閑話 月面基地救出作戦
今回の話は短いです。異世界との絡みがない話は難しい……。
大陸歴4215年6月2日 種子島宇宙センター 第一滑走路
「発信準備完了しました。カウントダウン開始します。」
種子島宇宙センターに併設された洋上滑走路。そこに待機しているSSTOのコックピットに、管制塔からの無線が入る。
「了解。最終チェックを開始。燃料タンク、正常。ブースター、正常。装甲異常なし。カウントダウン開始。」
SSTOの艦長である、地球連合宇宙軍所属のイリヤ・アリョーシナは、管制塔にそう告げる。彼女は、宇宙軍の中でも数少ない女性パイロットだった。
「了解。カウントダウン開始。残り30秒。ワイバーンストライクに注意せよ。」
カウントダウンの開始とともに、SSTOに搭載された4機のジェットエンジンに点火され、徐々に出力が上がってゆく。
「残り5秒、3、2、1、発射。」
管制塔の指示と同時に、SSTOは一気に加速を開始する。5kmの滑走路を駆け抜けたSSTOは、どんどん高度を上げていった。
高度を上げ、空気が薄くなってきた所で、SSTOはエンジンをロケットブースターに切り替え、さらに加速していく。
「高度90kmに到達。東方第一大陸を確認。ブースター問題ありません。」
SSTOが宇宙空間に到達した所で、イリヤは報告を入れる。因みに、東方第一大陸とは、日本から東に1万2千キロ離れた所にある大陸だ。ローゼン王国等では、日本よりも僅かに東にある北方大陸が世界の東端だと思われている為、東方第一大陸は完全に未開の地だ。独自の文明の存在は確認しているが、日本の船でも渡れない潮の流れや、国際情勢等も考慮して接触は見送られている。
その後、周回軌道に乗ったSSTOは、宇宙ステーションに遷移し、ドッキングを行なった。ここで、宇宙ステーションに食料を渡し、燃料を補給する為だ。
燃料を貰ったSSTOは、ステーションを離れ、月に向かう。そして3日後、SSTOは月の周回軌道に入ったのだった。
「イ、イリヤ隊長!大変です!」
月の周回軌道に入ってしばらくした頃、突然、月を観測していた隊員がやってきた。
「なんだ、どうしたんだ。そんなに慌てて。」
「そ、それが……。とにかく、これを見てください!」
そう言って手渡されたタブレットを見たイリヤは、固まってしまった。
「こ、これは……。人工物?」
月の裏側で撮影されたその写真には、はっきりと人工物が映っていた。
「中央に塔が建っていて、円形に広かった建造物がある……。これは、明らかに我々の物ではないぞ!」
イリヤは、直ぐに日本に向けてそれを伝えた。その情報と、観測されたデータを見た職員によって、話題は直ぐに日本政府に伝えられた。政府は探査計画を練り始め、イリヤ達にさらにデータを集めるように指示したのだった。
翌日
「これより、ルナベース11への降下を開始する。」
月面基地の真上に到達したSSTOは、基地に向けて垂直に降下を始めた。謎の人工物の調査が急遽実施されていたが、とくに基地への到着が遅れたわけではない。
SSTOは、基地周辺に作られている駐機場に着陸する。着陸すると、基地の方から与圧された通路が伸びてきて、SSTOとドッキングした。そして、必要な物資の交換を行ったあと、基地職員を乗せたSSTOは、日本に向けて帰還するのだった。