく『異能力』や『特殊能力』の事を指すのだろう。
現に私の目の前で、男が姿を消してみせた。
「一人一人に与えられたスキルと言った所ですね……チケットの他にパスポートが入っていたでしょう……?そこに自分の『霊力』について書かれているはずです。ですが、今は逃げる時間です」
リバティはキョロキョロしながら走り、ようやくうなづいて立ち止まる。
しかしそこは辺りに何も無いお花畑。
月明かりがまるでスポットライトのように私達を照らしていた。
「待ってリバティ!どうして立ち止まるの!?ここだと目立ち過ぎだよ!どこかに隠れなきゃ!」
「落ち着きなさいレナ。ここが最適です」
とても落ち着いていられる状況ではない。
透明人間だけでなく、これでは他の参加者にも見つかってしまう。
それにもう一つの大きな懸念点がある。
「何言ってんの!?言いわけないじゃん!それにここだとスナイパーにも見つかっちゃう!」
「大丈夫です。いいですかレナ?僕にレナのパスポートを見せてください。レナも『霊力』を使ってこの場を切り抜けましょう。初陣です……!」




